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企業のデータ責任者は、綱渡りのような仕事をどうすれば成功させられるかGartner Insights Pickup(48)

データが価値を生み出す時代に入りつつある今、最高データ責任者(CDO)を任命する企業が増えている。だが、CDOの仕事は綱渡り師のように難しい。成功に近づくためにCDOが採用すべき、6つの戦術を紹介する。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 最高データ責任者(Chief Data Officer:CDO)が成功を収めるには、ベテランの綱渡り師のようなスキルが必要になる。それは常に安定性と俊敏性を維持する力だ。データ/アナリティクスの一流のリーダーは、綱渡り師のように多様なステークホルダーにバランス良く対応し、頻繁に変化するビジネスの潮流に適応し、常に最新のイノベーションについていかなければならない。

 「急速に台頭しているデータ/アナリティクス分野に携わる社内のポストの中でも、CDOは最も大変なものの1つだ。分析対象のデータは多種多様だが、同様に、こうしたリーダーの仕事もさまざまだ。その経歴も、データ/アナリティクス担当部署の勤続25年のベテランから、大学のデータサイエンス課程の新規卒業者まで多岐にわたる」と、Gartnerのリサーチディレクターを務めるバレリー・ローガン氏は指摘する。

 Gartnerは、拡大、多様化するデータ/アナリティクスの需要にCDOがバランス良く対応するのに役立つと考えられる“生き残りと成功”に向けた6つの主要戦術を考案した。

1.データ/アナリティクスの基本方針を明確にし、周知する

 明確な基本方針には、「データドリブンの企業とは具体的にどのようなものか」についての簡潔なビジョン、企業として何をやるかを示すミッションステートメント、データを管理したり統計に関わったりした経験が必ずしもない社員にも、データ/アナリティクスが実感として分かるような例え話が含まれる。多くの場合、基本方針はデータ/アナリティクスのビジネスケースとして、意図、スコープ(範囲)、重点を明示した具体的なビジネス成果を目標として掲げなければならない。何をどう目指すかを例で示しながら、チームを導くようにする。

2.バイモーダルアプローチを採用し、浸透させる

 ITに必ず求められる“綱渡り”問題に対処するために考案されたのが、バイモーダルアプローチだ。Gartnerは、このアプローチを「1つは安定性に、もう1つは俊敏性にフォーカスした、2つの異なる一貫したITデリバリモードの管理プラクティス」と定義している。昔ながらの要件と新しい要件に対応するために、リソースとキャパシティーをしっかり管理することはバイモーダル環境におけるバランスの確保に不可欠だ。チームの体制を定期的に見直し、成長とメンテナンスの最新の課題をクリアしていかなければならない。

3.データ/アナリティクスの戦略、ロードマップ、クリティカルパスを確立する

 ビジネスインテリジェンス(BI)からアナリティクスにフォーカスした、より成熟した取り組みへと移行しつつある企業では、現行のBI戦略およびロードマップの近代化が自社におけるアナリティクスやデータサイエンス機能の進化をサポートする。それぞれの情報管理戦略およびロードマップとの整合性を確保することも、インフラに関する重要な取り組み間の依存関係を厳密にモニタリングする統合計画に不可欠だ。アーキテクチャが従来のデータウェアハウスから、より論理的な仮想環境にシフトしているだけになおさらだ。

4.四半期ごとに戦略をアップデートし続ける

 戦略、ロードマップ、クリティカルパスは、四半期ごとに主要なステークホルダーの協力を得てレビューされなければならない。定期的に「棚卸し」をすることで、関係者全体のリソースの総和が最大化される。また、毎回同じ頻度で棚卸しをすることで、関係者により採用された新たなデータソース、ユースケース、アルゴリズム、ツール/技術が洗い出される。戦略の新鮮さを維持することは、定期的に成功を共有する方法でもある。

5.アナリティクス活動の「重心」になる

 CDOは直轄チームの問題解決を通じて、あるいはデータ/アナリティクスコミュニティーで何が起こっているかを認識し周知することなどを通じて、データ/アナリティクスの取り組みにおける「重心」にならなければならない。重心として行うべきことの1つとして、社内でアナリストやデータサイエンティストを増やすためにセルフサービス環境を推奨、推進することが挙げられる。社内の各種部署におけるアナリストやデータサイエンティストの増加は、コアチームの影響の拡大とコアチームの負荷の軽減につながるからだ。

6.データ/アナリティクスに携わる同僚やパートナーと緊密なアライアンスを組む

 特定のデータ管理、インフラ、アナリティクスのカバー範囲がCDOの基本方針や権限の対象に含まれない場合、社内のIT部門やビジネス部門のリーダーとの密接な連携が重要になる。データ/アナリティクスの取り組みの成功は、データの品質、理解、俊敏性にかかっているからだ。このことは一段と重要になっている。アナリティクスの基本方針を実行するには、これまで以上に大規模なデータエコシステムが必要になり始め、その活用も始まっていることが背景にある。こうしたエコシステムの多くは、外部の新興のデータブローカーやソーシャルデータソース、オープンデータソースからソーシングすることになる。

 「CDOは、ビジネスにおける日々の目まぐるしい変化にバランス良く対応する一連の戦術を整え、職務において求められる難しい綱渡りを行う準備をしなければならない」とローガン氏は語る。

 「生き残り戦略と抜かりのない変更管理戦術の実践を通じて、日々、自分と関わるこうしたさまざまなプロフェッショナルや部下にコーチングとサポートを提供することが、実力のある次世代のデジタルビジネスプロフェッショナルを育てる鍵になる」(ローガン氏)

出典:How CDOs Can Walk the High Wire of Data-Driven Business(Smarter with Gartner)

筆者 Laurence Goasduff

Director, Public Relations


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