2019年にはビジネス部門のIT支出額が、IT部門のIT支出額を超える――IDC予測:クラウドやアプリケーション投資がけん引役
IDCは、「デジタルトランスフォーメーションが進む中、ビジネス部門のIT支出がIT部門のIT支出を上回るペースで増えており、2019年には絶対額でも前者が後者を超える」とみている。
IDCは2018年4月9日(米国時間)、世界のIT支出動向の最新予測を発表し、2019年には、ビジネス部門によるIT支出がIT部門によるIT支出を上回るとの見通しを示した。
その背景について、IDCは「現在ではあらゆる業種の企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組んでおり、その結果として新しいビジネスプロセスやビジネスモデルが構築されている。そうした中で、IT支出の主体がIT部門からビジネス部門にシフトしている」と説明している。
2018年の企業のIT(ハードウェア、ソフトウェア、サービス)支出は1.67兆ドルの見通しだ。このうち50.5%は「IT部門の予算」から支出され、49.5%は「IT部門以外のIT購入者の予算」から支払われると予想されている。
IT部門の予算からの支出には、IT部門による購入と、IT部門が資金を出す共同プロジェクトでの購入が含まれる。IT部門以外の予算からの支出には、ビジネス部門による購入に加え、ビジネス部門購入者が資金を出す共同プロジェクトや、ビジネス部門が資金を出し、IT部門が関与しない“シャドーIT”プロジェクトでの購入が含まれる。
ビジネス部門のIT支出は、IT部門のIT支出よりも速いペースで増加しており、2016〜2021年のビジネス部門によるIT支出の予想年平均成長率は6.9%で、IT部門によるIT支出は同3.3%にとどまっている。
業種別
IDCがIT支出動向予測でカバーしている16業種のうち9業種では、2018年にビジネス部門によるIT支出がIT支出全体の5割を超える見通しだ。この9業種には、組み立て製造(ビジネス部門のIT支出が全IT支出の53%を占める。全IT支出が16業種中2番目に多い)、プロセス製造(ビジネス部門のIT支出が52%)、専門サービス(ビジネス部門のIT支出が51%)などが含まれる。
IT部門のIT支出がIT支出全体の5割を超える7業種には、銀行(IT部門のIT支出が全IT支出の52%を占める。全IT支出が16業種中最も多い)、通信(IT部門のIT支出が66%)などがある。2021年には、IT部門のIT支出がIT支出全体の5割を超える業種は、建設と通信の2つだけになると予想されている。
技術分野別
ビジネス部門による2018年のIT支出を技術分野別に見ると、「アプリケーション」の1780億ドルを筆頭に、「ビジネスコンサルティングサービス」(1040億ドル)、「ビジネスプロセスアウトソーシング」(970億ドル)、「プロジェクト指向サービス」(900億ドル)の支出が多い。一方、IT部門のIT支出について見ると、「アウトソーシング」(1510億ドル)、「プロジェクト指向サービス」(1180億ドル)、「ネットワーク機器」(910億ドル)が上位を占めている。
クラウドはビジネス部門にとってもIT部門にとっても重要な投資分野となっており、2016〜2021年のビジネス部門によるIaaS(Infrastructure as a Service)支出の予想年平均成長率は33.2%、IT部門によるIaaS支出も同30.7%と高い数字を示している。
IDCの顧客インサイトおよび分析担当プログラムディレクターを務めるアイリーン・スミス氏は、次のように説明している。
「世界中の企業のビジネス部門が“第3のプラットフォーム”技術を導入し、市場投入期間の短縮、新しいビジネスモデルの実現、売上高の拡大を目指す中、ビジネス部門のリーダーは、意思決定の迅速化や、こうした投資の効果的な管理を進めようとしている。平均して、世界の企業のビジネス部門におけるIT支出は、2018年のIT購入額全体の約50%を占める。だが、クラウドソフトウェアは導入しやすいことから、2018年のアプリケーション投資に関しては、ビジネス部門による支出が全体の70%に達する見通しだ」
業務分野別
2018年のIT支出を業務分野別に見ると、IDCがカバーしている12分野のうち11分野で、ビジネス部門の支出がIT部門の支出を上回る見通しだ。例えば、「業界固有のオペレーション」(ビジネス部門のIT支出が全IT支出の50.4%)、「顧客サービス」(ビジネス部門のIT支出が55%)、「会計/財務/請求」(ビジネス部門のIT支出が56%)などだ。IT部門の支出の方が上回るのは、「IT分野自体」(IT部門のIT支出が100%)だ。
IT支出の2016〜2021年の年平均成長率が高いと予想されている業務分野は、「セキュリティとリスク」(7.6%)、「マーケティング」(7.3%)、「法務」(6.6%)などだ。
地域別
地域別に見ると、2018年の最大のIT市場は7300億ドル規模となる米国で、このうち60%近くをビジネス部門によるIT支出が占める見通しだ。西欧は3990億ドル規模となり、IT部門のIT支出がその52%を占めると予想されている。日本と中国もIT部門のIT支出がそれぞれ全体の60%、68%を占める見込みだ。
IDCがカバーする9地域のうち、2018年は米国とカナダで、2021年にはこの2カ国と西欧で、ビジネス部門のIT支出がIT部門を上回ると予想されている。
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