2018年に政府機関のクラウド、セキュリティ、アナリティクス支出が増加へ:Gartner:政府機関のCIOの優先課題はDX、セキュリティ、ガバナンス
Gartnerの調査によると、2018年の政府機関のIT支出は、クラウド、セキュリティ、BI/アナリティクスといった分野で増えそうだ。
Gartnerは2018年1月23日(米国時間)、同社の調査「2018 CIO Agenda Survey」における、世界の政府機関のCIO(最高情報責任者)の回答結果をまとめたレポートを発表した。それによると、政府機関のCIOが回答した、2018年に新規および追加支出を予定している分野の上位3つは、「クラウドサービス/ソリューション」(回答者の19%)、「サイバー/情報セキュリティ」(17%)、「BI/アナリティクス」(16%)となった。また「データセンターインフラ」は、コスト節約を予定していると回答した最も多い分野となっている。
2018 CIO Agenda Surveyは、世界98カ国の主要業種の企業、組織に勤務する3160人のCIOが回答した調査。このうち461人が政府機関のCIOで、Gartnerは今回、これらCIOの回答結果を発表した。回答傾向を分析する目的で政府機関のCIOは、国、連邦政府、州、省、県、地方、防衛および情報機関というカテゴリーに分類された。
最優先課題は「デジタルトランスフォーメーション」
Gartnerによると、ビジネスの優先課題として「ビジネス/デジタルトランスフォーメーション」を挙げる政府機関のCIOが最も多く(18%)、「セキュリティ、安全、リスク対策」(13%)、「ガバナンス、コンプライアンス、規制」(12%)、「技術的な取り組み/改善」(11%)がこれに続いた。
Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるリック・ハワード氏は、次のように指摘している。
「デジタルトランスフォーメーションは、データを中心とした取り組みだ。政府機関のCIOが成功を収めるには、組織内や公共利用のために、オープンデータやAPIの提供を拡大して、組織としてのデータ分析力の向上やデータ中心文化の創造に力を入れる必要がある。データ分析インフラの構築、拡張は、政府プログラムの結果や市民サービスの向上の基盤になる」
ビジネスの優先課題について、全業種のCIOの回答傾向を見ると、「成長/市場シェア」を挙げるCIOが最も多く、政府機関のCIOの回答で最も多かった「ビジネス/デジタルトランスフォーメーション」は、全業種では2位(17%)だった。
最重要の技術投資分野は、「クラウド」と「BI/アナリティクス」
「組織のミッションを達成する上で、どの技術投資が最も重要か」という質問に対しては、クラウドを挙げる政府機関CIOが19%で最も多く、BI/アナリティクス(18%)、インフラ/データセンター(11%)が続いている。国や連邦政府のCIOの回答傾向は、他の政府機関とは異なり、CRM(Customer Relationship Management)が3位だ。
Rank | Government Priorities | % Respondents |
---|---|---|
1 | Cloud services/solutions | 19% |
2 | BI/analytics | 18% |
3 | Infrastructure/data center | 11% |
4 | Digitalization/digital marketing | 6% |
5 | Customer relationship management | 5% |
6 | Security and risk | 5% |
7 | Networking, voice and data communications | 4% |
8 | Legacy modernization | 4% |
9 | Enterprise resource planning | 4% |
10 | Mobility/mobile applications | 3% |
最重要の技術投資分野(資料:Gartner,2017年10月) |
なお以下の4つの技術カテゴリーでは、政府機関のCIOと民間のCIOで回答傾向に違いがあった。
- 人工知能(AI):全業種のCIOの回答では10位以内に入っているが、政府機関のCIOの回答では19位となっている。ただし、防衛および情報機関のCIOは、AIの回答率が7%で、民間のCIO(6%)を上回っている
- API:国や連邦政府のCIOの回答率は4%。他の政府機関や民間のCIOの回答率はこれより低い
- 「クラウドサービス/ソリューション」と「インフラ/データセンター」:両者の回答率の合算は、政府機関のCIOでは30%で10位以内に入るが、民間のCIOでは12%にとどまる。これに対し、「デジタル化/デジタルマーケティング」は、民間のCIOでは16%に達しているが、政府機関のCIOでは6%だ
- Internet of Things(IoT):全業種のCIOの回答では、10位以内に入っているが、政府機関のCIOでは12位だ。ただし、政府機関の中でも、地方自治体と、防衛および情報機関のCIOは回答率が相対的に高い。地方自治体はスマートシティープロジェクトと関連があり、防衛および情報機関は、さまざまな活動をモニタリングするセンサーからのデータを利用しているからだという
増やさざるを得ないセキュリティ支出
政府機関CIOがミッションを達成する上で重要視する技術投資の上位3つである「クラウド」「BI/アナリティクス」「インフラ/データセンター」については、政府機関のCIOの多くが、2018年に支出が増えると予想している。
Rank | Government Priorities | % Respondents |
---|---|---|
1 | Cloud services/solutions | 19% |
2 | Cyber/information security | 17% |
3 | BI/analytics | 16% |
4 | Infrastructure/data center | 14% |
5 | Digitalization/digital marketing | 7% |
6 | Data management | 6% |
7 | Communications/connectivity | 6% |
8 | Networking, voice/data communications | 6% |
9 | Application development | 5% |
10 | Software – development or upgrades | 5% |
技術支出が増える分野(資料:Gartner,2017年10月) |
一方、「セキュリティやリスク対策」は、技術投資として重要視する政府機関のCIOは5%にとどまるが、17%が「サイバー/情報セキュリティ」に対する支出の増加を予想している。これは、セキュリティが政府にとって、競争上の差別化要素ではないものの、システム脆弱(ぜいじゃく)性の悪用を図る近年のサイバー攻撃への対策として、支出拡大が認められていることを示している。
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