サービスマネジメントとは、システムのお守りや定型作業のことではない:久納と鉾木の「Think Big IT!」〜大きく考えよう〜(10)(2/3 ページ)
当連載では、IT、サービス、ビジネス、そしてサービスマネジメントについて論じてきた。いったんここで、前後編の2回に分けてサービスマネジメントの全体像を見つめ直したい。前編の今回は、身の回りのサービスマネジメントからビジネス貢献への発展について考えてみたい。
ユーザー体験=価値を創造することもサービスマネジメント
世の中のサービスマネジメントに対する認識や実践の範疇が、どうも日々のオペレーション、つまりここまで述べたインシデント管理、問題管理、変更管理に偏っているように感じる。本来であれば、サービスマネジメントとはそれだけではないことも理解しておかなければ十分ではない。すなわち、新たなユーザー体験や価値を設計、構築し、顧客やユーザーに対してこれを提供することもサービスマネジメントの考え方の中核であることを理解していただきたい。
どういうことか? 既述のワークプレースサービスを例に考えてみよう。昨今、一言でワークプレース(働く場所)と言っても、その定義は拡張され、とても進化している。筆者のようなひと昔前を知る人間からしてみると素晴らしいと感じる体験、すなわち価値を感じることができる。
例えば、出張先での商談を通して、直ちに社内の関係者を集め意思統一を図る会議の必要性が顕在化したとする。このようなケースにおいて、帰路のタクシーや新幹線内で、手元のスマートフォンを使って海内外の要員を巻き込んだTV会議を簡単にアレンジすることができる。条件に恵まれれば、そのような会議そのものを開始することもできてしまう。
実際、アレンジの操作手順は簡単だ。当該会議のセットアップ手順として、必須出席者を招待し、会議室を予約する一連のプロセスは、簡素で素早く、明瞭な操作で完結する。あとはセットした時間に会議室に行く、もしくはリモートから音声アクセスするだけだ。会議室に設置されたTV会議システムは自動的に会議プログラムを起動するし、参加者のPCから共有に出された会議資料は、ネットワークを介して、会議室のディスプレイとリモート参加者のPCに表示される。
要は、会議を成立させるために人・物を押さえ、時間が来たら必要なインフラを起動させる手続きに、シンプル、スピード、透明性があり、滞ることのない一続きのプロセスとして完結させられる。これは個々の煩わしい操作から解放され、ビジネスに集中できる革新的な体験なのだ。この革新的な体験こそ顧客やユーザーが価値として感じる源泉だ。
仮に会議室ディスプレイのインシデントが発生したとしても、サービスデスクの連絡先番号が世界中どこの事業所でも「#7777」(のような統一番号)に統一され、明確かつ的確な解決策やワークアラウンドが示され、そしてそれがすぐに解決できたとしたら、これもさらなる良い体験として価値が付加されるだろう。
ポイント2
サービスの戦略を描き、革新的な価値を構築して提供し、そしてさらに価値が高まるように継続的改善をすることも重要なサービスマネジメントの役割なのだ。サービスマネジメントとはサービスによって価値(素晴らしい体験)を提供することが、本来であれば最大の目標だということだ。日々のオペレーションをすることだけがサービスマネジメントではない。
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