高速で安全なアップグレード展開のためのWindows 10の新機能と改善点:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(25)(2/2 ページ)
本連載第23回では、Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)で行われた既存の企業向け機能の強化、改善を紹介しました。今回は、機能更新プログラム配信の改善点と、地味ながらも知っておいて損のない、新機能の1つを紹介します。
前バージョンへのロールバック猶予期限を既定の10日から延長可能に
Windows 10は、Windows 7/8.1、および以前のバージョンのWindows 10からのアップグレードが可能です。無償アップグレードが提供された2015年当時、Windows 10へのアップグレード後、「30日間」であれば以前のバージョンに戻す(ロールバックする)ことができました。
それが、Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)からは、「10日間」に短縮されました。その影響で、アップグレード後、10日以上経過してから何らかの問題が発覚した場合は、以前のバージョンに戻せなくなるという可能性が出てきました。標準機能で戻せなくなった場合、以前のバージョンで取得したバックアップ(システムイメージ)がなければ、アップグレード前の状態に戻すことはできません。
Windows 10 バージョン1803では「前のバージョンのWindows 10に戻す」機能の「10日」という猶予を、任意の日数に変更するオプションが提供されています。この機能は「DISM」コマンドの新しいオプションを使用して変更するか、「Microsoft Intune」で管理できます。
DISMコマンドを使用する場合は、コマンドプロンプトまたはWindows PowerShellを管理者として開き、次のコマンドラインを実行します。
DISM /Online /Get-OSUninsallWindow
DISM /Online /Set-OSUninsallWindow /Value:<日数>
1つ目のコマンドラインは、現在の設定(既定は10日)を表示します。2つ目のコマンドラインは、指定した日数に猶予期間を変更します(画面3)。これらのコマンドラインは、「前のバージョンのWindows 10に戻す」機能がまだ有効な場合(アップグレード後10日以内)にのみ利用可能です。
なお、Windowsがインストールされているドライブ(C:ドライブ)の空き容量が少ない場合は、期限を待たずにクリーンアップされてしまうことがあるので留意してください。ディスクの空き容量を自動確保する機能は、Windows 10の「ストレージセンター」の機能であり、空き容量が少ない場合に自動的にオンになります。
以前のバージョンに戻す機能は、「C:\Windows.old」に保持されている前バージョンの環境を使用して行われます。このディレクトリは数十GBを占有している場合があり、削除することでディスク領域を増やすことができます。既定ではアップグレード後10日が経過すると、その処理が自動で行われるというわけです。
すぐにディスク領域を増やしたい場合は、「ディスクのクリーンアップ」(Cleanmgr.exe)の「システムファイルのクリーンアップ」を実行して、「以前のWindowsのインストール」をチェックして行いました。Windows 10 バージョン1803からは、「設定」アプリの「システム」→「ストレージ」→「空き領域を自動的に増やす方法を変更する」を開き、「Windowsの以前のバージョンを削除しますか」をチェックして、「今すぐクリーンアップ」をクリックすることでも同様の処理を開始できます(画面4)。
DISMコマンドの「/Set-OSUninsallWindow」オプションで変更した日数は、「設定」アプリの「空き領域を自動的に増やす方法を変更する」の下にある「10日後に自動的に削除されます」の表示には反映されないようです。また、DISMコマンドの新しいオプションに「/Remove-OSUninsall」がありますが、これは「前のバージョンのWindows 10に戻す」機能を利用不能にするだけで、「C:\Windows.old」とその中身を削除することはないので注意してください。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
関連記事
- Microsoft、業務PC自動セットアップツール「Windows AutoPilot」を提供
Microsoftは「Windows 10 Fall Creators Update」で、IT管理者向けに組織内へのPC展開と管理を容易にする一連の新機能「Windows AutoPilot」を提供する。 - Windows 10 Fall Creators Updateに搭載される「次世代」のセキュリティ機能
Microsoftが「Windows 10 Fall Creators Update」に搭載する次世代セキュリティ機能を紹介。「Windows Defender ATP」に含まれるツールを大幅に拡充することを明らかにした。 - 「Windows 10 Fall Creators Update」に搭載される新機能まとめ
マイクロソフトはWindowsの次期大型アップデート「Windows 10 Fall Creators Update」を2017年後半にリリースすると発表。Windows MRやiOS/Androidも包括したマルチプラットフォーム対応など、コンシューマー/技術者それぞれに向けた新機能を多数リリースする。 - Windows 10 Creators Updateがやってきた!――確実にアップグレードする方法を再確認
2017年4月6日(日本時間、以下同)、Windows 10の最新バージョンである「Windows 10 Creators Update」が正式にリリースされ、利用可能になりました。4月12日からはWindows Updateを通じた配布が段階的に始まります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.