世界のAR/VR関連市場、2022年まで71.6%で成長 日本では教育分野にカギ――IDC予測
IDCは、世界のAR/VR関連市場は、CAGR71.6%で成長を続け、2022年には2087億ドル規模に達すると予測。米国では2022年までに年間平均成長率98.3%での成長が見込まれる一方、日本は17.9%と推測。成長のカギは教育分野だという。
IDC Japanは2018年6月19日、世界のAR(拡張現実)/VR(仮想現実)のハードウェアとソフトウェア、関連サービスの2022年までの市場予測を発表した。
それによると、世界のAR/VR関連ハードウェア、ソフトウェア、関連サービスを合計した支出額は、2017年の140億ドルから2018年は270億ドル、2022年には2087億ドルに達する見通し。2017年から2022年の年間平均成長率(CAGR)は71.6%と、高い成長が見込まれるという。
なお、この市場予測は、地域、業種、ユースケース、テクノロジー、業界投資の観点から、AR/VR関連の主要テクノロジー市場の動向を米IDCがまとめたもの(IDC「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide,2017H2」)。
iOS向け「ARKit」やAndroid向け「ARCore」といったARプラットフォームなどを含む最近のスマートフォン技術動向や、市場展開が本格化しつつあるスクリーンレス型ヘッドセットのトレンドなどを反映した結果になったという。
地域、業種、ユースケース、テクノロジー、業界投資の観点から、AR/VR関連の主要テクノロジー市場の動向を分析(Source:IDC「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide,2017H2」)
分野別では、一般消費者向けが市場をリード
AR/VR関連支出を分野別に見た場合、2017年に合計支出額86.5億ドルとなった一般消費者向け分野は、2022年まで最大の市場規模を維持するとみられ、2022年には530億ドル規模に達すると予測。
それに続くのは、小売業、組み立て型製造業、輸送・運輸業で、2022年のこれら3分野の合計支出額は560億ドルに達すると見ている。
世界AR/VR関連市場支出予測 ※単位:億米ドル(Source:IDC「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide,2017H2」)
ユースケース別では、VRゲームが圧倒的な存在感
ユースケースでは、2018年のAR/VR市場で圧倒的な存在感を示すのは引き続きVRゲームで、その関連支出規模は70億ドルと予測。
また、2022年までに最も大きな伸びが期待されるユースケースは、小売業での展示で119.3%のCAGRが見込まれ、それに研究・実験、映画やテレビでのエンターテインメント用途が続くとしている。
その他、今回から新たにユースケースとして加わったものとしては、公共インフラのメンテナンスや高校までの学校で用いる教育向け360度動画などがあるという。
カテゴリー別では、ARビュワーが高成長の見込み
カテゴリー別では、ホストデバイス(PC、スマートフォン、ゲーム機など)が2018年は支出額のトップとなり、合計支出額100億ドルと推測。また、VRソフトウェアは、2018年で57億ドルと予測する。
ARビュワーは、AR向けシステムインテグレーションや顧客向けARソフトウェア開発を抑え、2022年までのCAGRが141.6%と、最も高い成長が見込まれるという。
用途分類別では、消費者向けが支出額142億ドルで2018年はトップを維持するものの、流通・サービス向けがCAGR34.4%で2022年には720億ドルに達すると予測。他方、公共分野向けは、CAGR 18.5%で2022年には335億ドルに達すると見ている。
IDCによると、新しいハードウェアの出荷やソフトウェアの改良、ユースケースの進化などにより、AR/VR双方に対する商業的関心は高く、米国企業を対象にした調査ではAR/VRの両技術を検証している企業の割合が非常に高かったという。今後、各産業の主要プレイヤーによるAR/VRテクノロジーの展開が進むにつれ、ビジネス利用への意欲が高まっていくと分析する。
地域別では、トップは米国、日本は底堅い成長
地域別では、2022年までのCAGRが98.3%と最も高い米国が、その地位を維持すると見る。続いて、中近東とアフリカ、日本と中国を除くアジア太平洋、中南米は、50%前後のCAGRを予測。
また、中国では2018年にホストデバイスの支出が102億ドルと、全地域の中で最も多く、VRソフトウェアとARソフトウェアがそれに続いた。
日本では、2022年までのCAGRは17.9%と、他地域に比べて見劣りする状況が続いているものの、ホストデバイスを除いたAR関連支出のCAGRは43.9%で2022年の関連支出予測額は14.6億ドル、VRのCAGRは28.1%で2022年の関連支出予測額は25.3億ドルと予測され、底堅い成長が続くと分析する。
日本は産業分野での活用が進むも、意識的な阻害要因も カギは教育分野
日本の予測を産業分野別に見ると、プロセス製造分野はCAGRが87.9%と高い成長が見込まれる他、組み立て製造も同42.5%ながらも支出が安定した規模で成長すると予測。また、運輸分野のCAGRは47.6%ながらも10億ドルを超える市場性が見込まれ、いずれも有望な分野であると分析する。
他方、教育分野は、2022年の支出規模が0.15億ドルと極めて少なく、ユースケース拡大の素地となるべきAR/VRの経験者拡大の障害となることが明らかになった。
IDC Japanでは、幾つかの産業分野ではVRを中心に積極的な利用が進み、今後の成長に向けた基礎となるエコシステムが形成されつつあるものの、AR/VR自体の体験利用に対する消極的な意識が導入拡大の阻害要因となっており、この障壁の突破口を開くためにも、業界全体があらゆる側面で同テクノロジー経験者の拡大を推進していく必要があると分析。そのための鍵の1つは、これらのテクノロジーの受容性が高い若年層向けの教育分野だと提言している。
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