ダイアン・グリーン氏に単独インタビュー。GCPに彼女が自信を深める5つの理由:Google Cloud Next ’18
Google Cloud Platform(GCP)の説得力が増している。2018年7月、Google Cloudが米サンフランシスコで開催した年次イベント「Google Cloud Next ’18」で、CEOのダイアン・グリーン(Diane Greene)氏にインタビューし、同氏が今何を考えているかを探った。
Google Cloud Platform(GCP)の説得力が増している。Googleのクラウド事業部門であるGoogle Cloudが2018年7月に米サンフランシスコで開催した年次イベント「Google Cloud Next ’18」では、2017年の同イベント時点から、GCPが大きく進展したことを示す具体的な話が相次いだ。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureに比べてどうというよりも、顧客をどう助けたいのか、それによって自身がどう成長していきたいのか、道筋がはっきりしてきた印象がある。
@ITでは、Google Cloud CEOのダイアン・グリーン(Diane Greene)氏に単独インタビュー。同氏が今何を考えているかを探った。
――Google Cloudの現在地と今後の方向性について、グリーンさんはこれまでにないほど満足していると同時に、自信を持っていると言えますか?
はい。そう考えています。顧客やパートナーが広がり、成長が実感できているからです。
今回のカンファレンスで、私たちは今までで最も堅固な、将来を見通したストーリー(most cohesive, forward-looking story)を語ることができました。非常に多くの顧客を獲得したことで、顧客が何を考え、何を必要としているのかを、とてもよく理解できるようになりました。このため、顧客の日常的なニーズに対応する一方、新たなやり方を提案できるようになってきました。
こうした活動の中から、Googleのエンジニアたちが「Kubernetesをクラウドだけでなく、オンプレミスでも動かすべきだ」と提案してきました。彼らがそうした結論に達し、「GKE On-Prem」を製品として世に送り出せたのは、素晴らしいことだと思っています。
一方、私たちは機械学習のパワーを目の当たりにするようになってきました。「データの活用で何が可能になるか、自社のビジネスをどうけん引できるのか」を顧客が理解する手助けができるようになってきました。データ活用に関して顧客とどう協力していけばいいかが、今では分かっています。
加えて、あらゆる活動が成果につながるよう、組織の強化を続けています。「私たちはいい時代を迎えている」と言えると思います。
――今回のカンファレンスにおける私の理解によると、あなたが自信を深めている理由は5つあると思います。
ぜひ言ってみてください。
――第1は、「Enterprise Readiness(一般企業が安心して使える性能や機能、環境)」に関して一定のレベルに到達したということです。
私たちは実質的に、2年間でこれを成し遂げました。
――第2はテクノロジーパートナーやセールスパートナーとの関係を確立したことです。
はい、業種別パートナーとの関係も確立しつつあります。私たちはチャネルパートナーからシステムインテグレーター、一般の大企業まで、さまざまなパートナーと一緒の取り組みができるようになりました。SAPやCisco Systemsのような企業とも、共に市場を開拓しています。
――第3の理由として、GKE On-Premによってハイブリッドクラウド戦略が具体化したことを、あなたは喜んでいると思います。
私たちのハイブリッドクラウドは、オープンソースコミュニティの活動をベースとしています。これは、顧客にとってとてもよいことです。顧客と話をすると、私たちが開発したこのソリューションを必ず、とても喜んでくれています。
――私はあなたがVMwareのCEOだったときにVMworldを取材したことがありますが、あなたは今、仮想マシンに基づく考え方をする必要があまりなくなったと思っていますよね?
当時のVMwareにとって、コンテナをやるなどということは考えられませんでした。誰もOSを変えようとはしなかったからです。ところが世界はその後、大きく変わりました。仮想化をすることに、誰も抵抗を感じなくなりました。そしてコンテナにより、仮想化をもっと軽いやり方でできることが分かったのです。これは自然な進化だと思います。
――企業が既存アプリケーションをリフト・アンド・シフトでコンテナに移行しようとしている話もたくさん聞いています。
企業は既存アプリケーションを維持しながらも、前進しなければなりません。コンテナに移行することで、はるかに機動的になり、管理も用意になります。さらに、コストを大きく削減できます。
――Kubernetesと関連ソフトウェアにおけるリーダーシップがカギということですよね。
Istioも重要です。また、こうしたソフトウェアの周りに素晴らしいエコシステムが出来上がっています。
Kubernetesは過去3年くらいの間に、大きく成長してきました。(コンテナオーケストレーションの分野で)75%の市場シェアを獲得したとも聞いています。
そして、機能の強化は急速に進んでいます。Ciscoのようなパートナーと組んで推進できることも大きなメリットです。
――ただし、AWSは「最も多くのKubernetesクラスタがAWS上で動いている」としています。何かコメントはありますか?
それは正しいかもしれません。AWSは私たちより長くビジネスをしているため、より多くのワークロードを動かしていますから。Kubernetesが75%の市場シェアを持っているなら、AWS上のKubernetesで多数のワークロードが動いているのは納得できます。
それはよいことだと思います。AWS上のKubernetesでワークロードを動かし始めたユーザーは、誰でも容易にGCPへ移行できます。彼らにとって、私たちがより優れていると考える技術およびサービスを活用できる機会が生まれています。
――第4はディープラーニング/AIです。あなたは、ディープラーニング/AIが、昨年よりもはるかに大きな現象となっていることに、自信を抱いているのではないですか?
ええ。(ディープラーニング/AIは)とてもディスラプティブ(破壊的)です。さまざまなことをどれだけ改善できるかという点では、驚くべきものがあります。エネルギー利用の効率化、定型作業の自動化、医療行為支援など、どんな世界にいる人にも助けになります。
(AI/MLチーフサイエンティストの)フェイフェイ・リーは、マシンラーニンググループの活動を大きく広げてくれました。また、私たちはさまざまな技術を生み出しているGoogle Brainとも密接に連携しています。
AutoMLによって、多数のプログラマーが、データから容易にモデルを構築できるようになりました。TensorFlowを使ったディープラーニングも、ますますやりやすくなっています。さらに、TPUによって処理速度は飛躍的に向上しました。私たちは今、とてもいい位置にいると思っています。
――ディープラーニング/AIのおかげで、あなたは企業に対し、「デジタルトランスフォーメーションをしなくてはなりませんよ」と説いて回る必要がなくなったとも言えるのではないですか? 今や、誰もがディープラーニング/AIに取り組まなくてはならないことを理解していますから。
ええ、(ディープラーニングのおかげで、)顧客と、将来へのビジョンにつながるような戦略的議論のできる機会がたくさん生まれています。そうした議論を踏まえ、エンジニアが実際のトランスフォーメーションに関して、顧客を支援できる体制ができています。
これは非常にやりがいのあることです。顧客を助けることができているという実感があります。
――第5の理由は、顧客やパートナーに対するアプローチです。強いリーダーシップを発揮しているクラウドプロバイダーもありますが、あなたはより顧客やパートナーに協力するという姿勢が、差別化につながると考えているのではありませんか?
ええ。「特別な待遇をする代わりに、ロックインさせてください」と言っているところもあります。一方私たちは、「第1に重要なのは顧客、第2がパートナー」ということを哲学としてきました。顧客にとっていいことは、パートナーにとってもいいことで、パートナーにとっていいことは、私たちにとってもいいことです。こうした考えに基づいているため、提供プロダクトに関する判断(注:どのようなサービスを、どのような優先順位で提供するかに関する見極め)は容易です。
顧客にとって正しいことをし、優れた品質のプロダクトを構築し、それを利用しやすくすること、そして顧客を助けることが、私たちにとっての成長に直結します。なぜなら、今言ったことを顧客は求めているからです。オープンソースに関する歴史と実績も、そうした例の1つです。
――ではあなたにとって、現在の優先課題は何なのですか?
「遂行」の一語に尽きます。目標値を次々に上げながら、達成し続けることです。私が今回のカンファレンスでとてもうれしいのは、私たちが遂行という点で新たなレベルに達したことを実感できたからです。「何をやるべきか」を誰もが理解していて、取り組みを進めています。この遂行能力のおかげで、今回のカンファレンスは昨年よりもはるかに良いものとなりました。
また、今回のカンファレンスには2万7000人もの登録があり、290人の顧客が話してくれました。私たちはこれほどまでに大きなカンファレンスを開催できるまでになったのです。
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