生産工程に点在するデータを“横串活用”――日立、生産現場をデジタルツイン化する「IoTコンパス」発売
日立製作所は、IoTデータを基にデジタル空間に生産ラインを再現し、生産業務全体の最適化を支援する「IoTコンパス」の販売を開始する。溶接、塗装、組み立てといった生産工程ごとに点在する業務とデータをデジタル空間上でつなぎ、生産工程全体の最適化に向けたデータ活用を支援する。
日立製作所(以下、日立)は2018年10月17日、生産現場をデジタルツイン化し、生産業務全体の最適化を支援するソリューション「IoTコンパス」を11月19日から販売すると発表した。サービスの提供開始は2018年12月からの予定で、価格は個別見積もり。
IoTコンパスは、IoTデータを基にデジタル上に生産ラインを再現(デジタルツイン化)し、生産現場の各工程に点在する現場データを集約したデータ活用基盤を提供。生産設備の稼働状況や品質情報などの「OTデータ」と、生産計画や在庫管理などの「ITデータ」をデジタル上でひも付け、デジタルデータとして容易に利用できるようにすることで、AI分析やシミュレーションによる生産業務全体を通じた改善や最適化を支援する。
鋳造やプレス加工、溶接、塗装、組み立てといった生産工程のさまざまな業務と、各業務で発生するOT/ITデータを“つながり”で定義、連結する独自のデータモデルでひも付け、管理することで、現場視点での分析や最適化に必要なデータの抽出を容易にする。
今回、同社は、製造業として長年培ってきたノウハウと、データ間の「つながり」を記録するグラフデータベースの考え方を基に、生産業務と4M(Man:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法)データから構成される独自のデータモデルを確立。
IoTコンパスでは、このデータモデルを用いて、各工程の個別システムに蓄積されているOT/ITデータ間の関連付けを簡略化することで、生産工程全体にわたるさまざまな業務とデータの関係を分かりやすく視覚化。また、生産工程の追加や変更が発生した場合でも、同じデータモデルを用いて速やかにデータ連携を行える機能を実装した。
日立では、IoTコンパスを利用することで、従来は専門的な知識や膨大な時間を要していた複数工程のOT/ITデータの活用が容易になり、現場改善に向けたデータ分析のPDCAサイクルを回す工数を大幅に削減できると説明。例えば、ある工程で特定製品に不具合が発生した場合、その他の工程の材料や品質のデータ、生産計画データなどを抽出し、分析することで、不具合の原因や影響範囲を迅速に特定するなど、工程全体の最適化に向けた取り組みを外部環境の変化に応じて継続的に行うことも可能になるとしている。
なお、日立は、2017年10月からトヨタ自動車と高効率生産モデル構築に向けた協創を開始しており、製造現場のPDCAサイクルを速めることで課題解決と生産性・品質の向上を目指す取り組みとして、同ソリューションを自動車製造を担うモデル工場での共同実証に先行適用している。現在、さまざまな現場のOT/ITデータを活用し、全体最適に向けた高速PDCAによる改善に取り組んでいるという。
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