創業65年、AIで生まれ変わる箱根の老舗ホテル その成功の要因は?:より多くの顧客に高級旅館並みのサービスを(4/4 ページ)
AIや機械学習で成功を収める企業が増えてきている一方で、思ったような効果が得られていない企業も少なくない。ビジネスにAIを活用するコツはどこにあるのか。箱根湯本の老舗ホテル「ホテルおかだ」の原氏が、そのポイントをセミナーで解説した。
機械学習は、新たな「おもてなし」の知見を生み出すか?
原氏は、今回導入したAI対応FAQの活用範囲を、今後はさらに拡大していきたいと話す。既にテストを始めているのは、客室内に設置されたテレビで視聴できる館内情報チャンネルとFAQとの連携だ。スマホ版の館内コンシェルジュと同様に、宿泊客のプランや時間帯に合わせた情報提供を考えているという。
また、FAQとMAを組み合わせて、旅行前の計画、比較検討、予約、旅行中、旅行後といった各フェーズでタイムリーな情報提供を行ったり、館内での顧客行動やスタッフ対応などに関するデータと組み合わせて、機械学習から顧客満足度の向上につながる新たな知見を導き出したりといったことができないかを構想中という。
現在、ホテルおかだでは「Oracle Service Cloud」の他、「Salesforce Pardot」「Amazon Web Services」「Microsoft Cognitive Services」など、さまざまなベンダーのクラウドサービスや技術を複合的に活用している。原氏は、AIをビジネスに生かすに当たっては、それぞれに特長があるサービスについて知り、それらをつなぎ合わせてデータを見ていくことが重要だとした。
「ビジネスに対する知見と、新しい技術に対する知識を基礎に、それらをAPIベースでつなぎながら出てくる結果を見てみることが、AIを活用するアイデアの源泉になります。現在のシステムは、多様なサービスや技術の組み合わせで構成されていますが、一番長く使っているSalesforceでも3年ちょっと。次々と出てくる新たなものを試しながら、使えそうなものをつなぎ込んで、新しい仕組み作りに挑んでいます。今後も旅館業として、AIを顧客満足度の向上に貢献させていく取り組みを続けていきます」(原氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NECから温泉旅館へ転身――元エンジニアが挑む、老舗ホテルのIT化
箱根湯本にある老舗ホテル「ホテルおかだ」。このホテルでは、AIを導入するなど積極的なIT活用を進めている。その中心となって動いている原さんは、NECにも勤めた経験のあるエンジニアという異色の経歴を持っている。 - 創業63年、箱根の老舗ホテルが人工知能を導入した理由
公式Webページに機械学習を使ったFAQシステムを導入した、箱根の老舗ホテル「ホテルおかだ」。こうした最新ITを導入する裏には、旅行業界における大きなビジネスモデルの変化があった。 - 借金10億円、倒産まであと半年――創業100年の老舗旅館「陣屋」をたった3年でV字回復させた方法
神奈川県秦野市にある鶴巻温泉。閑静な住宅街の中に、働き方改革の先端を走る老舗旅館「陣屋」がある。業界では珍しい週休3日を実現するなど注目を集めているが、10年前は10億円の借金を抱え、あと半年で倒産というところまで追い詰められていた。 - 旅館業界では“あり得ない”週休3日 それでも「陣屋」の売り上げが伸び続けるワケ
旅館業界では珍しい週休3日を実現している、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」だが、それでも売り上げも利益も伸び続けている。その裏にはAIやIoTを駆使した、最新の「おもてなし」があった。 - これを旅館と呼んでいいのか!? 老舗旅館「陣屋」が切り開く新たなビジネスモデル
週休3日制などで注目を集める、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」。彼らのビジネスはもはや旅館だけではない。成功事例そのものを商材とし、自社システムの外販から“旅館互助サービス”の展開まで、もはや旅館とは呼べないような事業をそろえた企業が誕生しつつあるのだ。