ブロックチェーン活用で、外航貨物保険の支払い手続きが1カ月超から1週間に――東京海上日動とNTTデータが実証
東京海上日動火災保険とNTTデータは、外航貨物海上保険の保険金請求手続きへのブロックチェーン技術の適用を検証。保険証券や事故報告書、貨物の損傷写真といった必要なドキュメントをブロックチェーン上で共有することで、保険金の支払いプロセスを迅速化する。
東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)とNTTデータは2018年11月1日、外航貨物海上保険の保険金請求プロセスにブロックチェーン技術を活用した情報共有を適用する実証実験を完了したと発表した。保険金支払い手続きに必要なドキュメントを電子化してブロックチェーン上に流通させ、リアルタイムで共有することで、保険金の支払い処理を迅速化できることを確認したという。
外航貨物海上保険の保険金請求では、保険証券が貨物とともに流通するため、必ずしも契約した保険会社が保険金支払業務を行うわけではなく、特に海外で貨物事故が発生した場合は、輸入者が現地で事故通知から保険金の受領まで行えるよう、主に事故対応を行う拠点の海外クレーム代理店(保険会社が提携する海外クレーム代理店)が保険金支払いの手続きを行う。
その際には、保険証券とともに、紙やPDFファイルなどで存在する事故報告書や貨物の損傷写真、インボイス(商業送り状)などの貿易関連書類を収集する必要があり、保険会社に補償内容をメールなどで確認する必要がある。また、海外クレーム代理店と鑑定会社との間で、事故の内容などに関する情報共有も必要になる。
このため、海外クレーム代理店が、最新の保険証券と世界中に点在する貿易関連書類の収集、関係者との情報共有をいかに素早くかつ正確に行えるかが、迅速な保険金支払い手続きを上で課題となっているという。
そこで両社は、2017年11月から2018年8月にかけて共同実証を実施。保険金の支払い手続きに必要な保険証券、事故報告書、貿易関連書類などを電子化してブロックチェーン上に流通させ、ドイツ、オランダ、米国、チリ、中国、台湾、韓国、タイの計8拠点の海外クレーム代理店と鑑定会社と即時に共有し、保険金支払いプロセスの効率化に向けた効果を検証した。
技術面では、貨物の損傷写真や鑑定結果の報告書などの大容量データをブロックチェーン上で円滑に共有できることを確認。また、適切なアクセス性能や、業務効率性の観点からも効果を検証できたという。
具体的な効果としては、荷主などの被保険者は、保険金請求に必要な書類の用意や提出にかかる業務の削減と、保険金支払いが従来の最大1カ月超から1週間程度にまで短縮されることが期待できるという。
また、保険会社は、海外クレーム代理店への情報共有業務を削減などが可能。海外クレーム代理店は、必要書類の案内や取り付け、保険会社への保険契約内容の確認、鑑定会社との情報連携といった業務の削減と、保険金支払い処理の迅速化を実現でき、鑑定会社は、鑑定作業の迅速化や鑑定作業の品質向上などが期待できるとしている。
東京海上日動とNTTデータでは、実証実験で得た効果や課題について検討を進め、2019年度中に一部を実用化することを計画している。
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