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AWS re:Invent 2018で、CEOのアンディ・ジャシー氏が競合他社について語った理由AWS re:Invent 2018発表まとめ(4)

AWS re:Invent 2018の基調講演で、Amazon Web Services CEOのアンディ・ジャシー氏は競合他社について言及した。そして「right tool for the right job」、つまりやりたいことに最適なサービスや利用方法、機能を選べることの利点を語った。

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 Amazon Web Services(AWS)CEOのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏は、これまで同社のイベントAWS re:Inventの基調講演で、他の競合クラウドベンダーについて言及したことはほとんどなかった。第1回目のAWS re:Inventでは、従来型エンタープライズITベンダーを引き合いに出し、「高マージン狙いは当社のビジネスモデルではない」と断言した(ちなみにAWSは高いマージンを維持している。ジャシー氏は、「あくまで結果だ」と言うだろう)。だが、パブリッククラウドベンダーを話題にすることはなかった。


AWS CEOのアンディ・ジャシー氏

 AWS re:Invent 2018における基調講演は違った。ジャシー氏は次のように話し、その後あらゆる分野で他のパブリッククラウドベンダーよりも多い選択肢と奥深い機能を備えていることを説明した。

 「数週間前に、当社のリーダーの1人がシアトルから飛行機に乗った。隣に座っていたのは、競合他社の年配の人だった。その人は経営幹部へのPowerPointプレゼンテーションを作っているところで、AWSの社員からは内容が比較的簡単に見えた。このプレゼンテーションには『製品戦略は次の通りだ。AWSが発表するもの全てをチェックし、その分野でできるだけ早く何かを発表する。同じ機能を備えているかどうかは関係ない。人々が機能比較表にチェックを入れられ、アナリストが納得すればいい』と書いてあった。一部の人たちは納得するかもしれないが、ソリューションを構築する人たちはなびかない。なぜならこうしたサービスは従量課金のため、とても安価に試せるからだ。プラットフォーム機能の深さにこうした人たちが気付くには、時間がかからない」

 中立的な言い方をすると、以前はデータウェアハウスの「Amazon Redshift」、サーバレスの「AWS Lambda」など、AWSには他のパブリッククラウド事業者の持たないジャンルのサービスがあった。だが今では、「ジャンル」のレベルでいうと、どの主要パブリッククラウドにもサービスがある。簡単な○×表では優劣がつけがたくなってきた。

 そこでジャシー氏は今回の基調講演で、競合他社に比べどこが優れているのかを、ジャンル別に訴えた。基本的なテーマは「right tool for the right job」、つまりやりたいことに最適なサービスや利用方法、機能を選べるということにある。

時系列データベースなどで、データベースの選択肢をさらに広げる

 例えばデータベースサービスでは、11種類の選択肢をAWSは提供してきた。リレーショナルデータベースでは「Amazon RDS(MySQL、PostgreSQL、MariaDB)」および「Amazon Aurora(SQL Server、PostgreSQL)」、ノンリレーショナルではNoSQL DBの「Amazon DynamoDB」、インメモリキャッシュの「Amazon ElastiCache(Redis、Memcached)」、グラフデータベースの「Amazon Neptune」だ。また、データベース移行でも、多数の方法を用意してきたとジャシー氏は話した。


AWSは既に、データベースでも他より多くの選択肢を提供していると述べた

 AWS re:Invent 2018では、ログデータ/IoTなどに適した時系列データベースの「Amazon Timestream」を発表した。1日当たり数兆のイベントの取り込みと分析が可能といい、データを時間で管理しているため、クエリ性能が高いとする。いつも通り比較の対象と条件があいまいながら、「リレーショナルデータベースに比べ、クエリ性能は1000倍で、コストは10分の1」と説明している。同サービスではインスタンスの設定や管理が不要。

 2018年8月末のVMworldで「数カ月以内に提供開始予定」と告知していた「Amazon RDS on VMware」については、プレビュー提供が発表された。これはオンプレミスのVMware vSphere環境で、AWSによる管理の下でデータベースを使えるサービス。Oracle Database、SQL Server、PostgreSQL、MySQL、MariaDBが選べる。

 インメモリキャッシュを備えるNoSQLデータベースのDynamoDBでは新たな料金体系「DynamoDB on-demand」を発表した。これを選ぶと、ユーザーはキャパシティ管理が不要になり、読み書きリクエストの数に対して料金を支払えばよい。

2つのブロックチェーンソリューションでAWSが発揮する価値

 ジャシー氏はAWS re:Invent 2017で、ブロックチェーンについて記者に聞かれ、「ユースケースが見いだせていない」と答えていた。だが、ほどなくして回答を得たようだ。

 AWS re:Invent 2018では、分散型のブロックチェーンで「Amazon Managed Blockchain」、集中管理型のブロックチェーンでは「Quantum Ledger Database(QLDB)」を発表した。

 Managed BlockchainはHyperledger Fabric(後にEthereumを追加予定)のホステッドサービス。分散型ブロックチェーンはさまざまな主体が参加するものであるため、独自に開発するのではなく、既に利用が広がりつつあるプラットフォームを採用するのは自然だ。

 AWSのビッグデータ/データレイク/ブロックチェーン担当ゼネラルマネージャー、ラウル・パシャク(Rahul Pathak)氏は、「ユーザーは、既にオンプレミスなどどこかでHyperledger Fabricを動かしている組織とやり取りするために、分散型ブロックチェーンサービスを使う。従って、既に多くの組織が選択しているプラットフォームに対応する」と説明した。

 では、AWSが提供するサービスはHyperleder Fabricなどの運用管理負担を軽減するという付加価値しかないのか。パシャク氏は、「Hyperledger FabricのコアコンポーネントをQLDB上で動かしている。つまり、オープンソースAPIの互換性を保ったまま、ベースの実装をより高性能で強固なものにしている」と説明した。

 一方、QLDBはAmazonが同社のビジネスのために構築し、利用してきた技術を基にしたサービスという。信頼関係を集中管理するため、金融取引やサプライチェーン管理などの用途を想定している。QLDBは分散データベースで、改ざんできないジャーナル機能を備え、取引履歴およびデータは保全される。ドキュメント的なデータモデルでありながらSQLライクな言語でアクセスでき、扱いやすいという。同じ用途のためにHyperledger Fabricなどが使われることがあるが、こうしたフレームワークに比べて2、3倍の性能を発揮するとしている。

ストレージ関連では、Glacierでさらに安価な選択肢が登場

 ストレージ関連でも、AWSは幅広い製品群を備えてきた。ブロックストレージボリュームの「Amazon EBS」から、オブジェクトストレージの「Amazon S3」、アーカイブストレージの「Amazon Glacier」、ファイルストレージ「Amazon EFS」まで、基本的に全てのストレージタイプを提供している。

 だが、ファイルストレージサービスについては、Windows 対応が完全ではなかった。Amazon EFSはNFSプロトコルでしかアクセスできないためだ。これまでSMBプロトコルでアクセスできるファイルストレージを使いたい場合、Windowsサーバインスタンスを立ち上げ、これをファイルサーバとして構築するしかなかった。

 今回のAWS re:Inventでは、「Amazon FSx for Windows File Server」が発表され、SMBファイルストレージ機能を、サービスとして利用できるようになった。さらに、高速処理に耐える大容量ファイルシステムとしてLustreを採用した「Amazon FSx for Lustre」を発表した。

 アーカイブサービスでは「Amazon S3 Glacier Deep Archive」が登場した。既に存在するアーカイブサービスAmazon Glacierはいつの間にか「Amazon S3 Glacier」と改称され、どちらもオブジェクトストレージサービス「Amazon S3」におけるストレージクラスという位置付けになっている。

 Glacier Deep Archiveは、Amazon S3 Glacierよりも安価なアーカイブストレージサービス。価格はリージョンにより異なるが、最低で0.00099ドル/GB/月。つまり1TBで約1ドル/月の計算になる。コンプライアンス用途のアーカイブなど、利用頻度がかなり低いデータの保存に使える。利用頻度が低いデータにしか使えない理由は、いったんアーカイブしたデータを取り出そうとすると、12時間かかる可能性があるからだ。これに対し、Amazon S3 Glacierでは高速取り出しオプションを選択すると、通常1〜5分で取り出しが可能。取り出しに最長で48時間を要する、さらに安価な選択肢も提供するという。同サービスは2019年に全リージョンで提供開始する。

「顧客志向」をあらためて生かす

 ジャシー氏にとっては、全てのAWSサービスが、他の主要パブリッククラウドサービス事業者に勝っているということになる。第三者が見れば、全てが他に比べて優れているとはいえないだろう。ただしAWSでは、既存のサービスが顧客のニーズを満たしきれない場合に、新たな選択肢を提供することで、これを補っている。また同社は、同社の既存サービスを使うユーザーの課題を解決するような、「プロ好み」の新機能を最近増やしている。多くのユーザーを持ち、フィードバックループを回せて行けることが、今のところ競合他社に比べたAWSの大きな優位性であることは、否定することができない。

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