RPAで年換算438時間の縮減、東京都が実証実験:縮減率は平均66.8%
東京都は、RPAによる作業自動化の共同実証実験結果を発表した。主税局やオリンピック・パラリンピック準備局などの29業務を対象に実施した結果、25業務で年間換算438時間の縮減効果が得られたという。
東京都は2019年3月27日、「RPA(Robotic Process Automation)による作業自動化の共同実証実験」の結果を発表した。同実験では、みずほ情報総研と4社からなるNTTデータ自治体RPA推進チームが共同で、RPAに向けた業務分析やシナリオを作成し、東京都職員とともに効果を検証した。その結果、処理時間の縮減や正確性の向上、自律的な業務改善を確認したという。
対象となった部署は東京都の主税局やオリンピック・パラリンピック準備局、水道局、収用委員会事務局、総務局。実際にRPAを適用した業務は、個人事業税の統計資料整理や通勤届の作成支援、文書管理システムへの入力など29種類。
これら29業務のうち、25業務で処理時間を縮減でき、年間換算すると438時間の縮減効果が得られた。縮減率の平均は66.8%。例えば通勤届の作成支援では46時間の縮減効果が得られたとしている。
さらに効果が大きかった業務もある。総務局で公立図書館に関するファイルを作成する業務では、従来27.5時間を要していた処理時間が、RPA活用により0時間へと短縮できた。
時間縮減以外に2種類の効果あり
実証実験により、時間縮減以外にも2種類の効果が得られたという。正確性の向上と、自律的な業務改善だ。
正確性の向上とは、あらかじめルールに基づいた処理手順を自動化して機械的に実行することで、誤処理やヒューマンエラーを未然防止したり、メールの宛先入力の間違いや、資料の添付漏れ、Excelや業務システムでのデータの誤入力や誤転記といったミスを防止したりする効果。
自律的な業務改善とは、協力事業者からサポートを得ながら、東京都の職員自らが業務分析を行ってRPAのシナリオを作成した結果、業務を見直す契機になったことだ。職員は29業務中25業務でシナリオを作成した。
本格活用に向けた3つの課題とは
このように適切に活用すれば大幅な業務効率化が可能なRPAだが、本格的な活用に向けては課題もあると、東京都は指摘する。
「難しそう」あるいは「制御できなくなるのではないか」など、ユーザーがRPAに対して疑問や不安を抱くことが第一の課題だ。これまでなじんだ仕事の進め方を変えることへの抵抗感も少なからずあるという。
第二に日常業務に取り組みながらRPAの新技術を習得する時間が確保できないこと。RPAソフトウェアを導入する際、研修などの支援パッケージが十分に確立されていないと指摘している。
第三に、「野良ロボット」と呼ばれる、制御が効いていないシナリオを防止する必要もある。東京都ではこうした課題に向けて、RPAの活用に関する全庁的なガイドラインの整理が必要だとした。
東京都は今回の実証実験によるRPAの活用を経て、今後は、BPR(Business Process Re-engineering)へと発展させることが可能だと、報告書でまとめている。
どのようなRPAツールを使ったのか
実証実験では、日本語対応していること、各職員が使用する端末へ導入するタイプのソフトウェア(デスクトップ型)であること、シンクライアント化された環境下での実験の実施も可能なこと、という3条件を設定し、公募により「WinActor」を採用した。
今回の実証実験の協力事業者は、みずほ情報総研と、NTTデータ自治体RPAチーム(NTTデータ、クニエ、Blueship、キヤノンマーケティングジャパン)。実証実験の期間は2018年10月30日〜2019年3月31日。
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