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顔が半分見えれば、AIは認識可能――英大学が実証顔の下半分だけでも60%を認識

顔が半分しか見えない場合でも顔認識技術が機能することが分かった。英ブラッドフォード大学の研究チームが、さまざまな見え方の顔画像を用いた実験で実証した。

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 英ブラッドフォード大学の研究チームは、顔が半分しか見えない場合でも顔認識技術が機能することを実証した。

 研究チームは人工知能(AI)技術を使って、顔の4分の3が見える場合と半分が見える場合の両方で、100%の顔認識率を実現した。この研究では、顔のさまざまな部分について認識率を検証した。このような用途で機械学習を利用した初めての研究だという。研究チームは研究成果をまとめた論文を「Future Generation Computer Systems」で発表している。

 研究リーダーを務めるブラッドフォード大学のハッサン・ウゲール教授は、こう述べている。

 「人間の顔認識能力は驚異的だが、これまでの研究から、顔の一部しか見えないと、認識精度が落ちることが分かっている。これに対して、コンピュータは既に、多数の顔の中から一つの顔を認識する能力が人間より優れている。そこでわれわれは、顔の一部分の認識でも、機械の方が優れているのかどうか調べようと考えた」

 研究チームは、機械学習技術として「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」を採用し、特徴抽出モデル「VGG(Visual Geometry Group)」を利用した。VGGは、最も普及した特徴抽出モデルの一つであり、顔認識技術で広く使われている。

通常のトレーニングで顔の上半分の認識率が100%に

 今回の研究では、ブラジルのFEI大学に所属する200人の学生と職員の複数の写真(合計2800点)を含むデータセットを使用した。研究では男性と女性が同数になるようデータを選んでいる。

 最初の実験では、顔全体の画像を使ってモデルをトレーニングさせた。このとき、認識率は100%に達した。

 次の実験では、顔の一部しか見えないときに、顔をどの程度認識できるかを調べた。顔の4分の3だけが見える場合や、上半分または右半分だけが見える場合も、100%の認識率を記録した。

 ただし、顔の下半分だけに限定した場合の認識率は60%、目の部分と鼻の部分を分けて示した場合は40%にとどまった。

顔の部分画像でもトレーニング

 続いて研究チームは、顔の部分画像も使ってモデルをトレーニングさせ、再度実験を行った。すると、顔の下半分や、分けて示した場合の目と鼻の部分、さらには目と鼻以外の部分についても、90%程度の認識率を実現できた。

 ただし、鼻や頬、額、口といった顔の個々の部分だけを見せた場合は、どちらの実験でも認識率が低かった。

 ハッサン教授によると、今回の結果は有望だ。

 「われわれは、顔の一部しか見えない画像でも、非常に正確に認識できることを実証した。どの部分が顔認識に最も有効かも明らかにできた。われわれの技術はセキュリティや犯罪防止に応用できる大きな可能性がある」

 ハッサン教授は今後の顔認識技術の方向性について次のように語っている。

 「われわれは今後、もっと大規模なデータセットで実験結果を検証する必要がある。だが、いずれにしても将来、顔認識に使われる画像データベースには、顔の部分画像も含めることが必要になるだろう。顔全体が見えない場合でも正確に顔認識を行うように、モデルをトレーニングできるようにするためだ」

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