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Gartner、2019年以降の「無線技術」の10大トレンドを発表Wi-FiからV2X無線、遠距離無線充電まで

Gartnerは、無線技術の10大トレンドを発表した。Wi-Fiや5Gなど比較的なじみ深い技術から、無線センシングやバックスキャッタネットワーキングまで幅広い無線技術について扱っている。

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 Gartnerは2019年7月23日(米国時間)、無線技術について同社が予測した今後注目すべき10大トレンドを発表した。

 「無線イノベーションには、5Gやミリ波といった未成熟な技術が多くの分野に含まれている。こうした分野では、企業がまだ備えていないようなスキルが必要になる。イノベーションや技術変革の推進を目指すエンタープライズアーキテクチャ(EA)や技術イノベーションのリーダーは、革新的な新しい無線技術を見つけて試し、可能性について判断し、導入ロードマップを作成すべきだ」と、Gartnerのディスティングイッシュトリサーチバイスプレジデント、ニック・ジョーンズ氏は語る。

 Gartnerは10大トレンドについて次のように説明した。

トレンド1:Wi-Fi

 Wi-Fi(無線LAN)は長年にわたって使われている。今後、2024年まで、オフィスと家庭向けの主要な高パフォーマンス無線ネットワーキング技術であり続ける。一般的なコミュニケーションに使われるだけでなく、レーダーシステムや二要素認証システムのコンポーネントのような新しい役割も担うようになる。

トレンド2:5G携帯通信

 5G携帯通信システムは、地域によって異なるものの、2019〜2020年に導入が始まる。導入の完了には5〜8年かかる見通しだ。5G携帯がWi-Fiを補完する場合もありそうだ。空港や工場、港といった大規模サイトでは、5G携帯の方が経済的な高速データネットワーク技術だからだ。

トレンド3:V2X無線

 V2X(Vehicle to X)通信は、車車間(V2V:Vehicle to Vehicle:車両同士)や路車間(V2I:Vehicle to Infrastructure:車両と道路インフラ間)、歩車間(V2P:Vehicle to Pedestrian:車両と歩行者間)といった通信の総称だ。V2X無線システムは情報や状態データの交換だけでなく、安全機能やナビゲーション支援、インフォテインメントなど、多様なサービスに利用されることになる。

 ジョーンズ氏は次のように指摘している。

 「V2Xは、最終的には全ての新車の法的要件になるだろう。しかし、その前に、必要なプロトコルを組み込んだ車両が登場する。V2X無線システムが真価を発揮するには、5Gネットワークが必要になる」

トレンド4:遠距離ワイヤレス充電

 従来のワイヤレス充電技術では、充電器のすぐそばにデバイスを置く必要があったが、新しい遠距離ワイヤレス充電技術では、充電器から1メートル以上離れていても、デバイスをテーブルやデスクに置くだけで充電できる。

 「遠距離ワイヤレス充電により、いずれはノートPCやモニター、さらにはキッチン家電といったデバイスで、電源ケーブルが不要になるだろう。そうなれば、仕事空間や生活空間のデザインが一新される」(ジョーンズ氏)

トレンド5:LPWAネットワーク

 低消費電力広域(LPWA:Low Power Wide Area)ネットワークは、電池によってかなり長期間、動作しなくてはならないIoTアプリケーション向けの技術であり、低帯域幅の接続を提供する。通常、市や国全体のような非常に広大な地域をカバーする。

 現在のLPWA技術には、NB-IoT(Narrowband IoT)やLTE-M(Long Term Evolution for Machines)、LoRa、Sigfoxなどがある。これらに対応した無線モジュールは比較的安価であり、IoTメーカーは小型で低コストのバッテリー駆動デバイス(センサーやトラッカーなど)にこれらの無線モジュールを採用している。

トレンド6:無線センシング

 無線信号は吸収されたり、反射されたりする性質があり、センシング(検知)に利用できる。無線センシング技術は、ロボットやドローン用の室内レーダーシステムなどに利用できる。仮想アシスタントでは、同じ部屋で複数の人が話しているときに、レーダートラッキングを利用して、パフォーマンスを改善可能だ。

 「センサーデータはIoTの『燃料』といえるだろう。無線センシングは、医療診断やオブジェクト検出、スマートホーム機器の操作など、多様なユースケースに統合されるだろう」(ジョーンズ氏)

トレンド7:高度な位置追跡

 無線通信システムを用いて接続先デバイスの位置を検知する技術は、重要なトレンドの一つだ。次世代測位規格であるIEEE 802.11azでは、高精度(1メートル程度の精度)の位置追跡が可能になる。これは将来の5G規格が含む機能と位置付けられている。

 「位置情報は、消費者マーケティングやサプライチェーン、IoTなど、さまざまなビジネス分野で必要となる重要なデータポイントだ。例えば、高精度の位置追跡は、室内でロボットやドローンを使うアプリケーションに欠かせない」(ジョーンズ氏)

トレンド8:ミリ波無線

 ミリ波無線技術は、30〜300GHzの周波数帯(波長は1〜10ミリメートル)を使う。この技術は、短距離の高帯域幅通信(4Kや8Kのビデオストリーミングなど)用のWi-Fiや、5Gなどの無線システムで使われる。

トレンド9:バックスキャッタネットワーキング

 バックスキャッタ(Backscatter)ネットワーキング技術では、消費電力を非常に低く保ったままでデータを送信できる。つまり、小型のネットワーク接続デバイスに最適だ。この技術が特に重要となるのは、無線信号で飽和しているエリアで、スマートホームやオフィスのセンサーなど、比較的単純なIoTデバイスが必要な場合だ。

トレンド10:ソフトウェア無線

 ソフトウェア無線(SDR)は、無線システムにおける信号処理の大部分を、チップではなく、ソフトウェアで行う。これにより、無線システムはより多くの周波数やプロトコルをサポートできる。この技術は何年も前から利用可能になっているが、いまだ普及していない。専用チップを使う場合よりもコストがかさむからだ。

 だが、Gartnerは、新しいプロトコルの登場に伴い、SDRの普及が進むと予想している。SDRにより、デバイスは長期間残り続けるレガシープロトコルをサポートしつつ、新しいプロトコルにも対応できる。なぜならソフトウェアをアップグレードするだけで利用できるようになるからだ。

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