営業部のEUCだけど、契約だけ情シスでやれってこと?――情シスはつらいよ:コンサルは見た! 情シスの逆襲(4)(1/4 ページ)
オンラインショップをオフショアで開発することにした、老舗スーパーマーケットチェーン「ラ・マルシェ」。開発は順調に進んでいたが、その裏では不穏なうわさが食品業界を飛び交っていた……。
連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。
登場人物
ラ・マルシェ
都内に十数店舗を展開する、創業50年の高級スーパーマーケットチェーン
アクセル乳業
中堅の乳製品メーカー。ラ・マルシェに高級チーズを卸している
ルッツ・コミュニケーションズ
大連に本社を置く、社員数30人ほどのITベンダー
A&Dコンサルティング
大手コンサルティングファーム
前回までのあらすじ
営業部門の発案でオンラインショップを作ることになった、老舗スーパーマーケットチェーン「ラ・マルシェ」。仕事を依頼できるベンダーに心当たりのない担当の小塚は、情シスの同期 羽生にベンダーの紹介を依頼する。
多少強引に依頼する小塚の様子を見た羽生の上司 村上は「気に食わないねえ」とつぶやくと、情シスオリジナルの企画を提案することを羽生に勧めた。
何かご存じですか?
「江里口さんは、『ラ・マルシェ』というスーパーとお付き合いがありますか?」――突然の質問に、美咲の目が丸くなった。
ここは中堅の乳製品メーカー「アクセル乳業」の応接室だ。美咲が基幹システムの見直しを担当するクライアントである。担当の荒川とは長い付き合いになるが、彼の口からラ・マルシェの名前を聞くのは初めてだった。
「取締役から相談を受けることがたまにありますが……ラ・マルシェが何か?」
「いや……」
荒川はいったん言葉を切ってから、話し始めた。
「ウチは長年、ラ・マルシェさんに高級チーズを卸しているんですがね。『来年から取り扱いを倍に増やしたい』と言われまして……」
マルシェからの申し入れがオンラインショップ開設を見越してのことだと気づいた美咲は、小さくうなずいた。
「それは良いお話ではないですか」
売り上げが伸びる話の割に、荒川の表情には迷いの色が見られた。
「いや、たくさん注文を頂けるのはありがたいのですが、増産となるとうちもそれなりに投資が必要でしてね。工場のラインを増設せにゃあならんのです。ラ・マルシェに納めているのは特別に開発したチーズなので、いろいろ複雑な工程を踏んで作ってるんです」
「なるほど」
「だから、注文増はいいけれど、しばらくたって『売れないからやっぱり元に戻す』なんて言われたら、それなりに損失が出ちゃうわけで……」
「確かに」
「そもそも、新店舗を出すわけでもないのに何で注文を増やすんですかね?」
荒川が探るように美咲の顔をのぞき込んだが、美咲は「さあ、どうなんでしょう」とだけ答えた。ラ・マルシェのオンラインショップの件は、まだ公にはできない。
「高橋社長はいろいろと新しいアイデアを出す方だと聞いてますので、今後、何か動きがあるかもしれませんね」
そこまでの答えが精いっぱいだった。
「そこがね、ちょっと心配ではあるんですよ」
荒川の声が少し低くなった。
「えっ?」
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