富士フイルムソフトウエアが明かす、マイクロサービス構築と運用の難しさを解消する3つの技術スタック:特集:百花繚乱。令和のクラウド移行(18)(1/2 ページ)
多数の事例取材から企業ごとのクラウド移行プロジェクトの特色、移行の普遍的なポイントを抽出する本特集「百花繚乱。令和のクラウド移行」。富士フイルムソフトウエアの事例では、マイクロサービス構築と運用のポイントを中心にお届けする。
マイクロサービスを商用サービスに適用するケースが増えてきた。富士フイルムもその1社だ。「Google Cloud Next in Tokyo」(2019年7月30日〜8月1日開催)において、富士フイルムソフトウエア ソフトウエア技術本部 基盤技術グループの主任研究員ムサヴィ・ジャハン・アバディ・セイド・モハマド氏と、同社 ソフトウエア技術本部 ITソリューショングループ ネットサービスソリューションチームでインフラエンジニアを務める渕田行彦氏が行った講演「エンタープライズ企業におけるマイクロサービス採用とその効果」の内容から、マイクロサービス構築と運用のポイントを整理する。
「FUJIFILMプリント&ギフト」のバックエンドをマイクロサービス化
フォトイメージングやグラフィック、デジタルカメラ、メディカルなど、富士フイルムグループが展開する製品、サービスのソフトウェア開発と、グループ向けにITインフラサービスを展開する富士フイルムソフトウエア。消費者向けネットサービスやデジタルカメラの他にも、企業向けのSaaSや印刷システムソリューション、医療機器、医療ITソリューションなどを提供する。
渕田氏はインフラの設計や構築、運用および新技術の獲得推進を、ムサヴィ氏はソフトウェアアーキテクチャの設計や実装の技術支援をそれぞれ担当している。富士フイルムソフトウエアが開発、運用しているソフトウェアの中にはマイクロサービスアーキテクチャを採用しているものもある。その一つが富士フイルムのプリントや写真雑貨を注文できるB2C向けのネットサービス「FUJIFILMプリント&ギフト」だ。バックエンドの注文管理システム(以下、OMS)にマイクロサービスアーキテクチャを採用し、スケーラビリティの向上や保守/運用コストの削減、機能改善スピードの向上を図っている。
スケーラビリティを確保しやすい仕組みを最優先して判断
渕田氏はマイクロサービス化の背景には「10年以上運用を続ける中でレガシーシステム化したこと」があったと説明した。そのため、保守、運用コストが増大する一方、機能改善のスピードが低下。さらに、ユーザーの消費動向の変化に追随する必要も出てきた。また、ユーザーの消費傾向もこれまではモノを消費して満足というかたちだったが、今はいかに良い体験を得るかが重視されるようになってきた。
「コストを抑え、スピードを高め、モノ消費からコト消費への変化に対応していくためには、レガシーシステムのリプレースが必要でした」(渕田氏)
リプレースに当たって行った課題分析から、保守、運用コストが増大する原因としては、品質保証の難しさ、保守要因の学習コストの大きさ、影響範囲の見極めの難しさがあった。また、頻繁なシステム構成の変更でサーバ増設や動作確認の工数が増えたり、余裕を持ったサーバ構成を取ったりする必要が出てきていた。
「特に苦労しているのは、季節イベントやキャンペーンでした。負荷量の変動に対してシステムが追随しにくく、増やした分だけ管理対象が増え、確認の手間が増えていました。スケーラビリティを確保しやすい仕組みを最優先し、コンテナを活用したマイクロサービスの採用を決定しました」(渕田氏)
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