ITプロジェクトチームの過負荷を防ぐためにやるべき4つのこと:Gartner Insights Pickup(131)
ITプロジェクトチームを負荷が極端に高い状況に追い込むと、結局パフォーマンスが低下してしまう。では、負荷を減らすにはどうしたらいいのか。答えは必ずしも、チームの人数を増やすことにあるわけではない。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
プロジェクトチームを高速道路を走る車と考えてみよう。交通密度(人的リソースの利用率)が高いと、小さな衝突事故が車の流れにすぐ影響する。車の流れを大幅に遅らせてしまうか、完全に止めてしまう。交通密度が100%でなくてもこうした影響がある。すなわち、道路の利用率が70%以上に達すると交通渋滞が発生し始める。
ITプロジェクトリソースも同様だ。通常、担当者を働かせすぎてしまうと逆効果となり、パフォーマンスが下がってミスが増えてしまう。Gartnerの調査では、人的リソースの利用率が低いチームは、ビジネス的な価値を生み出すのにかかる期間を30%以上短縮できることを示している。
「リソース不足は、特定のスキルを持った人材の不足や絶対的な人数不足が原因になることがあるが、多くの場合、問題は既存リソースが有効に活用されていないことだ」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのロバート・ハンドラー氏は指摘する。
「現在のITスタッフはやるべきことがあまりにも多く、過大な負荷がかかりがちだ。彼らは何でもこなそうとするが、あまりうまくいっていない。プロジェクトチームは、計画を立ててじっくり考え、イノベーションを起こせるだけのキャパシティーが必要だ」(ハンドラー氏)
Gartnerによると、プログラムおよびポートフォリオ管理(PPM)のリーダーは、4つの基本的なステップを踏むことで、プロジェクトリソースの利用率を最適化できる。
ステップ1:プロジェクトに投入できるリソースのキャパシティーを計算する
FTE(Full Time Equivalent:フルタイムの人員に換算した人数)に、プロジェクト業務向け稼働率(プロジェクト業務に費やす時間の割合)を掛けて、プロジェクトに投入できる人数を算出する。
稼働率の扱いは注意が必要だ。例えば、休暇、病気休暇、トレーニング時間、休日を除いた労働時間を母数としたプロジェクト業務向け稼働率が50%の場合、理論上の年間総労働時間を母数に取ると、稼働率は37%にとどまる。
ステップ2:プロジェクトに投入できる総時間を計算する
FTEを時間に換算し、プロジェクトに投入できる総時間を求める。例えば、稼働率が上記の37%である場合、1 FTEの年間稼働時間は760時間となる。
ステップ3:目標利用率を設定する
全てのプロジェクトリソースの目標利用率を80%未満に設定し、この数字を使ってアクティブプロジェクトの数を制限する。リソースが目標より低い利用率で稼働すると、効率が悪いように思うかもしれない。だが、目標より高い利用率でリソースが稼働すると、コストがかさむ遅延やエラーがプロジェクトで発生する可能性が高い。
ステップ4:キューを制限または変更する
例えば、レストランでは空いたテーブルがあるのに席を待つ場合がある。これは、店側が、ホール担当者に負荷がかかりすぎ、その結果として顧客のディナーのひとときを台無しにしないようにしているからだろう。ホール担当者の数が、良いサービスの提供を制限するということだ。
PPMオフィスは、プロジェクトリソースの利用率が80%に迫ったら、サービスの提供に制限をかける必要がある。リソースの利用率が80%以上である場合に新しいプロジェクトを開始すると、その時点ではプロジェクトのステークホルダーの要望を満たすかもしれない。だが後になって、ステークホルダーやプロジェクトチーム、ユーザーをがっかりさせることは確実だ。他にも多くの人を失望させてしまう恐れがある。
上のレストランの例では、待つこと自体を心地よい楽しい体験にすることもできる。例えば、顧客をバーに案内し、特別なサービスを提供するという手がある。
ITプロジェクトでは、厳密な選択および承認基準を適用すれば、価値の低い作業項目が承認されるのを防ぎ、こうした項目をプロジェクトのキューから排除できる。
また、プロジェクトの主要フェーズの終了時に効果的なゲートレビューを追加し、戦略的目標との整合性をチェックすることで、プロジェクトを停止してリソースを解放できる。
複数の作業キューを作成することも有効かもしれない。企業は便利さから、1つのプロジェクトキューを使用することが多い。だが、小さな作業項目が増えすぎてプロジェクトキューからあふれ、納品を不必要に遅らせる場合がある。
デジタルビジネスで発生する頻繁な変更に対処する場合は、プロダクト管理のアプローチを取り、専任チームがキューを管理するとともに、ガバナンスを確保することが効果的だ。
出典:How to Avoid Overloading Your IT Project Team(Smarter with Gartner)
筆者 Susan Moore
Director, Public Relations
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