共同創業者CTOに聞いた、freeeが推進する「オープンAPI」「オープンプラットフォーム」の中身(1/2 ページ)
freeeが、同社の公開するAPIを通じたエコシステムの構築を急いでいる。これは、「オープン」の名の下に展開する単なるパートナープログラムとどう違うのか、共同創業者でCTOの横路隆氏に聞いた。
freeeが、同社の公開するAPIを通じたエコシステムの構築を急いでいる。同社は2020年2月5日、東京都内で開発者や潜在パートナーを対象としたイベント「Biz Tech Frontier 2020」を開催、「オープンなプラットフォーム」との連携を訴えた。これは、「オープン」の名の下に展開する単なるパートナープログラムとどう違うのか、共同創業者でCTO(最高技術責任者)の横路隆氏に聞いた。
クラウド会計サービスから始め、人事・労務など、“中小企業のためのクラウドERP”を提供するようになったfreeeだが、「やりたいことを自分たちだけでは全てできないことは創業時点で分かっていた」(横路氏)。APIの公開は、事業がある程度軌道に乗った後、次の成長に他社の力を生かすために行うスタートアップもあるが、同社では当初から計画に含まれていたという。
「Salesforce.comやAmazon Web Servicesのように、プラットフォームとして成功するためには、前提としてAPI提供が必要だと考えていた」
freeeは創業半年後の2013年10月にβ版としてAPIの公開を始め、2015年からは「会計freee」、続いて「人事・労務freee」のAPIを、段階的に正式公開してきた。現在では大部分の機能がAPI経由で利用できるようになっているという。2019年1月にはfreeeのサービスと連携するアプリ/ソリューションのマーケットプレイスとして「freeeアプリストア」を開設した。現時点では約60のソリューションを掲載しているが、これを300に増やすことを目指している。
freeeはAPIを無償で公開している。秘密保持契約などを締結するなどの手続きやタイムラグなしに、即座に利用できる。横路氏はリファレンス情報などの充実を通じ、「開発者ポータルへのアクセスから、最初にAPIをたたけるまでを5分以内にする」という目標を掲げて改善を続けていると話している。また、開発者コミュニティーを運営し、立場を超えた情報共有・情報交換を進めているという。
APIを使うのは業務アプリベンダーなどの開発者に限られない。会計士やユーザーも活用できる。「創業当初と現在の大きな違いは、(「Zapier」などの)ノーコード/ローコード連携ツールが広がったこと」で、これにより、簡単な連携はエンジニアでなくとも気軽に行えるようになった点にあるという。
freeeは簡単な連携の例として、従業員が会社のWi-Fiネットワークに接続した時点で、freeeの勤怠管理に打刻を行う、Slackなどのコミュニケーションツールで経費精算の承認を行う、などを挙げている。
一般的には、販売管理や出張旅行手配などの特定処理、あるいは業種に特化した業務で他のツールを使っている場合、こうしたツールのデータをfreeeに取り込み、統合することで、会計処理を容易にできるという。freeeで経営に関するデータを可視化することで、融資を受けるのに役立てることも可能とする。
前出のアプリストアには、電子商取引プラットフォーム、決済、販売/在庫管理、勤怠/経費精算、業種特化型システムなどが連携ソリューションとしてリストされている。
freee APIはWebhook対応へ、開発者にはダッシュボードを提供
横路氏は今回のイベントで、freee APIに関する今後のロードマップを説明した。これによると、会計freeeでは、Webhookによるリアルタイム連携と、見積書API、ワークフローAPIの充実を図るという。また、人事・労務freeeでも、API機能を拡充すると話した。
Webhookは、情報更新などのタイミングで、他のアプリケーションにメッセ―ジとしてデータを送る仕組み。これを生かして、例えば経費精算リクエストが発生した時点で、これを好みのコミュニケーションツールに通知できるようになる。また、会計freeeではこれまで請求書APIのみ提供してきたが、加えて見積書APIを提供することで、「業務のより前の段階から情報を活用できるようにする」(横路氏)。ワークフローAPIでは、申請経路を指定するなどができるようにするという。
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