Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう(その2)――企業利用でのポイント:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(67)
前回に引き続き、近い将来、現在の「Microsoft Edge」(EdgeHTMLベース)を置き換えることになる新しいMicrosoft Edge(Chromiumベース)に関して企業向けのポイントを解説します。
企業にとって魅力的な新しいMicrosoft Edge
前回説明したように、「Windows 10」のHomeおよびProfessional(ただし、Azure ADまたはActive Directoryドメインに非参加)に対しては、2020年4月1日以降、Windows Updateを通じて新しい「Microsoft Edge」(Chromiumベース)が自動配布され、現在のMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)を置き換えていきます。
一方、企業においては、現時点では自動配布の対象ではありません。もちろん、企業での利用であっても自動配布の条件に一致してしまう場合は、前回説明した自動配布をブロックするツールを利用することができます。
しかしながら、Microsoft Edge(Chromiumベース)は企業にとって魅力ある新機能が多数搭載されており、「Windows 7」以降のWindows、「Windows Server 2008 R2」以降のWindows Server、10.12(Sierra)以降のmacOSに共通のブラウジング環境を提供できるという利点があります(画面1)。
画面1 新しいMicrosoft Edge(Chromiumベース)は、全てのWindowsとmacOSに共通のブラウジング環境を提供(左からWindows 7 SP1、Windows 10、Windows Server 2016、macOS)
例えば、前回説明した新機能「Internet Explorer(IE)モード」は、IE 11を起動することなく、同じブラウザの中でIE 11に依存するWebサイトやアプリの利用を、新しいMicrosoft Edgeがサポートする全てのWindowsで可能にします(ただし、ポリシー管理に対応していないHomeエディションは除く)。
Microsoft Edgeの配布と更新に関する補足
現状、企業での利用においては、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)からMicrosoft Edge(Chromiumベース)に置き換わってしまうことはありません。将来の予定については不明ですが、それが明らかになるまでは、管理者が何らかのアクションを行わない限り、Microsoft Edge(Chromiumベース)が導入されることはないということです。新しいMicrosoft Edgeの新機能を企業内で活用したいという場合は、新しいMicrosoft Edgeを企業内に展開する方法を計画し、実施する必要があります。
現時点では、「Microsoft Endpoint Configuration Manager Current Branch」のバージョン1910以降(※1)を導入済みであれば、新しいMicrosoft Edgeに最適化された配布および更新機能を用いて、企業内のWindows(およびWindows Server)に展開することができます。
【※1】System Center Configuration Manager(SCCM)は、バージョン1910以降、Microsoft Endpoint Configuration Managerに名称が変更されました。
クラウドベースの「Microsoft Intune」を利用できる場合は、新しいMicrosoft EdgeをWindowsおよびmacOSに展開することができます。また、以下のサイトからダウンロード可能なWindows用パッケージ「MicrosoftEdgeEnterpriseX64(またはX86).msi」、macOS用パッケージ「Microsoft-Edge-X.X.X.X.pkg」を任意のソフトウェア配布ツールを利用して展開することも可能です。
前回も触れましたが、現時点で「Windows Server Update Services(WSUS)」だけで、新しいMicrosoft EdgeをWSUSクライアントに配布することはできません*1。
*1 訂正情報(2020年10月20日訂正)
本稿初出時、WSUS単体ではChromium版Microsoft Edgeの配布と更新はできないと記載していましたが、これは誤りです。初期展開についてはWSUS単体では行えませんが、Windowsインストーラーパッケージ(MSI)を用いて既にインストールされているChromium版Microsoft Edgeに対して更新プログラムを配布、更新することは可能です。
WSUSで製品「Microsoft\Windows\Microsoft Edge」を有効にして同期される「Microsoft Edge-x64(またはx86)ベースエディション(ビルド XX.X.X.X)のStable(またはDevまたはBeta)チャネルバージョンXX Update」は、WSUSクライアントへの展開、更新用に設計されたものではなく、Configuration Manager Current Branchの管理下にあるWindowsクライアントへの更新用(展開は専用のインストールウィザードで行う)に設計されたものです(画面2、画面3)。
画面2 新しいMicrosoft Edgeの更新プログラムはWSUSに同期することが可能だが、WSUS単体でクライアントに配布することはできない(更新プログラムの「説明」を参照)。この更新プログラムを承認しても、WSUSクライアントには「インストール済みまたは該当しないコンピューター」として評価される
画面3 Configuration Manager 1910以降では、「Microsoft Edgeクライアントインストールウィザード」を使用して配布用パッケージをダウンロードし展開でき、展開後はWSUSのソフトウェア更新ポイントから更新を配布できる(この機能に関しては日本語を含む一部の環境において既知の問題があります。詳細はConfiguration Managerのリリースノートを確認してください)
これに似たものとして、「Office 365 ProPlus」の更新プログラムの配布があります。WSUSで製品「Microsoft\Office\Office 365 Client」を有効にして同期される「Office 365クライアントの更新」は、Configuration Manager Current Branchを使用した更新の配布のために設計されたものです。
Microsoft Edge Updateによる更新
新しいMicrosoft Edge(x64 Windowsの場合は「C:\Program Files (x86)\Microsoft\Edge\Application\msedge.exe」)を手動でインストールした場合、同時にインストールされる「Microsoft Edge Update」(x64 Windowsの場合は「C:\Program Files (x86)\Microsoft\EdgeUpdate\MicrosoftEdgeUpdate.exe」)によってオンラインで自動更新されます。
新しいMicrosoft Edgeのウィンドウの右上にある「・・・」から「ヘルプとフィードバック」または「設定」の「Microsoft Edgeについて」を開くと、現在のバージョン(ビルド)が表示され、新しいバージョンが利用可能になっていないかどうかチェックされます(画面4)。利用可能な場合、ダウンロードとインストールが行われ、Microsoft Edgeの再起動が要求されます。
画面4 Microsoft EdgeはMicrosoft Edge Updateという機能によって、オンラインで自動更新される(Configuration Manager Current BranchやMicrosoft Intuneによる展開は除く)
なお、Configuration Manager Current BranchまたはMicrosoft Intuneを導入済みであれば、これらのツールを使用して更新を詳細に管理することができます。
FlashはEdgeに同梱、ただし既定で「無効」
Microsoftはサポート期間中のOS(Windows 7/Windows Server 2008 R2を除く)のIEおよびMicrosoft Edgeに「Adobe Flash Player」を同梱し、Windows Update、WSUS、Microsoft Updateカタログを通じてAdobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラムを配布してきました。
新しいMicrosoft Edgeでは、更新の提供方法が変わります。なお、IE 11(IE 10のサポートは2020年1月末で終了)および旧Microsoft Edgeの環境に対しては、Adobe Systemsがサポートを終了する2020年末まで、引き続きWindows Updateを通じてAdobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラムが提供されることになります。
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