Enjoy Kubernetes――クラウドネイティブを楽しむにはコミュニティーやミートアップへの参加がよい理由:Cloud Native Watch(1)
Kubernetesを中心とする「クラウドネイティブ」の世界を対象にさまざまなトピックを取り上げる本連載「Cloud Native Watch」。初回は、クラウドネイティブ周辺のテックコミュニティーやミートアップを紹介します。
Kubernetesを中心に回り始めたクラウドネイティブの世界
読者の皆さんは、「Kubernetes」を楽しんで利用していますか?
おそらくこの記事にたどり着いた方は、少なからずKubernetesを利用した経験のある方でしょう。あるいは本稿を読み終える5分後には何かしら始めるかもしれません。
本連載「Cloud Native Watch」は、Kubernetesを中心とする「クラウドネイティブ」の世界が対象です。ヒト、企業によってクラウドネイティブに対する定義や価値を見いだすレイヤーが異なる場合が往々にしてあるため、いろんな観点で見える場合がありますが、「Kubernetesを中心に回り始めたクラウドネイティブ」をテーマにさまざまなトピックを取り上げていきます。
※編集部注:Kubernetesやクラウドネイティブについて知りたい方は、下記記事を参照してください。
- Kubernetesがクラウド界の「Linux」と呼ばれる2つの理由:これから始める企業のためのコンテナ実践講座(3)
- 「クラウドネイティブ」はどう誤解されているか:草間一人×青山真也 クラウドネイティブ対談(1)
連載初回となる今回は「クラウドネイティブを楽しむためにコミュニティーに行こう!」という話をします。主な想定読者は、「エンタープライズ企業のエンジニアに限らず、普段コミュニティーやミートアップに来ていないヒト」です。
テックコミュニティーやミートアップに参加できない理由はさまざまかと思います。「忙しい」「そもそも知らない」「最先端を知る意味がない」(エンタープライズにありがち)、きっと他にも理由はあると思いますが、ぜひ勇気ある一歩を踏み出してもらえればと思います!
筆者は、タイトルにある通り、「Enjoy Kubernetes」からの「Kubernetes Loverが増える」ことが人生の目標だったりします(割とガチ)。今回に限らず、機会があれば読者に有益な情報をご提供していけたらと思います。
自己紹介
初回なので自己紹介長めですが、ご了承ください。筆者は誰かというと、Twitterでは「capsmalt」という名でIPA(Indian Pale Ale:ビールの一種)や猫、家族のことをつぶやいているヒトです。実は、筆者自身がKubernetesに魅せられて、日本中に広めるために2017年ぐらいからいろいろと活動しています。時期により濃淡はありますが、年中通してだいたい下記のようなことをやっています。
- 「コンテナ/Kubernetesとは何ぞや?」「何でやるねん?」を初心者に分かりやすく説明
- 「Kubernetes 101」を越えてきたエンジニアに対してNext Stepをサポート(「Cloud Native Trail Map」のStep3以降)
- KubernetesをはじめとするCNCF(Cloud Native Computing Foundation)ホスティングプロジェクトの技術検証
- 商用プロダクトの技術検証
- エンタープライズ企業に対するコンサルティングや技術支援
- SIerに対するコンサルティングや技術支援
- Kubernetesを使いこなすスーパーマン企業へのコンサルティングや技術支援(汗)
- PoT(Proof of Technology)
- PoC(Proof of Concept)
- 意思決定権を有する対象(テックリード、CTO《最高技術責任者》、CIO《最高情報責任者》、時にはCEOなど)への訴求
- テックコミュニティーの運営、参加、登壇
- ミートアップ/テックカンファレンスの運営、参加、登壇
- 商用カンファレンスの運営、参加、登壇
- 書籍執筆や記事寄稿
つらつらと書きましたが、仕事という観点ではいわゆる「プリセールス」です。その範囲をだいぶ越えているので謎めく部分はありますが、さまざまな方と新しい世界を切り開くべく「何でもやってやろう!」と勢いのままに突き進んでいるのが実態といえるかもしれないです。
なお現在(2019年6月から)は、レッドハットという会社に所属しており、KubernetesやOpenShiftのアーキテクトをやっています。
Kubernetesを楽しむためにテックコミュニティーやミートアップに行こう!
Kubernetesって、1人で学んだり、使ったりするのはツライですよね。非常によく聞く話です。せっかく良いテクノロジーだし面白いのにもったいない。では、1人ではなく複数人で学んだり、使ったりするには、どうすればいいのでしょうか?
テックコミュニティーを活用してみましょう。どのようなテックコミュニティーがあるのかについては後述します。まずは、そもそもテックコミュニティーとは、何なのか? 何をやっているのか? について簡単に説明します。
Kubernetesのテックコミュニティーって何? 何をやっているの?
Googleが2014年にKubernetesをオープンソースソフトウェア(OSS)としてCNCFに寄贈しました。ベンダー目線だと、GoogleやRed Hatがリードし、MicrosoftやIBM、Amazon Web Services(AWS)、他にも多数のベンダーがKubernetes(+周辺テクノロジー)に貢献しています。ないがしろにされがちな話ですが、さまざまなテクノロジーを手に取るように扱えるのはベンダーのおかげでもありますしね。日本IBMに新卒で入社した後、Kubernetesをガチでやるべくレッドハットに転職し、ベンダーにも感謝しなきゃなーとわれながら強烈に感じるようになりました。
一方で、日本国内のユーザー企業としては、サイバーエージェントやゼットラボのような日本を代表するKubernetesプレイヤーたちがKubernetesをフル活用しています。2020年の今では、数え切れないほどのKubernetes利用者や、本番サービスにおける実践企業が存在しています。そして、Kubernetesを知り尽くした彼らが、多数の知見を共有してくれています。
つまり、トライ&エラーを繰り返してきたノウハウや知見を惜しみなく世に公開してくれています。その場がテックコミュニティーであり、オフラインの場がミートアップ/テックカンファレンスです。ミートアップ/テックカンファレンスの特徴を箇条書きにします。いろんなパターンがあるので、あくまで例として参考までに。
- 基本的に夜開催(19〜22時ぐらい)
- 1人ないし数人のメンバー(オーガナイザー)によって運営
- 会場はどこかしらの会社のセミナールーム(有償のレンタルスペースを使うことは少なめ)
- メインスピーカーは数人(20〜30分の講演が3つぐらい)
- LT(ライトニングトーク)スピーカーも数人
- 懇親会あり(お酒やソフトドリンク、ピザ、軽食などがふるまわれるが場合が多い)
- 会場提供スポンサーがいたり、飲食提供スポンサーがいたり、いなかったり
もっとも重要なのは、「知見を持った有識者がガッツリ情報を共有してくれること」です。ただそれだけでは成り立たなくて、多くの人がコミュニティーを支えています。基本的にビジネス色はなく、助け合いの精神でミートアップ/テックカンファレンスは開催され、盛り上がりを維持しています。完全にボランティア活動ですね。賃金は発生しないですし(人によっては発生しているのかも? 知らんけど)。
有識者であるスピーカーからの情報共有や、懇親会におけるコミュニケーションで普段の技術的な悩みを相談できたり、企業レベルでの実践事例などの意見交換ができたりと、1人でWebページを見ながらでは得られない情報が入手できます(1人で時間を作って手を動かしながら学ぶことも非常に大切です。念のため)。
「テックコミュニティーよさそう!」って思った方は、ミートアップ/テックカンファレンスにぜひご参加ください!
実は、筆者も幾つか運営しています。いろんな場所に参加者あるいはスピーカーとしても顔を出すので見つけたらお声掛けくださいませ(顔色が悪いのが特徴らしいですが、別に怒っていないですし、死にそうってわけでもないのでお気軽に!)。
もし「参加したいけどちょっと……」って方がいたら、Twitterで「@capsmalt」にお声掛けください。一緒に行きましょう。コミュニティーの雰囲気を伝えたり、いろいろな参加者と話せるようにしたりしたいと思うので、お気軽にどうぞ。
ミートアップ/テックカンファレンスの参加方法
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「クラウドネイティブは、新たな段階に入った」、その意味は
2019年11月にCloud Native Computing Foundation(CNCF)が米サンディエゴで開催した「KubeCon+CloudNativeCon North America 2019」は、約1万2000人を集めた。今回のイベントのテーマは何なのか。CNCFのCTO(最高技術責任者)であるクリス・アニズィック氏に聞いた。 - クラウドも人の子。止まることが前提――ZOZOTOWNが開設15年目に歩み出したクラウドネイティブへの旅路
多数の事例取材から企業ごとのクラウド移行プロジェクトの特色、移行の普遍的なポイントを抽出する本特集「百花繚乱。令和のクラウド移行」。ZOZOTOWNの事例では、マイクロサービス化とマルチクラウド化のポイントを、クラウドベンダーからの提案とともにお届けする。 - 「サービスメッシュ戦争」も、クラウドネイティブな世界のダイナミズムとCNCF
2019年5月20〜23日にスペイン・バルセロナで開催された「KubeCon+CloudNativeCon Europe 2019」では、クラウドネイティブな世界のダイナミズムを感じさせる動きが相次いだ。本記事では、OpenTracingとOpenCensusの統合によるOpenTelemetryの発足、およびMicrosoftなどによるService Mesh Interfaceの発表を取り上げ、CNCFのCOO(最高執行責任者)/CTO(最高技術責任者)であるクリス・アニズィック氏のコメントを交えてお届けする。