新型コロナウイルス感染拡大の余波――Windows 10のライフサイクルへの影響は?:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(74)
本連載で何度か取り上げてきたように、Windows 10は年に2回、春と秋に機能更新プログラムとして新バージョン/ビルドがリリースされ、そのサイクルが継続されます。従来の「最低10年」の製品ライフサイクルは、新しいリリースサイクルに合わせたモダンライフサイクルポリシーに変更されました。最新情報を定期的にチェックして、意図せずサポート対象外にならないように注意しましょう。
新旧ライフサイクルポリシーの共存
Microsoftの古いライフサイクルポリシー(現在は「固定ライフサイクルポリシー」と呼びます)では、OSを除くコンシューマー向け製品については「最短5年」のメインストリームサポートを、エンタープライズおよび開発者向け製品については最短5年のメインストリームサポートと最短5年の延長サポートの「最低でも10年」のサポートが提供されてきました。
「Windows 10」のリリース以降、Windows 10およびWindows Serverには「半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)」が導入され、製品リリース後、原則18カ月のサポートが提供されるようになりました。
ただし、Windows 10 EnterpriseおよびEducationエディションについては現在、春のリリース(通常、3月ごろにビルドが完成)には「18カ月」、秋のリリース(通常、9月ごろにビルドが完成)にはさらに1年(12カ月)を追加した「合計30カ月」のサポートが提供されます。そして、サポート期間中のバージョンには、毎月「品質更新プログラム」が提供されます。
サポートが終了すると品質更新プログラムが提供されなくなるので、それまでに後継の機能更新プログラムのバージョンに移行して、品質更新プログラムを受け取ることができるようにすることが重要です。
Windows 10および「Windows Server 2016」以降には、半期チャネルに加えて、従来の固定ライフサイクルポリシーが適用される「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel:LTSC、旧称、Long Term Servicing Branch:LTSB)」も用意されています。
通常、企業のクライアントOSとしては半期チャネルのWindows 10を導入し、インフラ向けサーバOSとしては、Windows Server 2016や「Windows Server 2019」といった長期サービスチャネルを導入します。
Windows 10の長期サービスチャネルは、POS端末や医療/製造機器の制御端末、その他の組み込み機器など、特定用途での利用を想定したもので、新機能を含む機能更新プログラムは提供されず、「最短10年」の長期サポートが提供されます。
「Windows Server, version 1709」が最初のバージョンとなった半期チャネルのWindows Serverは、クラウドに最適化されたアプリケーションのプラットフォーム(仮想マシンのゲストOSやDockerコンテナのベースOSイメージ)としての利用が想定されたもので、インフラサーバ向けではありません。
このWindowsのクライアントとサーバにおける半期チャネルと長期サービスチャネルの選択基準や、固定ライフサイクルポリシーとモダンライフサイクルポリシーの混在する状況は、企業のインフラを構築、運用する上でどうしても複雑になります。
さらに、Microsoftはこれまで、サポートポリシーに変更を加えてきました。以下の「Windowsライフサイクルのファクトシート」(画面1)や「製品ライフサイクルの検索」ページで、適用されるポリシーの詳細や変更、現在使用中のWindowsのサポート期限について、定期的にチェックすることをお勧めします。これらをチェックすることで、意図せず、突然サポート期限切れになるクライアントやサーバが出現することがないようにすることが重要です。
- Windows lifecycle fact sheet[英語](Windows support)
- 製品のライフサイクルの検索(Microsoftライフサイクルポリシー)
- Lifecycle changes to end of support and servicing dates[英語](Microsoft Docs)
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、サポート期限が迫る半期チャネルリリースのWindows 10およびWindows Serverのバージョンについてサポート期限の延期が発表されているので注意してください。
- Windows 10 バージョン1809のサービス終了日を2020年11月10日まで延長(Windows Blogs)
2020年4月時点のサポート期限まとめ
現在、サポート期間中と、サポートは終了したものの「拡張セキュリティ更新プログラム(Extended Security Updates:ESU)」が提供中のWindowsおよびWindows Serverについて、ライフサイクルの終了日(End Of Support:EOS)、つまり製品サポートが終了して品質更新プログラムの提供が終了する日と、ESUのセキュリティ更新プログラムの提供終了日を、以下の表1〜5にまとめました。
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