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【 git rm 】コマンド(基礎編)――ファイルを削除する/Gitの管理対象から外すLinux基本コマンドTips(401)

本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回はファイルを削除してGitの管理対象から外すことができる「git rm」コマンドです。

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 本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回は、ファイルを削除してGitの管理対象から外すことができる「git rm」コマンドです。

git/git rmコマンドとは?

 「git」は「Git」という分散型バージョン管理システム用のコマンドです。Gitは元々Linuxカーネルのソースコードを管理するために作られた「バージョン管理システム」で、現在は多くのソフトウェアやWebサイトのソースコード、ドキュメントの管理などに用いられています。

 ソースコードを管理する際、最新版だけを保存するやり方はうまくいきません。開発中のさまざまなタイミングで状態を管理し、必要に応じて比較、参照したり、元に戻したりできるようにする仕組みが「バージョン管理システム」です。

 Gitでは、テスト版など複数に枝分かれした状態も管理できます。複数のメンバーによる開発を前提としており、開発中の各時点におけるコメントや、コメントへの返信なども管理できるようになっています。

gitのサブコマンドとGitの仕組み

 gitコマンドはほとんどの場合、「サブコマンド」と組み合わせて利用します(本連載ではgitとサブコマンドの組み合わせをコマンドとして紹介します)。

 今回紹介する「git rm」コマンドは、ファイルをGitの管理対象から外します。インデックス(ステージングエリア)に追加したファイルの削除や、ワークツリーからの削除などを実行できます。

 gitコマンドでは「リポジトリ(repository)」を使ってバージョンを管理します。リポジトリにはソースコードや変更履歴、コメントなどを一括して保管します。リポジトリには、自分のPC上に作る「ローカルリポジトリ」と、「GitHub」などのWebサービス上に作る「リモートリポジトリ」があり、両者を連携させることで複数の開発者による開発を1本にまとめることができます。

 また、ローカルリポジトリのみで運用することも可能です。そのような運用をしているリポジトリにリモートリポジトリを追加したり、逆に、リモートリポジトリを削除したりするには、「git remote」コマンドを使用します。「git remote」コマンドには、さらに「add」や「remove」などのサブコマンドがあります。

 既存のリポジトリ(リモートリポジトリ)にあるソースコードなどを入手したい場合は、まず、「git clone」(連載第381回)でリポジトリを自分の環境に複製します(※1)。リモートリポジトリの内容がバージョンアップされたら「git pull」(連載第382回)で最新版を取得します。開発に参加するのではなく、単に最新版を取得したいという場合は、「git clone」と「git pull」を利用すればよいでしょう。

※1 特定のファイルだけが欲しい場合、例えばGitHub(github.com)にあるリポジトリであれば「Raw」というボタンで表示されるURLを使い、「wget」コマンドなどを使ってダウンロードできる。この他、プロジェクト全体をダウンロードするためのリンクも用意されている([Clone or download]ボタン→「Download ZIP」)。



 保管場所であるリポジトリに対し、ファイルの編集などを行う場所を「ワークツリー」「ワーキングエリア」「作業ツリー」などと呼びます。「git clone」や「git pull」で取得した最新版のファイルはワークツリーに配置されます。つまり「作業ディレクトリ」です。

 ワークツリーで編集した結果をリポジトリに反映する操作を「コミット」と呼びます。「git add」(連載第384回)コマンドでコミットしたいファイルを「インデックス」あるいは「ステージングエリア」と呼ばれる領域に追加します。インデックスにはファイルの変更箇所などが記録されます。

 インデックスの内容は「git commit」コマンドでローカルリポジトリにコミットされ、「git push」コマンドでローカルリポジトリの内容をリモートリポジトリに反映します。従って、「git add」や「git commit」などを行わなければ、自分の環境で編集した内容がリポジトリに影響を与えることはありません。自由に編集し、テストできます。なお、ワークツリーのファイルを過去の任意のコミット状態に戻すことも可能です。

 Gitには、この他、開発中のソースコードやドキュメントを、「テスト版」「○○版」……のように枝分かれさせたり、それらを合流させたりする機能もあります。枝分かれしたそれぞれのバージョンを「ブランチ」(branch)と呼び、ブランチを合流させることを「マージ」(merge)と呼びます。

 コミットには「タグ」と呼ばれる名前を付けることができます。その際には「git tag」コマンドを使います。



コマンドの書式

git [オプション] サブコマンド [サブコマンドごとのオプションや引数]

git rm [オプション] ファイル名……

※ [ ]は省略可能な引数を示しています。




gitの主なオプション

短いオプション 長いオプション 意味
-C パス カレントディレクトリではなく指定したディレクトリで実行したものとする
--bare リポジトリを「bareリポジトリ」(ワーキングツリーが存在しない、管理だけを目的としたリポジトリ)として扱う
-c 設定=値 設定値を指定する(設定は「git config」で確認可能)
-p --paginate 全ての出力を「less」コマンドまたは環境変数PAGERで指定されたコマンドで表示する
-P --no-pager 「less」コマンドで表示しない(「-p」の指定を打ち消す)
--exec-path=パス gitの実行ファイルのパスを指定する(「--exec-path」のみの場合、実行ファイルのパスを表示する)
--html-path gitのHTML形式のドキュメントがインストールされたパスを表示する
--man-path gitのmanファイルのパスを表示する
--info-path gitのinfoファイルのパスを表示する

gitのサブコマンド

コマンド 実行内容
clone リポジトリのクローンを作成する
init リポジトリを新規作成する、または既存のリポジトリを初期化する
remote リモートリポジトリを関連付けする
fetch リモートリポジトリの内容を取得する
pull リモートリポジトリの内容を取得し、現在のブランチに取り込む(「fetch」と「merge」を行う)
push ローカルリポジトリの変更内容をリモートリポジトリに送信する
add ファイルをインデックスに追加する(コミットの対象にする)
rm ファイルをインデックスから削除する
mv ファイルやディレクトリの名前を変更する
reset ファイルをインデックスから削除し、特定のコミットの状態まで戻す
status ワークツリーにあるファイルの状態を表示する
show ファイルの内容やコミットの差分などを表示する
diff コミット同士やコミットとワークツリーの内容を比較する
commit インデックスに追加した変更をリポジトリに記録する
tag コミットにタグを付ける、削除する、一覧表示する
log コミット時のログを表示する
grep リポジトリで管理されているファイルをパターン検索する
branch ブランチを作成、削除、一覧表示する
checkout ワークツリーを異なるブランチに切り替える
merge 他のブランチやコミットの内容を現在のブランチに取り込む
rebase コミットを再適用する(ブランチの分岐点を変更したり、コミットの順番を入れ替えたりできる)
config 現在の設定を取得、変更する

git rmの主なオプション

短いオプション 長いオプション 意味
--cached インデックスからの削除だけを実行する(ワークツリーのファイルは保持する)
-f --force コミット前やインデックスに追加する前のファイルであっても削除する
-r ディレクトリを再帰的に削除する
-q --quiet 実行時のメッセージを減らす
--ignore-unmatch 対象のファイルが存在しなくても、エラーメッセージを表示しない
-n --dry-run 実行せずに実行する内容だけを表示する


Git管理下のファイルを削除する

 「git rm ファイル名」で、Gitで管理しているファイルを削除します。

 実行するとワークツリーからファイルを削除する(「rm ファイル」相当)とともに、インデックスからも削除します。次に「git commit」を実行したときにファイルを削除したことをリポジトリに記録します。

 なお、ワークツリーのファイルが変更されていた場合に「git rm」を実行するとエラーになります。変更内容もろとも削除して構わない場合は「-f」(--force)オプションを指定します。

 コミット後のファイルであれば、「git rm」後であっても「git show」でファイルの内容を確認したり(連載第390回)、「git checkout」(連載第391回)でファイルを復元したりできますが、コミット前の変更は後から参照できなくなります。

 Gitの管理対象からは外すものの、ファイルをワークツリーに残しておきたい場合は、後ほど紹介する「--cached」オプションを使用します。

コマンド実行例

git rm ファイル

(指定したファイルをGitの管理から外し、ワークツリーからも削除する)

git rm -f ファイル

(指定したファイルが最後のコミット後に変更されていても削除する)


 以下の画面1〜4では連載第396回で作成したローカルリポジトリとリモートリポジトリを使用しています。連載第398回で「hello.txt」の変更を「git commit」「git push」した後の状態から始めています。

 画面1ではコミット後に変更していないファイル「hello.txt」を「git rm」で削除したときの様子を示しました。

画面1
画面1 変更していないファイルを削除したところ

 画面2は、ワークツリー内のファイルを変更した後に「git rm」で削除した場合の様子です。冒頭で「git checkout」(連載第392回)を使って、hello.txtを画面1以前の状態に戻してから、あらためて操作しています。

画面2
画面2 変更済みのファイルを削除しようとしたところ


rmコマンドによる削除とは何が違うのか

 「git rm」ではなく「rm」コマンドでファイルを削除した場合は、別途「git rm」を実行してインデックスからも削除します(画面3)。

画面3
画面3 rmコマンドを使って削除した場合は後ほどgit rmを実行する


ワークツリーにファイルを残し、Gitの管理対象から外す

 Gitの管理からは外すものの、ワークツリーには残しておきたいという場合は「--cached」オプションを使用します(画面4)。

画面4
画面4 Gitの管理から外しながらワークツリーにファイルを残したところ


筆者紹介

西村 めぐみ(にしむら めぐみ)

元々はDOSユーザー。ソフトハウスに勤務し生産管理のパッケージソフトウェアの開発およびサポート業務を担当、その後ライターになる。著書に『図解でわかるLinux』『らぶらぶLinuxシリーズ』『[新版 zsh&bash対応] macOSコマンド入門』『Accessではじめるデータベース超入門[改訂2版]』など。地方自治体の在宅就業支援事業にてMicrosoft Officeの教材作成およびeラーニング指導を担当。会社等の"PCヘルパー"やピンポイント研修なども行っている。


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