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2020年のクラウド導入に影響する4つのトレンドGartner Insights Pickup(164)

エンタープライズITでクラウドコンピューティングの利用が急速に拡大する中、CIOは、2020年のサービス導入に影響する、クラウドコンピューティングの4つの側面に注意を払う必要がある。4つの側面とは「コスト最適化」「マルチクラウド」「人材不足」「分散型クラウド」だ。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 クラウドコンピューティングは、エンタープライズITの「ニューノーマル(新たな常態)」として定着している。近年、クラウドは幅広い業種にわたって、IT支出が最も急速に伸びている分野の1つだ。だが、クラウドへのIT支出が増えれば、CIO(最高情報責任者)にとっては予算を賢く使う責任が大きくなり、使い方が悪かった場合の影響も増大する。

 「次の好機を捉えて自社が成功するための準備を整えようとしているCIOは、差別化されたクラウドコンピューティングアプローチを取る必要がある」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのグレゴール・ペトリ(Gregor Petri)氏は語る。

 「クラウドに関する個々の決定と、自社の戦略目標の文脈で行うのに役立つ正式な戦略を、CIOが策定することが不可欠だ」(ペトリ氏)

 新しいクラウド時代には、コストの最適化が非常に重要になる。また、マルチクラウド戦略は、特定事業者からの独立性を保証し、1社に依存するリスクを回避するのに役立つ。一方、クラウドスキルを持つ人材が社内にいることは、エンタープライズアジリティの重要な指標になる。エンタープライズアジリティには、企業が自社の顧客がクラウドサービスを利用したい場所(オンプレミスやエッジ)に、クラウドサービスを展開する能力が含まれる。

 以下の4つのトレンドは、2020年におけるクラウド導入に加え、クラウドファーストの世界で自社の成功に向けてCIOが取れる方策に影響するだろう。

コスト最適化がクラウド導入の大きなポイントに

 2024年まで、パブリッククラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)に移行したレガシーアプリケーションはほぼ全て、費用対効果を高めるために最適化が必要になる。クラウドプロバイダーは最も費用対効果が高く、求められるパフォーマンスを発揮できるアーキテクチャを企業が選べるように、自社クラウド上のサービス利用の最適化機能を継続的に強化していくだろう。

 サードパーティーのコスト最適化ツールの市場も、特にマルチクラウド環境向けに拡大しそうだ。こうしたツールの価値は、もっぱら高品質な分析機能にある。この機能は、パフォーマンスを損なうことなくコスト削減を最大化し、クラウド事業者からの独立性を実現し、一貫したマルチクラウド管理を可能にする。

 最適化は、クラウド移行プロジェクトの不可欠な部分であることを認識する必要がある。運用データを分析し、コストを最適化する機会を見いだすためのスキルやプロセスを早期に開発し、ツールも利用すべきだ。クラウド事業者が提供するネイティブ機能も活用し、サードパーティーソリューションでさらに効果を高め、コスト削減の最大化を目指すとよい。

マルチクラウドがベンダーロックインを軽減

 2024年まで、マルチクラウド戦略によって3分の2の企業で、ベンダーへの依存が減少する見通しだ。だが、これは主に、アプリケーションポータビリティ以外の要因によって実現すると予想されている。

 アプリケーションポータビリティは、アプリケーションを変更せずにプラットフォーム間で移行できることを指しており、マルチクラウド戦略のメリットと考えられている。だが、実際には、アプリケーションが企業で導入され、本番環境に展開されると、異なるプラットフォームに移行されることはほとんどない。マルチクラウド戦略の大半は、ポータビリティよりも調達、機能、リスク軽減に重点を置いている。

 マルチクラウド戦略を導入しようとしているCIOは、ベンダーロックインの軽減やサービス中断リスクの低減など、この戦略で対処したい具体的な課題を決めなければならない。マルチクラウド戦略によってアプリケーションポータビリティが自動的に実現するわけではないことを理解する必要がある。

クラウドIaaSスキルを持つ人材の不足で移行に遅れ

 2022年まで、クラウドIaaSスキルを持つ人材の不足により、エンタープライズITのクラウド移行プロジェクトの半数が2年以上遅れる見通しだ。現在のクラウド移行戦略では、モダナイゼーションやリファクタリングよりも、“リフト&シフト”が行われる傾向が高い。だが、リフト&シフトプロジェクトでは、クラウドネイティブのスキルは磨かれない。そのために市場ではサービス事業者が、優秀なクラウド専門家の必要性を満たすのに十分なペースで、人材のトレーニングや認定を行えずにいる。

 コンサルティング会社が適切なクラウドスキルを持つ人材を見つけるのに苦労していることも相まって、多くの顧客はクラウド導入目標が未達となっている。システムインテグレーター(SI)が代わりの選択肢になるが、顧客はSIを信頼していない場合が多い。多くのSIもまだ学習中であり、需要に応えてオペレーションを拡張するのに苦労するからだ。

 ワークロードをクラウドに移行しようとしている企業がこうした人材不足を克服するには、同業他社の移行に関する成功実績の蓄積があるマネージドサービスプロバイダーやSIを利用するとよい。予想コストや予想されるコスト削減額を定量化し、それらを必達目標として移行支援に取り組む用意がある企業をパートナーに選ぶ必要がある。

分散型クラウドがサービスの可用性向上をサポート

 2023年までに、大手クラウドサービス事業者は低遅延を要求するアプリケーション向けにサービスのサブセットを提供する目的で、ATM(現金自動預払機)のように拠点を分散する見通しだ。既に多くのクラウドサービスプロバイダーが、サービスにアクセスする必要があるユーザーにより近い場所からサービスを提供できるように投資している。

 このトレンドが続くことで、クラウドサービス事業者がカバーする地域の粒度は細かくなるだろう。ユーザー人口が集中するエリアに“マイクロデータセンター”が開設され、“ポップアップ”クラウドサービスポイントが、スポーツイベントやコンサートのような場での一時的なサービス要求に対応するようになる。

 パブリッククラウドサービスの適切なサブセットを提供するための機器は、そうしたサブセットを使用し、低遅延が要求されるアプリケーションをサポートする必要がある地点に十分近い場所に設置される。そのおかげで、こうした要件を持つアプリケーションは、インフラを構築することなく、クラウドサービス事業者のネイティブサービスから直接実行される。ATMのようなクラウドサービスポイントの導入と展開は、エッジコンピューティングの1つの実装と考えられる。エッジコンピューティングは急成長を続けている。

 2020年代に入り、CIOはこれらのトレンドが今後数年間の自社のクラウド導入と移行計画にどんな影響を与えるかを考え、将来のクラウドを活用したITインフラの構築をスムーズに進めるための策を講じていく必要がある。

出典:4 Trends Impacting Cloud Adoption in 2020(Smarter with Gartner)

※この記事の原文は2020年1月に公開されており、その時点での世界の企業の状況を前提としています。

筆者 Meghan Rimol

Senior Public Relations Specialist


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