デジタルビジネスの成功に向けてAIを使いこなすための5つのポイント:Gartner Insights Pickup(168)
インフラストラクチャ&オペレーション(I&O)のリーダーは、デジタルビジネスの取り組みの大きな起爆剤として、AIを戦略的に活用する必要がある。本記事では、インフラストラクチャという側面からAIにどう取り組むべきか、5つのポイントを紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
Gartnerの「2020年のCIO(最高情報責任者)アジェンダ・サーベイ」調査によると、世界の主要企業は、実施中の人工知能(AI)プロジェクト数が2021年中に2倍に増えるとの見通しを示している。2020年末までに、これらの企業の40%以上がAIソリューションを展開する計画だ。だが、実はほとんどの企業が、AIパイロットプロジェクトの全社展開や本番環境への移行に苦労している。そのため、AIの潜在的なビジネス価値の実現も難航している。
「AIは大きな可能性を秘めているが、AIの取り組みをビジネスの成果につなげるには、想定よりはるかに長い期間がかかる」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのチラグ・デカテ(Chirag Dekate)氏は語る。
「AIの導入に責任を持つITリーダーは、“AIパイロットプロジェクトの逆説”に気付きつつある。一見、AIパイロットプロジェクトを立ち上げるのは簡単だが、それを本番環境で展開するのは難しいということだ」(デカテ氏)
AI導入に責任を持つITリーダーは、インフラ戦略の構築により、AIパイロットプロジェクトを進化させ、スケーラブルな本番環境に移行し、重要な価値実現を可能にしなければならない。こうしたAIのビジネス活用を成功させるには、急速に進化するAIツールおよび技術を使いこなすため、以下の5つのポイントを押さえる必要がある。
AIがインフラに関する意思決定を促進
2023年まで、AIはインフラに関する意思決定を最も促進するワークロードの1つであり続ける見通しだ。AIパイロットプロジェクトの本番環境への移行を加速するには、技術とともに成長、進化できるインフラストラクチャのリソースが必要になる。また、AI活用の成功率を高く保つため、企業ITチームはAIモデルを定期的に改良する必要がある。その方法には、データパイプラインの標準化に加え、リアルタイム予測を実現するための機械学習(ML)モデルとストリーミングデータソースの統合などが含まれる。
複雑さを増すAI技術をコラボレーションによって管理
MLやディープニューラルネットワーク(DNN)のようなAI技術をエッジやIoT環境で利用する上で、最大の技術的課題の1つはデータとアナリティクスの複雑さだ。こうした環境へのAIの本番展開を成功させるには、ビジネス部門とIT部門の密接なパートナーシップが必要になる。新しいビジネスニーズが生まれたときに即応できるソリューションをプロアクティブに計画し、提供するようにする。Gartnerはこの考え方を、「インフラストラクチャが主導するディスラプション(創造的破壊)」と呼んでいる。
シンプルなML技術が最も理にかなう場合も
2022年までに75%以上の企業が、古典的なML技術の適用が可能なユースケースにDNNを使用する意向だ。AI導入にいち早く成功した企業は、実践的なMLソリューションを利用してビジネス価値を実現した。そうした初期プロジェクトでは、従来の統計的機械学習が用いられたが、組織の進化とともに、企業はディープラーニングによる高度な技術を追求し、AIの効果向上を目指すようになった。
誇大宣伝に惑わされず、AIの幅広い選択肢それぞれの特徴を理解した上で、ビジネス課題に適切に対処する必要がある。人気のある複雑な選択肢にとらわれることなく、ユースケースに合わせて、場合によってはシンプルな選択肢を選ぶことが重要だ。
クラウドサービスプロバイダーを戦略の一環として活用
コグニティブAPIやコンテナ、サーバレスコンピューティングのようなクラウド技術を戦略的に活用すれば、AIを展開する複雑なプロセスの簡素化に役立つ。2023年までに、クラウドベースのAIの利用規模は2019年の5倍に拡大し、AIは最も使われるクラウドサービスの1つになる見通しだ。コンテナとサーバレスコンピューティングにより、MLモデルを独立した機能として利用でき、これによってコストやオーバーヘッドが削減される。
サーバレスプログラミングモデルは、迅速なスケーリングが可能なことから、パブリッククラウド環境で特に魅力的だ。だが、ITリーダーは、こうした新しいコンピューティング機能の恩恵を受ける既存MLプロジェクトを見極めなければならない。
AIで拡張した自動化を本格導入
企業が管理すべきデータの量が増加する中、問題を誤認したり、問題に対する優先順位の付け方を間違えたりするケースもますます増加している。しかも、IT部門とビジネス部門はAIについての考え方が食い違うことがよくあり、これは状況の改善に役立たない。
だが、AIで拡張した自動化を導入することで、ITチームはよりよくAIスキルを学習できるほか、ビジネス部門と効果的なパートナーシップを築きやすくなる。実際、2023年までに大企業のインフラストラクチャ&オペレーション(I&O)チームの40%は、AIで拡張された自動化を利用するようになる見通しだ。その結果、ITの生産性に加え、アジリティやスケーラビリティが向上すると予想されている。
出典:Gartner Predicts the Future of AI Technologies(Smarter with Gartner)
※この記事の原文は2019年2月に公開されており、その後アップデートされて2020年2月に公開されています。その時点での世界の企業の状況を前提としています。
筆者 Katie Costello
Manager, Public Relations
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