「なぜ日本政府が作るソフトウェアは使えないモノばかりなのか?」――中島聡氏が考える「日本社会のDX」の要件:「IT調達制度そのものが問題」(1/2 ページ)
エンジニア起業家の草分けでもある中島聡氏が、小泉進次郎氏など自民党の若手議員が集まる勉強会で「日本政府によるIT調達がなぜうまくいかないか」をプレゼンしたという。具体的にどのような内容だったのか、話を聞いた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で社会生活は大きく変化し、これまでになかった、あるいは、存在していたにもかかわらず注目されていなかった多くの課題が明るみに出た。そうした課題の一つに「行政サービスIT化の遅れ」がある。
COVID-19対策として政府は接触確認アプリ「COCOA」や、国民1人当たり10万円の特別定額給付金を支給する「申請システム」などをリリースしたが、その品質や使い勝手、システム利用後の業務プロセスなどに多くの問題が指摘されたことは記憶に新しい。
そうした中、日本におけるエンジニア起業家の草分けでもある中島聡氏が、2020年7月に国会議員による勉強会で「日本政府によるIT調達がなぜうまくいかないのか」というプレゼンテーションを行った。
その内容はどういったものだったのか。中島氏が考える「日本社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な条件」とは何かを聞いた。
中島聡氏
ソフトウェアエンジニア・起業家。1960年東京生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科卒業。NTT電気通信研究所を経て、1986年マイクロソフト日本法人に転職。米Microsoft本社に日本人として初めて移籍し、Windows 95/98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトを務めた。その後、ソフトウェア開発のUIEvolution(現・Xevo)をアメリカで創業。現在は一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティで、AI時代のテクノロジーと社会の在り方を考えるオンラインサロンを主宰する。2011年に始めた有料メルマガ「週刊 Life is beautiful」は現在も継続中。
現状のIT調達方式そのものが「使えないソフトウェア」の原因
――本日はよろしくお願いします。中島さんは、国会議員に向けて「なぜ、日本政府が作るソフトウェアは使えないモノばかりなのか?」と題したプレゼンテーションをされたとのことなのですが、この場は、もともとどういういきさつで設けられたのでしょうか。
中島氏(以後、省略) 小泉進次郎氏も含む自民党の若手議員が集まって、定期的にITに関する勉強会をしているそうです。その関係者が、以前私がメルマガで書いた同テーマの記事を見て「この内容で話をしてほしい」と声を掛けてきたのがきっかけです。当日はリモートで参加しました。
――かなり直球のタイトルですが、具体的にどのような話をされたのですか。
政府のIT調達というと、大抵は「ITゼネコン」と呼ばれるような大手システムインテグレーター(SIer)に対して発注しますが、まず、その習慣そのものが「時代遅れ」であるという話をしました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IT業界の仕組みと偽装請負の闇を分かりやすく解説しよう
上流企業のエンジニアは、プログラミングを行わないって本当?――IT業界への就職/転職を考えている学生や若手エンジニアに贈る、エンジニアとして希望通りのスタイルで活躍するために知っておきたいIT業界の仕組みと慣習、そして自分に合ったIT企業の選び方。 - 代替可能なエンジニアのポストコロナ生き残り術
ポストコロナのIT業界とエンジニアの生き残り術を模索する特集「ポストコロナのIT業界サバイバル術」。第4弾は、エンジニアの生き残り戦略です。 - 重要なのは、コーディングの速さではなく「価値創出の速さ」
DX(デジタルトランスフォーメーション)トレンドを背景に、「ニーズに応えるアプリケーションをいかにスピーディーに届けられるか」がビジネス差別化のカギとなっている。これを受けて内製化に乗り出す企業も増えつつある中、その実践手段としてローコード開発ツールが注目を集めている。だが従来のノンコード開発ツールとは、受け止められ方、使われ方は全く異なる――本特集ではローコード開発ツールの意義、成果、そして開発者とIT部門の役割を考える。