IT業界の仕組みと偽装請負の闇を分かりやすく解説しよう:「多重下請け+客先常駐+偽装請負」のコンボで業火に包まれるな(1/3 ページ)
上流企業のエンジニアは、プログラミングを行わないって本当?――IT業界への就職/転職を考えている学生や若手エンジニアに贈る、エンジニアとして希望通りのスタイルで活躍するために知っておきたいIT業界の仕組みと慣習、そして自分に合ったIT企業の選び方。
ITエンジニアに憧れてIT業界に入ったのに、数年たつと「こんなはずではなかった」と後悔するエンジニアの声を聞くことがある。
理由はさまざまだ。単純に「入社した会社が合わなかった」という人もいるだろう。しかし体感では「IT業界の構造そのものに対する誤解によって生じたミスマッチ」が驚くほど多いように思う。
私も学生時代はIT業界の構造を正しく把握しておらず、業界に入って数年たってようやく、正しく認識できるようになった。
就職のミスマッチを完全に防ぐことは不可能だが、IT業界の構造を正しく認知していないが故の不要なミスマッチはもっと回避されてしかるべきだろう。本記事は、不幸なミスマッチや遠回りを防ぐことを目的として、IT業界の構造を解説し、エンジニアにとって良い就職先を選択するために気を付けるべきポイントをまとめた。IT業界で就職/転職する皆さんに参考としていただきたい。
「ピラミッド型構造」と担当フェーズの違い
IT業界の中にはさまざまな業種があるが、今回はその中の「ITシステムの受託開発を行う企業」について話をする。
ウオーターフォール型巨大プロジェクトは、エンドユーザーが発注した開発案件を、元請け→下請け→孫請けの順に分散して仕事を流していく。その商流を図にすると、元請け企業を頂点としたピラミッドのような形になる。この構造自体は他の業種においても珍しいことではない。
ピラミッドの頂点に存在する企業は、「元請け企業」「SI企業」と呼ばれ、システム開発の「上流工程」と呼ばれるフェーズを担当することが多い。「要件定義」や「システムの基本設計」辺りが仕事の中心だ。
SI企業に就職する場合の注意点は、上流工程を担当することが多くなるため、プログラミングを伴う業務を行わない企業が多いということだ。プログラミングを行いながら開発の仕事に携わりたいと思っている人がSI企業に就職すると、希望と現実のミスマッチが生じる。
SI企業の下にぶら下がる下請け企業は、「SES(System Engineering Service)企業」と呼ばれることが多い。このポジションの企業に在籍するエンジニアたちを中心に、プログラミングなどの開発業務が進められる。
勤務地が自社ではない「客先常駐」
IT業界を特殊なものにしているのは、ここに「客先常駐」という形態がセットになる点だ。システム開発を事業内容としてうたっているIT企業に在籍するエンジニアの多くが、「ピラミッド構造+客先常駐」で仕事をしている。
SES企業に在籍するエンジニアは、自社ではなく客先で開発業務を行う。派遣のような働き方だが、契約形態は派遣ではない。
客先では、他社のエンジニアたちと共に働くことが多い。自社のオフィスで、自社のメンバーと開発を行うイメージを持っている人は、入社後にギャップを感じるだろう。
関連記事
- SESで働いているけど、客先から直接指示を受けています。これって違法ですか?
契約外の作業だけどやってください、契約の金額内でね――IT訴訟事例を例にとり、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する人気連載。今回は、「請負」「派遣」「SES(System Engineering Service)」、そして「偽装請負」について考える - 請負だって聞いていたのに、これじゃあ人材派遣じゃないですか!
作業指示はこちらが出します。成果物の責任はとってください。え、派遣と請負のいいとこどり? どこでもやってることじゃないですか――IT訴訟事例を例にとり、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する人気連載。今回は、契約が請負なのか派遣なのかが争点となった裁判を紹介する - 偽装請負から身を守るための法律知識
ITエンジニアだろうがなかろうが、論理的な思考はビジネスパーソン共通のスキルである。では、それをすぐに学習する方法は何か? そう、記事を読むことだ。そんな記事を紹介しよう。記事を読み、論理思考を身に付けよう - 「派遣切り」の悪夢再び?――改正労働者派遣法が派遣エンジニアに与える影響とは
改正労働者派遣法が9月11日に成立し、30日より施行された。「派遣期間の上限3年」「特定派遣の廃止」など、派遣エンジニアにとって影響が大きい本改正のポイントを、エンジニア派遣を行っているビーブレイクシステムズの高橋氏に伺った - ユーザーの要件が間違ってるのはベンダーの責任です!――全ベンダーが泣いた民法改正案を解説しよう その1
IT紛争解決の専門家 細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は民法改正がIT業界にもたらす影響を解説する - 検収後に発覚した不具合の補修責任はどこまであるのか(前編)
ユーザー検収後に発覚したシステム不具合を補修をめぐる争いで、裁判所が1724万円の支払いを命じたのは、ユーザー、ベンダーどちらだったのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.