ITコストを最適化する10の手法:Gartner Insights Pickup(184)
官民のCIOは、変化の激しいビジネス環境の中で予算の制約に対処するために、ITコストの最適化手法を検討する必要がある。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
経営幹部はCIO(最高情報責任者)に運営コストの削減を求めるとき、ITコストとその影響を評価する。ITコストがITサービスの提供にどのような影響を与えるかに加え、ITコストがビジネスコストや売上高に与える影響も算出する。だが、ビジネス部門の業務に対するITコストの影響については評価しない。
「ITコストの最適化に成功しているCIOは、他のCxO、特にCFO(最高財務責任者)と連携し、全社的なコスト最適化の取り組みを協力して進めている」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのアーマ・ファビュラー(Irma Fabular)氏は語る。
CIOはこうした取り組みの中で、ITコストを最適化する10の手法を適宜活用することで、ITコストと全社コストの削減を実現できる。
手法1:シェアードサービスを導入
一部のCIOは、ビジネス部門がシェアードITサービスを利用できるようにすることで、規模の経済を追求している。大抵の場合、サービスコストの削減率は18〜36カ月で15〜20%であり、25%以上に達するケースもある。
手法2:適切な場合にクラウドファーストポリシーを導入
クラウドファーストポリシーを選択することで、IaaS(Infrastructure as a Service)やSaaS(Software as a Service)など、さまざまな機能を利用できる。官民の多くの組織がアジリティ、柔軟性、スケーラビリティを高めるためにクラウドサービスを選択するが、時間とともにコスト効率も向上する。コスト削減を実現するには、厳密なクラウドガバナンスを確立する。ガバナンスが弱いと、インフラやアプリケーションのコストが上昇する恐れがある。
手法3:エンタープライズデータセンターを集約
組織がオペレーションを拡大するにつれて、従来のデータセンターではメンテナンスコストが増加してしまう。そのため、一部のIT部門はデータセンターアーキテクチャの見直しをしている。データセンターのモダナイゼーションや集約により、データセンター予算の10〜20%のコスト削減が可能になる。
手法4:エンタープライズアプリケーションを合理化、標準化
アプリケーションポートフォリオは、IT予算の大きな部分を占める。CIOはアプリケーションポートフォリオの標準化や合理化によって、コストを削減、コントロールできる。アプリケーション予算の15〜25%のコスト削減が可能だ。
手法5:IT財務の透明性確保策を強化
ITサービスがどのように提供されているか。ITオペレーションの関連コストはどのようなものか。Gartnerは、これらが、組織内の誰もが理解できるように示されていることを、「IT財務の透明性」と呼んでいる。CIOはCFOや財務担当者と協力し、総勘定元帳の資産勘定の項目と、技術コストおよびビジネスサービス関連コストを関連付けるとよい。組織全体のIT支出についてそうした透明性を確保することで、ITサービスによって実現するビジネス価値の把握と、コストの最適化が可能になる。
手法6:ITの需要側の支出にフォーカスし、ビジネスコストをより最適化
企業の業務コストの約96%は、IT以外の分野で発生する。これは、ITで支出を減らす大きな機会があることを示している。組織内のビジネス部門の責任者と協力し、ビジネスプロセスやリソース、キャパシティーを評価することで、ITによってどの分野でビジネスの生産性、効率、効果を高められるかを判断できる。
手法7:RPAを導入
RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やAI(人工知能)のような技術を使って、戦略的なビジネスの意思決定に利用可能なパターンを分析、特定する。これらの技術は、データから新しい洞察を引き出すことができ、人間が行うと効率が悪いプロセスを自動化または拡張できる。
手法8:IT資産管理業務を見直す
CIOは、資産管理業務の機能を見過ごしがちであり、これはIT運用コストの増加につながる。IT資産管理(ITAM)が担う責任を、個々の資産の追跡から、組織が持つIT資産および技術資産のガバナンスに変更すべきだ。ITAM業務を見直すことで、コストを10〜20%節約できる。
手法9:デジタルビジネストランスフォーメーションのアイデアを生かす
ビジネスステークホルダーを招き、コスト最適化や技術アプリケーションのアイデアを出してもらう。こうしたアイデア創造セッションがコスト削減につながったら、必ずその事例をビジネス部門と共有し、状況によっては、継続的な再投資のサイクルを開始する。こうしたパートナーシップによって、ビジネス部門におけるITコストの可視性を高め、ITコストの無駄を省ける。
手法10:人員を最適化
人事管理アプリケーションにおけるマネジャー業務の自動化機能や、定型業務と一般的なタスク向けの仮想アシスタント機能といった機能を利用して、人件費の削減を図る。botを実装して人間のワーカーの能力を拡張することや、より生産的な仕事環境を整備することも検討するとよい。
「即効性のあるコスト削減策として、10の手法のどれを開始または継続すればよいかを判断するとともに、ITコスト最適化を、どのように規律として定着させるべきかも考える必要がある」(ファビュラー氏)
出典:10 IT Cost Optimization Techniques for Private and Public Sector Organizations(Smarter with Gartner)
筆者 Laurence Goasduff
Director, Public Relations
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