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クラウドオペレーションの厄介なジレンマを克服する複合的なアプローチGartner Insights Pickup(186)

誰がクラウドオペレーションについての責任を持つのか――。1つの解はない。オペレーションアプローチには多くの選択肢があり、企業の個別状況によって最適な選択肢は異なる。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 クラウドオペレーションの責任は、社内で政治的な駆け引きの対象になりがちだ。

 時には、誰もこの責任を負おうとしない場合もある。これは開発の負担を押し付け合っている場合と同様に見える。逆に、誰もがこの責任を負いたがる場合もある。一部の経営幹部は、クラウドオペレーションを管理下に置くことが、次の昇進や多額のボーナス、転職時のアピールポイントにつながると考える。

 また、開発者とインフラ&オペレーション(I&O)チームは、しばしばクラウドオペレーションを巡って衝突する。CIO(最高情報責任者)が、クラウドセンターオブエクセレンス(CCOE)チームにクラウドオペレーションを任せようと決めるケースもある。もともと、CCOEはクラウドのアーキテクチャとガバナンスを手掛ける組織として生まれたが、クラウドに関する何でも屋と化している。

 どこがクラウドオペレーションについての責任を持つかについて、そしてこのオペレーションを行うさまざまな方法について、多くの議論が交わされている。基本的にリフト&シフトでクラウドに移行され、めったに変更が発生しない“退屈な”ものと、変化が速いアジャイルなものでは、クラウドオペレーションに関する議論がぶつかるのは避けられない。IaaS、PaaS、SaaSのさまざまなアプローチについても、多様な議論がある。これらをはじめ、クラウドオペレーションに関する議論はネタに事欠かない。

 実際、さまざまな個々の問いに対する複数の答えがあるのだろう。1つの万能なアプローチは存在しない。オペレーションアプローチは、ビジネスニーズに合わせる必要がある。マルチクラウド環境で共通のアプローチを取っても、主要なハイパースケールプロバイダーごとに専門チームを設置すべきかもしれない(Azureと非Azure――つまり、「Microsoft Azure」と「Amazon Web Services(AWS)」というチーム分けが一般的だ。多くの場合、この区分はWindowsベースアプリケーション環境とLinuxベースアプリケーション環境という区分と密接に相関している)。

 クラウドオペレーションにおいて、高度な自動化やアジリティ、クラウドネイティブ、開発者と運用担当者の協力(つまり、DevOps)を実現できれば理想的だ。ただし、それを常に目指す必要はないだろう(全てのアプリケーションが活発に開発されているわけではないため)。

 さらに、基本的なオペレーションアプローチを1つまたは複数選んだら、クラウド構成やリリースエンジニアリング、セキュリティの責任をどう扱うかを考えなければならない(適切に扱うために必要なスキルアップについても)。

 そこで人々は行き詰まってしまうことが多い。「現実的に、開発チームにどれだけの責任を任せられるか」「開発チームはどれだけの責任を負いたいか」「時間とともに、新しいオペレーションアプローチを徐々にどのように導入するか」「このアプローチを既存のCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)、アジャイル、DevOpsの取り組みにどのように組み込むか」といった問題に直面するからだ。

 1つの正解はない。だが、ほぼ常に間違っている1つの答えがある。それは、クラウドオペレーションをI&Oの機能別チームで分担するというものだ。これではクラウドオペレーションがサイロ化されてしまう。サーバチームが「Amazon EC2」の仮想マシンを扱い、「NetApp」ストレージ管理者が「Azure Blob Storage」を扱い、F5 Networks製品の専門家がGoogleの「Cloud Load Balancing」を構成し、ファイアウォールチームとネットワークチームが、仮想プライベートクラウド(VPC)の構成を誰が管理するかで対立する(あいにく、仮想ファイアウォールアプライアンスを購入することで決着することが多い)といった具合だ。

 このアプローチが取られると、管理者は必ずと言っていいほど、クラウドポータルをハードウェアの最新のポイント&クリックインタフェースのように扱ってしまう。これでは、運用能力低下や調整不足、著しい非効率に陥るのはほぼ確実だ。クラウドの利用規模にかかわらず、通常、悲惨な結果につながる。残念ながら、このアプローチは、ほとんどの人が最初に試すものだ(そしてすぐ後に、クラウドの導入初期に付き物の、全てをクラウドに関連付けたいという要望に伴い、一部のクラウドアーキテクトに過大な負担が掛かる)。

 ほとんどの企業に有効なアプローチは、クラウド管理を“プロダクト”のように扱う、クラウドプラットフォームのオペレーション形態だ。それはほとんど社内クラウドMSP(マネージドサービスプロバイダー)のアプローチだ。

 このアプローチでは、クラウドプラットフォームオペレーションチームが、CMP(クラウド管理プラットフォーム)スイートや、クラウドベースのCI/CDパイプライン統合、テンプレート、自動化、その他のクラウドエンジニアリングを提供する。必要に応じて、コーダーやアプリケーション開発チームにコンサルティングも提供する。

 一般的に、このチームはオンコールでインシデントにも対応するが、通常、NOC(ネットワークオペレーションセンター)などやインシデント管理チームがインシデントレスポンスの最前線を担う。

 ただし、クラウドオペレーションのアプローチは多くの選択肢があり、企業の個別状況によって最適な選択肢は異なる。選択の観点としては、手法としてのメリットとデメリットを論理的に分析する、クラウドエンジニアリング、運用、管理のタスク、役割分担、コーダーの責任、セキュリティ統合などが挙げられる。

出典:The messy dilemma of cloud operations(Gartner Blog Network)

筆者  Lydia Leong

VP Distinguished Analyst


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