こんなパッケージソフトいらない! だって使えないんだもん!:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(83)(1/3 ページ)
埋められないパッケージソフトと業務の差、それは不具合なのか仕様なのか、悪いのはベンダー、ユーザー、どっち――?
パッケージ導入には苦労がつきもの
パッケージソフトウェアやSaaSが自社の業務にフィットしないという話は珍しいことではない。
人事や給与、販売管理、生産管理のような業務は、どの企業でも似たようなところは多いものの、決済、承認のプロセスや商品の品番、型番の体系が違ったり、生産プロセスが独自であったり、などの違いはよくあることだ。世界中で使われているパッケージやSaaSであっても、それをそのまま受け入れて業務が回る企業の方が少ないのではないだろうか。どんな場合においても、多少のカスタマイズやアドオンを行うか、業務自体を見直すなどの改善が必要なのは、むしろ当たり前のことである。
とはいえ、実際にこれらの導入を行ったエンジニアならお分かりのように、こうしたアジャストは簡単に行えるものではない。パッケージやSaaSと業務がどうしても合わない部分があり、ベンダーが技術上の理由やコスト、期間の問題などで対応しきれないケースが多々ある。
そして何割かのプロジェクトは失敗に終わる。開発が途中で終わったり、作ったのはいいが役に立たずに捨てざるを得なかったり。何とか使えたとしても利用者にさまざまな我慢を強いて、かえって不便になった、生産性が下がったという話もよく聞く。パッケージソフトウェアやSaaSの利用は、セールストークで語られるような「スピーディー」で「低コスト」で「満足度の高い」ものばかりではないようだ。
今回は、そんなパッケージソフトウェアと業務の溝が埋まらずに失敗してしまったプロジェクトの事例だ。「SAP Business One」(以下 SBO)という世界中で多くの実績を持つ中小企業向けERP(企業資源計画)ソフトウェアの導入に失敗したユーザー企業が、SIベンダーへの費用支払いを拒んで訴えられたケースだ。
東京地方裁判所 平成22年12月28日 判決から
ケーブルテレビ関連商品の販売、リース、レンタルなどを行っているユーザー企業が、販売、購買業務の効率化を目指してパッケージソフト(SBO)の導入を決定し、インストール、セットアップ、アドオン開発などの作業をSIベンダーに依頼した。導入作業は2年余りに及んだが、システムにはユーザー企業の業務と異なる部分があり、またアドオン開発の費用を巡って両者の交渉が難航したこともあり、プロジェクトは完遂にまでは至らなかった。
こうしたことからユーザー企業はSIベンダーへの費用支払いを拒んだが、SIベンダーは支払いを求めて訴訟を提起した。
※実際には幾つも争点のある複雑な紛争だったが、今回はパッケージと業務の差の部分にだけ触れる。
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