データとアナリティクスのチーム作りにおける5つの落とし穴を避けるには:Gartner Insights Pickup(188)
文化変革をリードし、データリテラシープログラムを開発し、既存スタッフのスキルを向上させることなどにより、効果的なデータとアナリティクスのチームを構築する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
多くのデータとアナリティクスのリーダーや最高データ責任者(CDO)の第1のミッションは、効果的なデータとアナリティクスのチームを構築し、データとアナリティクスを自社の戦略分野として確立することだ。だが、Gartnerの年次CDOサーベイによると、CDOがこうしたチーム作りにおいて直面しがちな5つの最大の障壁がある。以下に、これらの障壁を克服するポイントを解説する。
文化変革の難しさを克服するには
「組織の文化を変革することは、個々の従業員の感性と考え方を変えるということだ」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのヨーゲン・ハイゼンベルグ(Jorgen Heizenberg)氏は説明する。
「データドリブンの文化は、人々をコントロールするのではなく、人々に影響を与えることで生まれる。そのため、データとアナリティクスが、ビジネス部門の成果にいかに貢献するかを周知する必要がある。データとアナリティクスは技術の実装ではなく、チェンジマネジメントの取り組みだ」(ハイゼンベルグ氏)
データとアナリティクスの戦略と目的を従業員に説明し、サポートを求める。データとアナリティクスがどのように価値を生み出すかをビジネス部門が実感できるように、データとアナリティクスの効果を例示することも忘れてはならない。例えば、成功した手法を紹介したり、共同でプロトタイプに取り組んだり、データハッカソンを開催したりするとよい。
資金やリソースの不足を克服するには
データとアナリティクスのリーダーは、データとアナリティクスのビジネス価値を会社に示すよう求められているにもかかわらず、組織モデルを望ましいビジネス成果と関連付けて提案しないことが多い。その結果、ビジネスリーダーはデータとアナリティクスのプログラムに、希望通りの資金やリソースを配分しない。
ダイナミックに変化する状況(新型コロナウイルス感染症の大流行など)に的確に対応し、企業がデジタルビジネスにシフトする中で全体的なビジネス目標との整合性が高い行動を取る、データとアナリティクスの組織モデルを構築する必要がある。そのためには、まず小規模な部門横断チームを設置する。こうしたチームはさまざまなデータソースを統合し、データ品質を評価し、どのようなデータとアナリティクスがビジネスに必要かについての洞察を引き出せる。
データのリテラシー不足を克服するには
データ主導の文化を確立しようというCDOの意欲は、社内のデータリテラシーの低さに妨げられることが多い。データリテラシーは、文脈に基づいてデータを読み取り、活用する能力を指す。
データリテラシーを持つ従業員が社内にいなければ、ビジネスリーダーは、自社がどのようなデータを持っているか、データを何に利用できるかおよびデータの品質が分からない。その結果、企業は潜在的なビジネス機会を見逃してしまう。
まず、範囲を限定し、非常に的を絞ってデータリテラシースキルトレーニングのパイロットプログラムを実施する。データとアナリティクスに注目し、その活用を望んでおり、データリテラシーの向上を成功に不可欠な要因と認識しているステークホルダーのグループと協力するとよい。
データとアナリティクスのスキル不足を克服するには
自社の現有人材のスキル、役割、能力を、見定めるか調査する。さらに、その結果をさまざまなビジネス部門からのビジネス要求と照らし合わせる。これにより、データとアナリティクスのスキルの弱点が明らかになる。それを基に、必要があれば外部のサポートも利用して、人材のスキルの向上や再教育に取り組むとよい。
また、データとアナリティクスのチームは、さまざまな専門家で構成されなければならない。例えば、データインテグレーターやデータサイエンティスト、データモデラー、特定分野の専門家、ビジネスアナリストといった顔ぶれだ。2023年末まで、データサイエンティストとデータアナリストは、データセットの検索、前処理、統合、共有などの作業に生産的な時間の60〜70%を費やすようになる見通しだ。このため、データとアナリティクスのチームには、データエンジニアが不可欠となる。
データとアナリティクスに関する最も重要な取り組みの定義のあいまいさを克服するには
データとアナリティクスに関する最も重要な取り組みの定義があいまいだと、自社のデータとアナリティクスの取り組みにおける成熟度の向上が妨げられる。多くの場合、この問題はデータとアナリティクスをビジネスに適用する際に混乱を引き起こしてしまう。「まずどこに投資するか」「ガバナンスが確保されたデータレイクを構築するか、セルフサービスのデータ探索をサポートするか」といった具合に、物事がなかなか決まらない。
自社のデータとアナリティクスの取り組みにおける成熟度を評価し、社内のデータとアナリティクスの能力と弱点を明確にする。自社のデータ、人、プロセス、技術の現状を把握することで、成熟度をどのように次のレベルに高めるかの指針が得られる。
出典:Avoid 5 Pitfalls When Building Data and Analytics Teams(Smarter with Gartner)
筆者 Laurence Goasduff
Director, Public Relations
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