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VDI導入、コロナ禍におけるビデオ会議の課題と改善、そして中長期のPC環境の構想へリクルート5万人のテレワーク/VDI環境大解剖(4)

リクルートにおけるVDIの導入、運用、コロナ対応、そして今後のICT環境を紹介する連載。今回は、VDI導入を振り返り、中長期のPC環境の構想をお伝えする。

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 リクルートにおけるVDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップインフラ)の導入、運用、コロナ対応、そして今後のICT環境を紹介する本連載「リクルート5万人のテレワーク/VDI環境大解剖」。

 連載第1回では、“3つの課題”、すなわち「セキュリティの向上」「PC管理コストの削減」「働き方変革への貢献」の対応策として取り組んだVDI導入、第2回では大規模VDIインフラの日々の運用と心掛けて実践している「己を知る」「敵を知る」「それに備える」こと、第3回ではコロナ禍の対応として放った4本の矢についてお話ししてきました。

 VDI基盤のEOSL(End Of Service Life:サポートやサービスの終了)が迫ってきたことを受け、次期PC環境を検討するプロジェクトを立ち上げて1年近くにわたり検討してきました。「中長期視点で考え、いま行動する」という基本的な考え方を大事にし、今後は「クラウド&マルチデバイス環境」の到来を想定し、次期PC環境として「VDIとFAT PCのマルチ環境」を選択することにしました。そのいきさつをお伝えします。

VDI導入の振り返り――現在地点における3つの成果

 VDI導入の検討が始まったのは2015年度。そこから5年近くが経過した2019年度から、次期PC環境に関する本格的な検討を開始しました。VDI基盤を構成するサーバやストレージのバージョンアップ対応を行いながら運用してきた中で、いよいよ各ハードウェア/ソフトウェアのEOSLが迫り、次期PC環境をどうするかを検討する必要がありました。

 検討するに当たって、まず現在のVDI環境を評価しました。当初の狙いであった“3つの課題”、すなわち「セキュリティの向上」「PC管理コストの削減」「働き方変革への貢献」については、連載第1回でも触れた通り、いずれも成果が出せたと考えています。特にVDIのOSを「Windows 7」から「Windows 10」にアップグレードする際に、ユーザーから見れば「朝になったらWindows 10になっている」というような“朝テン”方式を実現し、OSのバージョンアップコストを抑制できたのは、VDIならではといえるでしょう。

 他方では、課題も見えてきました。毎年社内でユーザーアンケートを実施し、その回答内容を分析して社内ICT施策に反映させる取り組みをしています。そのアンケートでは、VDIの課題として“ネットワーク状況によっては使えないシーンがある点”と“ビデオ会議実施時の不具合”の2点が浮き彫りになりました。

 “ネットワーク状況によっては使えないシーンがある点”は、VDIなら避けられない問題です。特に外出中は、スマートフォンによるテザリングでVDIに接続する際に、エリアや移動状況によっては通信環境が安定せず、通信が切断されたり、通信速度が遅くなったりするなど、VDIがスムーズに動作しないシーンがありました。この課題に対しては、スマートフォンのテザリング容量の観点なども含めて検討し、対処してきましたが、完全には解決できませんでした。そこで、VDIでは業務遂行がどうしても困難なユーザーに限定し、さらに高セキュリティ業務以外での利用において通常のPC(FAT PC)を配布するようにしました。

 もう一つの課題“ビデオ会議実施時の不具合”については、もともとVDIとビデオ会議の親和性は良くない点が前提にあります。ビデオ会議の場合、クラウドサービスを使うことが多いと思いますが、通常のPCなら、クラウドサービスとPC上のビデオ会議ソフトウェアが直接つながり、ユーザーは快適にビデオ会議ができます。一方、VDIの場合、クラウドサービスとVDI上のビデオ会議ソフトウェアがまず接続され、その後VDIからVDI専用端末(シンクライアント端末)に音声と動画が転送される形になります。音声も動画もいわば二重でデータ転送される仕組みなので、劣化してしまうのは避けられません。具体的には、音声が途切れ途切れになったり、動画がカクカクしてスムーズに動作しなかったりすることになります。

 また、システム管理の観点でもデメリットがあります。通常のPCでは、ビデオ会議ソフトウェアの機能でクラウドサービスとのネットワーク接続状況をチェックしてくれて、最適に通信する仕組みなのに対し、VDIではそのような機能は使えません。ビデオ会議ソフトウェアにその機能が搭載されていても、VDIからVDI専用端末に通信する段階でそれらの機能が無効化されてしまうのです。その結果、VDI上でのビデオ会議は通常よりも多くの通信量が発生してしまい、外出時などテザリングの容量を圧迫することになっていました。

 しかし、最近ではビデオ会議のこうした課題の回避策として、クラウドサービス各社がVDI用のソフトウェアをリリースしてくれるようになってきました。VDI用のビデオ会議ソフトウェアをVDIにインストールして、一部のソフトウェアコンポーネントをVDI専用端末にもインストールします。そうすることで、VDIとVDI専用端末が協調してビデオ会議端末として動作し、クラウドサービスとVDI専用端末とが直接つながる構成になり、従来に比べると音声や動画の劣化が大幅に避けられるようになってきています。

中長期のPC環境を構想する――“中長期”という新たな観点の導入

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