2021年第2四半期の世界クラウドインフラサービス市場、前年同期比39%増の420億ドルへ:カーボンニュートラル計画も順調に推移
Synergy Research Groupによると、2021年第2四半期における世界のクラウドインフラサービスの売上高は2020年同期比で約39%伸び、約420億ドルに達した。Canalysも同四半期の市場動向を発表。クラウド大手3社の環境対策の取り組みを紹介した。
調査会社Synergy Research Groupは2021年7月29日(米国時間)、2021年第2四半期における世界のクラウドインフラサービス売上高が2020年同期比で約39%伸び、約420億ドルに達したと発表した。前四半期比では約27億ドル増だった。
同社は大手クラウドプロバイダーがこれまでに発表した第1四半期業績報告を基に、クラウドインフラサービス売上高を算出した。サービスにはIaaSやPaaS、ホステッドプライベートクラウドサービスを含むとしている。
クラウドインフラサービス市場の同期比伸び率は、2021年第2四半期まで4四半期連続で上昇した。Synergy Researchは、こうした大規模な高成長市場では、これは異例だとしている。
クラウドインフラサービス市場ではAmazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleがトップ3を占めており、2021年第2四半期は3社合計で約63%のシェアを占めた。
ここ数四半期はMicrosoft、Googleが首位のAWSとの差を徐々に詰めていたが、2021年第2四半期はAWSが前期比で売上高を約10%伸ばして約33%のシェアを獲得し、やや盛り返した。Microsoftのシェアは約20%、Googleは約10%だった。
4位以降はAlibaba、IBM、Salesforce.com、Tencent、Oracleなどが続いている。Alibaba、IBMを含む上位5社の合計シェアは約80%に上った。
サービス構成と投資規模は?
クラウドインフラサービスの売上高の大部分はIaaSとPaaSが占めており、2つを合わせた売上高は2021年第2四半期に約41%伸びた。
地域別に見ると、クラウドインフラサービス市場は世界のどの地域でも高成長を続けている。
Synergy Researchの主席アナリスト、ジョン・ディンスデール氏は、「クラウドインフラサービス市場では、AWS、Microsoft、Googleなどが圧倒的な成功を続けている。これは大変な企業努力のたまものだ。これら3社は通常、四半期ごとに合計250億ドル以上の投資を行っており、その多くは、340を超えるハイパースケールデータセンターの新設と設備拡充に充てられている」と指摘した。
クラウド大手3社の環境対策は順調
クラウドプロバイダーは膨大な電力を消費することから、省電力化や脱炭素化などの環境対策にも積極的に取り組んでいる。調査会社Canalysは2021年7月29日、2021年第2四半期の世界クラウドインフラサービス市場動向を発表し、クラウド大手3社の環境対策の取り組みも紹介した。その概要は次の通り。
Canalysのリサーチアナリストであるブレイク・マレー氏は「クラウドサービスプロバイダーが運営するデータセンターから提供されるデジタルサービスについて、エネルギー使用と炭素排出に対する認識が高まっている。主要プロバイダーは環境回復力の取り組みの最前線にいる」と述べている。
「これらの企業が利用しているベストプラクティスとテクノロジーは、他の業界にも浸透していくものだ。顧客はますますクラウドサービスを使用することで、環境に対する自らの責任を軽減し、それによってサステナビリティー(持続可能性)という目標を達成する」(マレー氏)
- AWS
2021年第2四半期のクラウドインフラサービス市場のシェアは約31%、クラウドインフラサービス売上高の2020年同期比成長率は約37%。
親会社のAmazon.comは最近、世界で14の風力発電と太陽光発電プロジェクトを発表し、これまでに10GWを超える再生可能エネルギーを購入している。これは世界最大の購入規模だという。
この電力の一部はAWSのデータセンターをサポートするために使用されている。AWSの幾つかのデータセンターはカーボンニュートラル(二酸化炭素排出量が実質ゼロ)となっている。2021年には全消費電力のうち40%が再生可能エネルギーで賄われており、2025年までにこれを100%にする計画だ。
- Microsoft Azure
2021年第2四半期のクラウドインフラサービス市場シェアは約22%、クラウドインフラサービス売上高の2020年同期比成長率は約51%。
Microsoftは2012年からカーボンニュートラルを実現している。2020年までにカーボンネガティブ、さらに雨水収集システムや、水の代わりに外気を使用してデータセンターを冷却することで、ウオーターポジティブの実現を狙っている。2030年までに廃棄物処理プラントを自社で持つことにより、廃棄物ゼロも計画している。
水中データセンターや水素燃料電池の導入も進めており、2025年までにデータセンターの電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを計画している。
- Google Cloud
2021年第2四半期のクラウドインフラサービス市場シェアは約8%、クラウドインフラサービス売上高の2020年同期比成長率は約66%。
Googleは2007年にカーボンニュートラルを達成済みであり、2017年に総電力消費を上回る再生可能エネルギーを初めて購入した。創業した1998年からカーボンニュートラルを達成した2007年までに排出した「カーボンレガシー(二酸化炭素排出量の総量)」を2020年に全てオフセットし、累計でもゼロにしたと発表した。2030年までに全てのデータセンターとオフィスを再生可能エネルギーだけで運営するという目標を設定している。
Googleは自社の全データセンターの電力使用効率(PUE)を公開することで、サステナビリティーの透明性を推進してきた。Google Cloudでは、機械学習モデルを開発し、再生可能エネルギーの利用可能性に基づいてワークロードの電力供給をサポートしている。
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