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クラウド移行がコスト超過に陥る6つの理由Gartner Insights Pickup(227)

パブリッククラウドに迅速に移行しなければならないというプレッシャーにさらされているインフラとオペレーションのリーダーは、コストがかさむ原因となる幾つかの過ちを犯しやすい。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 Gartnerの調査によると、現在では、70%以上の企業が少なくとも何らかのワークロードをパブリッククラウドに移行させている。企業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を経て、クラウドの導入拡大を計画しているため、この流れは今後も続きそうだ。

 だが、企業はクラウドの多くのメリットを享受しているものの、クラウドコンピューティングのコスト管理が課題となっている。Gartnerは、インフラストラクチャとオペレーション(I&O)のリーダーの60%が2024年まで、パブリッククラウドの導入と運用において、オンプレミス予算に悪影響を与えるコスト超過に直面すると仮説を立てている。

 以下では、クラウドへの移行でコスト超過を招く原因となる6つの過ちと、移行予算を適切に管理するためにI&Oリーダーが取るべき方策を紹介する。


(出所:Gartner クラウドへの移行でコスト超過を招く6つの過ち)

過ち1:間違った体制

 移行のパートナーの選択は、クラウド移行戦略の重要な要素だ。だが、多くのI&Oリーダーは、専門知識と経験よりも「よく知っているから」「料金が安いから」といった理由でパートナーを選ぶ。また、移行プロジェクトを社内チームに全て任せることで、パートナーを雇うコストを節約しようとするケースもある。社内チームが、その任務を果たす準備を整えていないとしても、だ。どちらを選択する場合も、ミスややり直しにつながることが多い。これでは長い目で見ると、かえってコストが高くついてしまう。

過ち2:誤った優先順位

 I&Oリーダーはしばしば、迅速な移行を迫られると、ワークロードを変更せずにクラウドに移行する「リフト&シフト」アプローチを優先させる。だが、多くの場合、オンプレミスアプリケーションの移行に関して、企業にとって最良の選択の1つは、一切移行しないことかもしれない。

 あるいは、最良の選択は、アプリケーションをクラウドネイティブなものに書き換えて再リリースすることや、アプリケーションをSaaSベースの選択肢に全面的に置き換えることかもしれない。だが、性急にリホスティングのアプローチを進め、重要なアプリケーションのモダナイゼーションや置き換えのコストを先送りすれば、移行後のクラウド運用コストがかさんでしまう恐れがある。

過ち3:拙速なアプリケーション評価

 クラウド移行プロジェクトの最も重要な初期フェーズは、アプリケーションの評価フェーズだ。各アプリケーションについて、どのクラウド移行アプローチを適用すべきかを決めるのに役立つからだ。移行するワークロードを十分に評価しないのはよくある失敗だ。この失敗をすると、移行要件の仕様が不完全なものになり、下流工程でスコープクリープ(プロジェクトが進行するにつれて、適切な報告、承認を経ずにスコープが少しずつ肥大化すること)が発生してしまう。

 I&Oリーダーは可能であれば、移行ベンダーに対して、プロジェクト開始時に初期費用を提案し、アプリケーションの評価段階が完了した後に作業内容の修正と最終的な価格を提出するよう求めるべきだ。

過ち4:“ランディングゾーン”の貧弱な設計

 ワークロードの移行先となるクラウドの“ランディングゾーン”環境の設計と実装を適切に行わないと、セキュリティとコンプライアンスのコストが増える恐れがある。ランディングゾーンのセットアップでは、次の多くの要素を設計する必要がある。すなわち、アカウント構造やアイデンティティー(ID)ディレクトリとの連携、仮想プライベートクラウド(VPC)ネットワーキング、ロールベースのアクセスコントロール(RBAC)のロールとルールセット、モニタリング、セキュリティ、構成管理のインフラだ。こうしたランディングゾーン環境のセットアップは移行に先立って十分検討しておかなければならず、作業のスコープに含める必要がある。

過ち5:依存関係のボトルネック

 不完全なアプリケーション評価に起因する場合が多いもう1つのよくある過ちが、依存関係のボトルネックを見逃してしまうことだ。移行するオンプレミスのシステム間の相互依存関係を発見し、考慮しないと、アプリケーションの移行について、誤ったグループ化や順序付けをし、ネットワークパフォーマンスに問題が生じたり、遅延が連鎖したりする恐れがある。そうなれば、当初の想定よりも移行に時間がかかり、コストが膨らんでしまう。I&Oリーダーはアプリケーション評価プロセスの一環として、依存関係を特定して把握し、適切な移行スケジュールを作成する必要がある。

過ち6:隠れた間接コスト

 クラウド移行の予算を作成する際、I&Oリーダーはプロジェクトの間接コストを考慮しないことがよくある。その中には、パブリッククラウドを使って効果的に業務をするための組織改革に関連するコストや、移行で浮いたデータセンターキャパシティーの残余(サンク)コストなどが含まれる。多くの場合、これらは不可避なコストだが、クラウド移行予算全体の一部として考えることが重要だ。

 移行に伴うコストには、既存チームの再教育コストやクラウド担当者の給与を市場相場に合わせて引き上げるコスト、組織体制と業務手順の変更コスト、IT部門全体にアジャイルなDevOps手法を導入するコストなどが含まれる。クラウドへの移行による一般的なサンクコストには、施設やハードウェアの空き、未使用のソフトウェアライセンス、非生産的なスタッフによる生産性の低下などがある。このサンクコストには、移行カットオーバー期間に同じシステムの重複バージョンを運用するコストも含まれることがある。

出典:6 Ways Cloud Migration Costs Go Off the Rails(Smarter with Gartner)

筆者 Meghan Rimol

Senior Public Relations Specialist


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