IPAとNICTが「DXの活動状況を自動分析するシステム」を開発:従来はアンケートと専門家の評価が必要だった
IPAとNICTは、「WISDOM-DX」を開発した。企業が取り組んでいるDX活動について、その活動状況をAI技術によって自動的に分析し、評価する。NICTのユニバーサルコミュニケーション研究所が開発した質問応答システムを活用した。
情報処理推進機構(IPA)と情報通信研究機構(NICT)は2021年10月6日、企業が取り組んでいるDX(デジタルトランスフォーメーション)の活動状況をAI(人工知能)技術によって自動的に分析し、評価する「WISDOM-DX」を開発したと発表した。
質疑応答システムで「DX摘要」を自動生成
従来はアンケート調査に基づいて専門家が評価していた内容を質疑応答の形にモデル化し、「WISDOM X」を使ってアンケート結果に相当する「DX摘要」を自動生成する。WISDOM XはNICTのユニバーサルコミュニケーション研究所が開発した質問応答システムで、さまざまな形式の質問に対し、端的に回答(応答結果)を提示する。
活動状況は3つのプロセスを経ることで評価できる。
まず、企業のDX活動に関して5W1H形式で質問を生成してWISDOM Xに入力する。するとWISDOM XがDX摘要を出力する。出力されたDX摘要に含まれる質問について「応答件数」「応答の信頼度」「応答と優良事例との類似度」などをパラメーターとしてスコアリングする。最後に企業のランキングを最適化する。
実験として「DX銘柄2021」の候補企業(アンケート調査に回答した464社)をWISDOM-DXで評価をしたところ、「専門家が選定した優良企業48社」を正解とした場合のAUPR(性能に関する評価指標。数値が1に近いほど性能が高い)は0.543、正解率(システムとアンケートのランキングの一致率)は56.3%という結果が得られたという。
IPAとNICTは「中小企業を含めて360万社以上ある日本の企業全体のDXを進めるには、企業の活動状況の調査と分析、評価が不可欠だ。WISDOM-DXを利用することで、従来は半年近くかかっていた企業の活動状況の調査をリアルタイムでより大規模に自動化できる。専門家の間で評価が分かれる場合判断指針としても活用可能だ」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 中間管理職はDXに悲観的? ABBYYジャパンがDXに関する調査結果発表
ABBYYジャパンは、DXプロジェクトの影響やビジネスで直面している課題、コロナ禍において自動化技術が果たす役割などに関する調査の結果を発表した。それによると日本の最高責任者と中間管理職の間にDXに関する深刻な認識の差があること分かった。 - 「DX推進の年間予算」は平均で約4.9億円 パーソルプロセス&テクノロジーがDX推進に関する実態調査
パーソルプロセス&テクノロジーは、「社内におけるDX推進に関する実態調査」の結果を発表した。それによると、社内のDX推進のために平均4億8891万円の予算を確保していることが分かった。 - ITシステムのDX対応状況を評価、IPAがツールの提供を開始
IPAは、企業が自社ITシステムのDX対応状況を詳細に評価できるツールを提供開始した。「プラットフォームデジタル化指標」の評価項目に対して回答を記入すると点数化してグラフ表示する。ITシステムの問題点の可視化を支援する。