コンパイル時のリソースセマフォに関する情報を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(63)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、クエリオプティマイザーの操作統計に関する情報の出力について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_query_optimizer_memory_gateways」における、コンパイル時のリソースセマフォに関する情報の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2016(13.x)以降です。
概要
SQL Serverは、クエリをコンパイルする際にもメモリを使用します。多数の処理が実行された場合にコンパイルでメモリを使いすぎないように、リソースセマフォによるゲートウェイを用いて同時コンパイル数を制限しています。制限を超えるとゲートウェイの通過待ちで処理遅延が発生する可能性があるため、インスタンスでゲートウェイを通過している処理がどの程度あるのかを把握する必要があります。
「sys.dm_exec_query_optimizer_memory_gateways」を実行すると、コンパイル時のリソースセマフォに関する情報を出力します。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
pool_id | int | リソースプールのID |
name | sysname | コンパイルゲート名 |
max_count | int | 同時コンパイルの最大数 |
active_count | int | このゲートでアクティブなコンパイル数 |
waiter_count | int | このゲート内の待機処理数 |
threshold_factor | bigint | しきい値の係数 |
threshold | bigint | 次のゲートウェイへのメモリサイズのしきい値 |
is_active | bit | クエリがゲートを通過する必要があるか |
動作例
コンパイル時に大きなメモリが必要なクエリを複数実行した環境で「sys.dm_exec_query_optimizer_memory_gateways」を実行すると、コンパイル時のリソースセマフォに関する情報が出力されました(図1)。
「pool_id」列が「2」のゲートウェイでは、Medium Gatewayを通過したクエリが1つ実行されているため「active_count」列が1になっています。Medium Gatewayは「max_count」列も「1」であり、これ以上他のクエリが通過できないため、「waiter_count」列で3つの処理が待たされている様子が確認できます。
ゲートウェイを通過できずに「waiter_count」に含まれたクエリは「RESOURCE_SEMAPHORE_QUERY_COMPILE」で待機しており、「sys.dm_exec_requests」から状況を確認できます(図2)。
「RESOURCE_SEMAPHORE_QUERY_COMPILE」待ちについては、以前の記事に記載しています。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 RTM」をインストールした環境を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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