フルテキストフィルターデーモンホストの情報を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(94)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、フルテキストフィルターデーモンホストの情報を出力する方法について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_fts_fdhosts」における、フルテキストフィルターデーモンホストの情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)です。
概要
SQL Serverではフルテキスト検索の機能を使用して、英語や日本語などの特定の言語の規則に基づいた言語検索を実行できます。フルテキスト関数を使用して大量のテキストデータを対象としたテキスト検索を行う場合、全文検索を行うLIKE句と比較して高速に実行できます。フルテキスト検索では、フォーマットされたバイナリデータ(Microsoft Wordドキュメントなど)を対象とすることもできます。
フルテキスト検索を使用するには、SQL Serverインスタンスに「検索のためのフルテキスト抽出とセマンティック抽出」機能を追加する必要があります。また、データベースにフルテキストカタログを作成し、対象のテーブルに対してフルテキストインデックスを作成する必要があります。
フルテキスト検索では、SQL Serverプロセス(sqlservr.exe)以外に、フィルターデーモンホストプロセス(fdhost.exe)が使用されます。フィルターデーモンホストプロセスはSQLフルテキストフィルターデーモンランチャー(SQL Full-text Filter Daemon Launcher)サービスによって起動され、SQL Serverのフルテキスト検索でドキュメントからテキストを抽出するフィルター処理やテキストの単語区切り処理を行います。
「sys.dm_fts_fdhosts」動的管理ビューを使用することで、現在実行されているフィルターデーモンホストプロセスの一覧情報を出力できます。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
fdhost_id | int | フィルターデーモンホストのID |
fdhost_name | nvarchar(120) | フィルターデーモンホストの名前 |
fdhost_process_id | int | フィルターデーモンホストのWindowsプロセスID |
fdhost_type | nvarchar(120) | フィルターデーモンホストで処理されるドキュメントの種類 |
max_thread | int | フィルターデーモンホストのスレッドの最大数 |
batch_count | int | フィルターデーモンホストで処理中のバッチ数 |
動作例
テスト用のテーブルを作成し、フルテキストインデックスを追加します(図1)。
テーブルにデータを追加せず「sys.dm_fts_fdhosts」動的管理ビューを出力します(図2)。このインスタンスでは他のフルテキストインデックスは作成していません。
「fdhost_type」列の値が「MultiThreaded」となっている1つのプロセスが表示されました。
「fdhost_process_id」列の値のプロセスをタスクマネジャーで確認すると「fdhost.exe」が実行されていることを確認できます(図3)。
次に、作成したテーブルに大量のデータを挿入して、フルテキストカタログを再構築中に「sys.dm_fts_fdhosts」動的管理ビューを出力します(図4)。
「batch_count」列の値が増加し、フルテキストデーモンホストにより3つのバッチ処理が実行されていると分かりました。
なお、「fdhost_type」列の値が「MultiThreaded」以外の値となるような条件を探すために、複数のフルテキストカタログの作成や1ページ(8KB)を超えるテキストの追加、Binaryデータ型の列に記録されたドキュメントを対象としたフルテキストインデックスの作成などの条件でフルテキストカタログの再構築を実行しましたが、「fdhost_type」列の値が「MultiThreaded」以外となる条件は見つけられませんでした。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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