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技術理事とCTOに聞く、「エンジニアとしての価値」の高め方キンドリルに聞く、次の時代のエンジニア像(2)

2021年9月、IBMのマネージドインフラストラクチャサービス部門から独立した従業員9万人のスタートアップ企業、キンドリル。多様なIT人材が活躍する中、同社は「エンジニアの価値」をどう捉えているのか。技術理事とCTOに話を聞いた。

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 社会全体でデジタルシフトが進む中、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。IT人材の重要性は一層高まり、社会や事業に貢献できるエンジニアが強く求められるようになった。ただ、社会の変化は激しく、技術分野も多岐にわたる。多様な選択肢がある中で、どのような力を身に付け、どう社会やビジネスに関わっていくのか、自身のキャリアパスを意識的に描けるか否かによって、そのやりがいや貢献度は大きく変わってくる。

 そうした中、「社会成長の生命線」をビジョンに掲げ、技術のプロ集団として顧客に寄り添うスタンスを打ち出しているのがキンドリルだ。IBMから独立した“巨大なアセットを持つスタートアップ”であり、キャリアを磨く選択肢として注目されている。では、そこで働くエンジニアは自身の役割やキャリアをどう考えているのか。今回は、技術理事(Distinguish Engineer)の森本祥子氏、技術理事でもありCTO(最高技術責任者)の澤橋松王氏に「エンジニアが発揮すべき価値」を聞いた。

エンジニアに求められる「幅広い視野、幅広い発信」

――キンドリルの技術理事はグローバルで14人、国内では4人のみとうかがっています。まずは今の森本さんにつながるルーツから教えてください。

森本氏 実は小さい頃から構造的なもの、動くものを見ては仕組みを考えることが好きで、その流れで自然に技術者になりました。社会に出た当初は物理的なモノを扱っていましたが、今はソフトウェアファーストな時代に変わり、社会や経営環境が変わるスピードも上がりました。静的な仕組みも美しいものですが、変わっていくものもまた美しいですよね。ニーズの変化に合わせて何かを変え、自分の在り方、役割も変えていくのは楽しくエキサイティングだと感じています。今は自ら変化を起こすことで、周囲に良い影響を与えられればと仕事に取り組んでいます。


森本祥子氏(技術理事 テクノロジー本部 アプリケーション&データAI担当)
大手外資系通信機メーカーにR&D部門で8年間勤めた後、1998年に日本IBMへ入社。SE、ネットワークインフラエンジニア、ITコンサルタントとしてキャリアを重ね、2019年に最高の技術職位であるDistinguish Engineer(技術理事)に就任。キンドリルではアプリケーション&データAI担当する技術理事として、ソリューション開発や技術的な営業支援、プロジェクト実行をリードする。IBMではエンジニアコミュニティーの活動にも積極的に携わってきた。

──変化を楽しめることはエンジニアとして重要な資質なのでしょうね。澤橋さん、キンドリルの技術理事に求められている要素とは何でしょうか。

澤橋氏 技術理事は「技術者として最高の人材」という位置付けですから、特定の技術領域の第一人者であり、社外においても第一人者と認められる存在であり、若手の目指すべき目標でなければなりません。単に技術が分かればいいというわけではなく、社会や顧客の真の課題を理解して、解決に導ける高度なコミュニケーション能力、幅広い知見、スキルが求められます。

──高度な技術力を、顧客視点で提供できることが重要なのですね。

澤橋氏 IBMから分社化してサービス専門会社になったこともあり、「顧客へのサービス提供」という視点は、キンドリル全社で重視しています。これがメーカーなら特定製品の第一人者となるのも良いキャリアモデルになるでしょう。われわれはメーカーではないので、幅広い技術、製品知識を基に、目的起点でニーズを手段に落とし込む能力が求められるのです。

──では、お2人はエンジニアを取り巻く状況をどう見ていらっしゃいますか。高い能力を求められながら、欧米より給与水準が低いなど報われていないと感じている向きは多いと思います。

森本氏 確かにそうした側面はあると思います。ただ私はエンジニア側にも課題はあるような気がしています。“昔ながらのスタイル”といいますか、広い視点を持つのではなく、1つの技術を極めることを重視する向きも多いのではないかと思うのです。無論、それが悪いわけではありません。ただ重要なのは、エンジニアであると同時にビジネスパーソンであるということです。「お客さま」がいることが前提であり、「お客さまが本当にやりたいこと」をアーキテクティングし、テクノロジーに落とし込む力がエンジニアの価値として求められているのだと思います。

──顧客視点の有無が肝要なのですね。

森本氏 もし「私は〇〇が得意です」「プログラムを書けます」だけだと、「1時間で何ができる/どのくらいこなせる」といった時間単価の世界になってしまいます。そうしたエンジニアだけが集まると、会社としても価格競争になりがちですよね。一方、エンジニア自身が「お客さまのビジョンを実現する良き相談相手になる」という意識と能力を持つことができれば、エンジニアの評価はそのお客さまが決めることになります。顧客企業の経営者が認めてくれれば、時間単価ではなく「価値」で評価されることになるのです。

自ら技術領域を開拓し、積極的に発信せよ

──貴社のエンジニアにはそうした価値が求められているのですね。企業がDXに取り組む上でも、そうしたエンジニアの重要性は上がっていくでしょうね。


澤橋松王氏(執行役員 最高技術責任者 兼 最高情報セキュリティ責任者)
1991年日本IBM入社。ゼネラルビジネス事業本部、eビジネスホスティングサービス部門を経て、2009年にIBM初のクラウドサービス「マネージドクラウドコンピューティングサービス」を開発、展開。2012年にチーフアーキテクト、2019年にIBM技術理事に就任。インフラストラクチャーサービス部門にて、オファリング開発とアーキテクト部隊を統括。2021年9月にキンドリルジャパン合同会社発足に当たり、執行役員 最高技術責任者に就任。

澤橋氏 エンジニアは2つのタイプに分かれます。現状維持を重視する人と、現状に満足せず新しいことをやっていく人です。チャレンジできるエンジニアは、今は報われないことがあったとしても今後ますます重要になっていくでしょう。特にユーザー企業に所属するエンジニアは、自ら研究した技術が生み出す価値を、管理層、経営層にアピールすることでDXをリードする役割を担っていくことになるはずです。その際には技術のスキルはもちろん、経営層とコミュニケーションできるスキルも必要です。ブログを書くなど自分の価値を社外にアピールすることも大切になると思います。

──それは先におうかがいした技術理事に求められる資質でもありますね。森本さんもそうしてキャリアアップしてこられたのですか。

森本氏 私は当初は控え目な日本人女性でした(笑)。そうしたアピールも重要だと感じるようになったのは、IBMに入社して少しキャリアを積んでからです。グローバル企業にいると、さまざまなシーンで自分の考えをアピールすることが求められます。例えば、チームリーダーなのに会議で黙っているのは許されません。課題を考え、ディスカッションをリードし、フィードバックするという活動に取り組まざるを得ません。それが自分の考えをアピールすることにつながっていったと思います。

また、自分から動いていかないと会社、社会、世の中は変わっていかないものだということも体験として理解できるようになっていきました。今はさまざまなツールがあって誰でもフラットに発信できます。例えば、自分の作った資料を社内のみんなが見られる場所に置いておくだけでもいい。そこからさまざまな立場の人たちとコミュニケーションをとっていけばいいのです。

エンジニアの多様性が価値あるアイデアを生む

──多様な立場、領域のエンジニアが発信する、コミュニケーションを取り合うというのは、社会的に重視されているダイバーシティー(多様性)にもつながるものですね。

澤橋氏 そうですね。エンジニアには2つタイプがいると話しましたが、どちらが良い悪いではなく、そうした人たちがチームで仕事をすることが重要です。キンドリルジャパンでも、リーダーの素養がある人、お客さまへのアピールが上手な人、技術一徹の人、海外のパートナーなど、多様な能力を集めてチームを作っています。

──エンジニアの多様性が、プロジェクトの視野の広さとなり、推進力ともなるのですね。

澤橋氏 ITシステムについても、例えば海外と日本の考え方の違いなどを意識することが求められますよね。「壊れたら作り直せばいい」という海外の発想で作られたプロダクトを、「壊れないように作る」ことを重視する日本企業にそのまま適用することはできません。課題解決に有効でも、壊れることが前提であること、その理由、メリット、デメリットなどに納得いただくことが不可欠です。ところがプロジェクトメンバーの視野が狭いと、そうした「世の中のお客さまにとっての当たり前」に気付けないことがある。広い視野があると「お客さまの思っている当たり前は、実は当たり前ではない」ことも分かるのです。

森本氏 そうしたダイバーシティーが生きる良い例の一つがデザインシンキングです。お客さま独自の課題観やニーズを聞いて、プロジェクトメンバーがアイデアを持ち寄ります。エンジニア一人一人にいろいろな考え方やライフスタイルがありますから、各人がそれぞれの視点で考えを出し合うことで、お客さまの真意をより良い形でかなえられるアイデアが生まれるのです。

デザインシンキングはキンドリルジャパンでもエンジニア必修研修として組み込んでいます。複数の技術エリアを学べるのはもちろん、ディスカッションをファシリテートする力、意見を言いやすい雰囲気を作る力など、エンジニアとして必要な力を自然に身に付けることができると思います。

一エンジニアとして見た「キンドリルジャパンの魅力」

──一般に、言われたままに手を動かす環境にあるエンジニアも多い中、貴社のエンジニアは価値を生み出すクリエーターなのですね。活発なコミュニティー活動も創造的な取り組みを支えているのでしょうね。

森本氏 そうですね。コミュニティーはたくさんありますが、例えば、日本女性技術者フォーラム(JWEF)は、女性技術者相互の交流と情報交換を行っており、キンドリルはJWEFのプラチナ会員となるなど、ダイバーシティーに関する取り組みを重要視しています。また、IBMとキンドリルが共同で運営している女性技術者コミュニティー「COSMOS」もその一つです。IBMグループの全女性従業員が対象で、現在は約20人のコアチームがいます。月に1回ほど集まり、仕事の課題や悩みなどをテーマとして持ち寄り、自律的に運営しています。例えば「特許を取るって難しいね」といった意見が出たら「じゃあ皆で特許を考えてみよう」といった具合です。意見もさまざまで業務に役立った事例も数多くあります。

──部門や年齢の壁を越えて課題や考えを共有できるのは心強いですし、成長にもつながりそうです。中立的に見ても貴社の魅力がたくさん伝わってきましたが、最後に「一エンジニアとして感じるキンドリルジャパンの魅力」を教えていただけますか。

澤橋氏 弊社のビジョンは「社会成長の生命線」です。実際にこのビジョンを体現されているお客さまを弊社が支えています。エンジニアにとっての魅力は、そうした社会成長を支える「お客さまのシステム全体を提案できる立場」でプロジェクトに携われることです。多岐にわたるお客さまの課題を、多様な知見、ノウハウ、テクノロジー、さらにはパートナーとの協業によって、より価値ある形で解決していくことには私自身もやりがいを感じています。こうした体験ができることはエンジニアとしての成長に確実につながるはずです。

森本氏 私はある意味、創業したばかりの今だからこそ、最も魅力があると思っています。組織力や技術力といった豊富なアセット、リソースを活用しながら、自分たちの腕一本で立ち上がるスタートアップとして活動することができるのです。この大企業とスタートアップの二面性を持つことが非常に面白い。やる気と飛び込む気概があれば、他ではできないようなことがたくさん経験できると思います。技術理事の立場としても、今のキンドリルジャパンの魅力を大切にしながら、エンジニアが組織、社会とともに成長できる会社にしていきたいと思っています。

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提供:キンドリルジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年8月4日

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