マルチクラウドネットワーキングソフトウェア(MCNS)市場の今:Gartner Insights Pickup(264)
Gartnerは、マルチクラウドネットワーキングソフトウェア(MCNS)に関するマーケットガイドの最新版を発表した。本稿では、その新興市場の動向を紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
Gartnerは先ごろ、マルチクラウドネットワーキングソフトウェア(MCNS)に関するマーケットガイドの最新版「2022 Market Guide for Multicloud Networking Software(MCNS)」を発表した。
これまで、このマーケットガイドは「Market Guide for Cloud Networking Software」と題されていたが、市場に出回る製品の一般的な呼称に合わせて、最新の2022年版で改称された。
GartnerはMCNSを次のように定義している。「MCNSは、複数のパブリッククラウド環境におけるネットワークの設計、デプロイ、運用を可能にする。MCNS製品は、複数のクラウド環境にわたり、一貫したネットワーキングポリシーやネットワークセキュリティ、ガバナンス、ネットワークの可視化を単一の管理ポイントを通じて実現する」
2022年版のマーケットガイドでは、新興のMCNS市場で起こっている次のような動向がまとめられている。
- 企業はMCNSのデプロイにより、パブリッククラウド環境の短所を克服しようとしている。その中には、高度な機能の欠如や、規模に応じた一貫した管理の難しさなどが含まれる
- MCNSは、名称に「マルチクラウド」とあるが、単一のクラウド環境でもデプロイでき、実際にそうしている企業もある
- MCNS市場は小さいが、売り上げ規模も顧客数も拡大している。Gartnerは、数千社の顧客がMCNSをデプロイしていると推計している。MCNSベンダーの売上高は、2021年は2億ドル以下だったが、2026年まで、年平均30%のペースで伸びる見通しだ
- 2023年末までにMCNSの複数の機能を使用する顧客数は30%増加し、3000社以上に達すると予想される
- MCNS市場で競争しているベンダーとしては、Alkira、Arrcus、Arista、Aviatrix、Cohesive Networks、Cisco、F5、Prosimo、VMwareなどが挙げられる
- 従来のネットワークベンダーが提供する仮想ルーター/アプライアンスは、クラウド、プラットフォーム、DevOpsチームの要件を満たさない場合が多い。プログラマビリティや統合機能、または柔軟なライセンス体系が不十分だからだ。言い換えれば、MCNSは単なる仮想ルーターではない。顧客がこうした仮想アプライアンスを、基本的なユースケースであるVPN以外に適用しようとしても、ニーズが満たされることはめったにない。これらの仮想アプライアンスは単なる「クラウドライク」なものではない
出典:Multicloud Networking Software(MCNS)(Gartner Blog Network)
筆者 Andrew Lerner
VP Analyst
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