インメモリOLTPの内部システムのハッシュバケットに関する情報を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(134)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、インメモリOLTPの内部システムのハッシュバケットに関する情報を出力する方法について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_xtp_hash_index_stats」における、インメモリOLTPの内部システムのハッシュバケットに関する情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」「Azure SQL Managed Instance」です。
概要
SQL ServerではインメモリOLTPを使用することで、トランザクション処理やデータ取得、データロード、一時データ・シナリオのパフォーマンスを最適化できます。インメモリOLTPでは、データアクセスやトランザクション実行は、従来のディスクベースのオブジェクトとは異なるアルゴリズムで処理されます。
さらにインメモリOLTPでは、ハッシュインデックスか非クラスタ化インデックスのいずれかを使用することができます。ハッシュインデックスはハッシュ関数によってハッシュ値を算出し、ハッシュ値に対応するバケットからチェーンを使用してデータを参照します。
「sys.dm_db_xtp_hash_index_stats」では、インメモリOLTPのハッシュバケットに関する情報を出力します。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
object_id | int | テーブルのオブジェクトID |
xtp_object_id | bigint | メモリ最適化テーブルのID |
index_id | int | インデックスのID |
total_bucket_count | bigint | インデックス内のハッシュバケットの総数 |
empty_bucket_count | bigint | インデックス内の空のハッシュバケット数 |
avg_chain_length | bigint | インデックス内のハッシュバケットに対する行チェーンの平均の長さ |
max_chain_length | bigint | ハッシュバケット内の行チェーンの最大の長さ |
xtp_object_id | bigint | メモリ最適化テーブルに対応するインメモリOLTPオブジェクトID |
動作例
ハッシュインデックスが含まれるメモリ最適化テーブルを作成していくつかクエリを実行した後に、「sys.dm_db_xtp_hash_index_stats」を実行すると、インメモリOLTPのハッシュバケットに関する情報が出力されました(図1)。
ハッシュバケットの数は「total_bucket_count」列で確認でき、ユニークインデックスキーの数の2倍程度が理想です。また、「avg_chain_length」列や「max_chain_length」列の値が大きい場合は、ハッシュインデックス値の重複率が高いことを示しています。ハッシュインデックスを使用してパフォーマンスが出ない場合は、ハッシュバケット数を調整することでチューニングが可能ですが、メモリ使用量や検索、挿入などのパフォーマンスを確認しながら調整する必要があります。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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