クラウドの煉獄への道は、空虚な決まり文句で彩られている:Gartner Insights Pickup(280)
「地獄への道は善意で舗装されている」といわれる。私の意見では、クラウドの煉獄(れんごく)への道は空虚な決まり文句で彩られている。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
「地獄への道は善意で舗装されている」といわれる。私の意見では、煉獄(れんごく)への道は、空虚な原則で舗装されている。
クラウドの導入では、これは実によくあることだ。顧客が毎日のように現れ、クラウド戦略についてこんなことを話す。「クラウドを使ってより革新的になる」「コストに注意を払い、最も低コストなソリューションを利用する」「可用性と回復力を最大化する」「クラウドで安全と安心を確保する」「ベンダーにロックインされない」――。
これらの一部はただの決まり文句だ。「クラウドでは気を付けないし、責任も持たない」「実装は最も粗悪なもので問題ない」「楽しくお金を浪費する」などと言う人がいるわけはない。上の段落で挙げた言葉も、意思決定の助けになる原則ではなく、あまり役に立たない。
クラウドに関する方針が意味を持つのは、複数の事項の優先順位を検討する文脈においてのみだ。例えば、「可用性の向上」が「コストの上昇」を伴う場合でも「可用性の向上」を目指すかどうか。また、ポータブルなソリューションと、より革新的なソリューションのどちらかを選ぶ必要がある場合にどう判断するか。こうした問いに答えを出すのに役立つものが、有意義な原則だ(なお、クラウドポータビリティを実現する奇跡的なソリューションが見つかったと思っている人は、ベンダーにまんまとだまされている)。
私は、以前に作成したクラウド戦略に関する調査レポートで、少数のことだけを判断するよう提言をした。
- 新しいビジネスソリューション(つまり、新しいアプリ)をどうするかについてのスタンス
- クラウドへの移行についてのスタンス
- ビジネスのアジリティ(俊敏性)、短期的なコスト、長期的なTCO(総所有コスト)に関する優先順位
- リスクやトランスフォーメーション、本社IT部門からのビジネス部門の独立性に関する方針
クラウド戦略をまとめた文書が20ページや50ページ、さらには100ページにも及んでも、これらの要素についての明確な決定事項が一切盛り込まれていないのは珍しいことではない。物議を醸すという理由で省かれているからだ。そのため、クラウド戦略に無意味な決まり文句が含まれ、行き届いたガバナンスは不可能になり、実際のクラウド導入は議論が絶えず、同じ争いが何度も繰り返され停滞してしまう。
クラウド関連の意思決定についていつも議論し、先進的な「クラウドファースト」宣言がクラウド導入の成功に結びついていない場合は、自社の原則に加え、その原則や優先順位との自社の整合性を精査する必要がある。さらに、その原則が現実的に実行できるかどうかの確認が必要だ。
出典:The road to cloud purgatory(Gartner Blog Network)
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筆者 Lydia Leong
VP Distinguished Analyst
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