クラウドネイティブインフラストラクチャへの進化を取り入れるには:Gartner Insights Pickup(299)
IT業界ではインフラアプローチが何度も大きな進化を遂げている。メインフレームからミニコンピュータに移行した1970年代に始まり、現在はクラウドネイティブインフラストラクチャが登場している。今後もこうした劇的な進化を取り入れていくには、われわれはどうすればよいのだろうか。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
IT業界では、インフラアプローチが何度も大きな進化を遂げている。1970年代のメインフレームからミニコンピュータへの移行に始まり、1980〜90年代には業界標準ハードウェアおよびソフトウェアに基づくクライアント/サーバアーキテクチャが普及し、2000年代の初めからは仮想マシン(VM)が台頭した。そして今、クラウドネイティブインフラが登場しており、これらに匹敵する規模の変化をもたらしている。
Gartnerは「クラウドネイティブ」を、クラウドの特性を実現または利用するために作られたものを示す言葉として広く定義している。クラウドネイティブインフラは、クラウドネイティブアプリケーションを提供するためのアジャイルプロセスを反映した、アジリティを持つプラットフォームを実現するために使用される。そのため、プログラマビリティ(プログラミング可能性)やレジリエンス(回復力)、イミュータビリティ(不変性)、モジュール性、弾力性を備え、宣言的である必要がある。
クラウドネイティブインフラをデプロイ(展開)する方法はさまざまだが、実際には、大規模なクラウドネイティブの取り組みはほとんどの場合、コンテナとKubernetesをベースにして行われる。社内で開発されるアプリケーションでも、ISVから提供されるアプリケーションでも、Kubernetesを基盤にしたものが増えており、事実上、Kubernetesはこうしたアプリケーションがデプロイされる「インフラ」となっている。
仮想インフラがマシン中心であるのに対し、クラウドネイティブインフラは基本的にアプリケーション中心だ。Kubernetesをベースにしている場合、クラウドネイティブインフラはさまざまな実質的変化をもたらす。例えば、ポッドが事実上、CPUになったり、PVC(永続ボリュームクレーム)がデータストレージデバイスになったり、サービスメッシュなどのサービス接続レイヤーがネットワークになったりする。
また、クラウドネイティブインフラは、低レベルのインフラにおけるコンピュートやストレージ、ネットワーク技術の進化を利用する。例えば、ベアメタルサーバ上でのコンテナ実行や機能特化型のアクセラレータカード(FAC)へのタスクのオフロード、Armなどのアーキテクチャに基づくプロセッサの使用、WebAssembly(Wasm)のようなマイクロVMアプローチによるコード実行などが挙げられる。
さらに重要なことは、これまでのインフラ進化の波とは異なり、クラウドネイティブインフラを導入するには、新しいアーキテクチャの原則や技術を採用するだけでは足りないということだ。GitOps(Kubernetesのアクティブなコントロールプレーンとその宣言型コンストラクトを利用する)のような新しい運用手法や、利用ベースのインフラ調達モデルも、クラウドネイティブインフラの実装に欠かせない。クラウドネイティブインフラの可能性を最大限に引き出すには、これら3つの側面全てに総合的に対処する必要がある。
Gartnerは、顧客企業のインフラとオペレーション(I&O)の技術担当者向けに、Kubernetesを使用するクラウドネイティブアーキテクチャに最適化されたインフラの実装ガイダンスを提供している。クラウドネイティブインフラをデプロイする目的は、クラウドネイティブアーキテクチャに基づくアプリケーションを開発、提供するためのセルフサービスプラットフォームをサポートすることにある。
通常、Kubernetesが今日のクラウドネイティブインフラの中核を担っているが、時間とともに見えにくくなるだろう。エッジにも展開されるようになっているが、サーバレスで運用されることが多くなっているからだ。いずれソフトウェア製品チームは、低レベルのコンピュートやストレージ、ネットワークリソースが抽象化された環境で作業するようになるだろう。
出典:Embracing the Evolution to Cloud-Native Infrastructure(Gartner Blog Network)
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筆者 Tony Iams
VP Analyst
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