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データとアナリティクス(D&A)の取り組みに関するビジネスリーダーの支援を取り付ける6つの方法Gartner Insights Pickup(303)

IT幹部は、データとアナリティクス(D&A)の取り組みにかかるコストにビジネス価値を示せなければならない。本稿では、D&A戦略への支持を獲得するのに役立つ6つの方法をお伝えする。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 データとアナリティクス(D&A)のリーダーを含む全てのIT幹部は、自らが進める取り組みのコストを正当化し、ビジネス価値を示せなければならない。IT予算が逼迫(ひっぱく)し、ITの取り組みの投資収益率(ROI)を実証するようCIO(最高情報責任者)に求めるプレッシャーが強まる中、このことはますます重要になっている。

 最高データ/アナリティクス責任者(CDAO)にとっては、自社のD&Aの取り組みがどのようにビジネス戦略に貢献し、価値をもたらすかを示すことが重要になる。「D&Aは、より効果的なビジネス上の意思決定を促進する」といった曖昧な説明では不十分だ。価値のストーリーや考え方を明確に構築し、「SMART」のアプローチにより、次の特徴を持つビジネス上のベネフィットを掲げることが望ましい。「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「実行可能(Achievable)」「関連性がある(Relevant:この場合はビジネス戦略との関連性)」「期限付き(Time-bound)」。

 ステークホルダーを説得して味方につけるには、目指すビジネス成果と、それがステークホルダーにもたらす個人的な影響を見極めて伝える必要がある。以下の6ステップのアプローチが、D&A戦略へのビジネスリーダーの支持を獲得するのに役立つ。

ステップ1.ステークホルダーの心に響く力強いビジョンを打ち出す

 D&Aのビジョンと価値は、ステークホルダーの視点から作られなければならない。目指す状態について、こうした関係者の心に響く、建設的で説得力のある展望を描く必要がある。プロジェクトの成果物、アウトプット、タスクではなく、分析的アプローチから把握できる、ビジネスインパクトと成果に焦点を当てるとよい。

 企業としての成果と、個人/プロとしての成果の両方を考慮する。前者には、売上高の増加、市場シェアの拡大、無駄の削減、リスクの軽減などがあり、後者には、同僚からのより良い評判、希望する昇進への支援、金銭的報酬、仕事への満足感、さらには、より快適な生活などがある。

ステップ2.阻害要因を率直に指摘する

 D&Aの取り組みの阻害要因や課題、問題、リスクを明確に特定する。例えば、「既存の技術スタッフが保身に走っている」「熟練スタッフが限られていて、技術の実装がうまくいかない」「D&Aの取組予算を誰が持つかでもめている」といった課題が発生しているかもしれない。これらの課題による影響を提示し、改善策を提案する。

 例えば、熟練スタッフが足りないために技術の実装がうまくいかない場合、既存のチームを必要な技術スキルを持つ新しいチームに置き換えるかもしれない。だが、そうすると、プロセスに関する組織としての知識が失われ、不安感や不信感が広がる恐れがある。改善策は、新しい技術を展開する前に、既存のチームに新しい技術に関するトレーニングを提供し、新しい技術の選定および展開プロセスに、ビジネスチームと技術チームの両方のメンバーに加わってもらうことが考えられる。

ステップ3.ビジネス成果が得られるまでのデータの使い方を想定したソリューションを提案する

 ソリューションアーキテクチャは、実務を担うデリバリーチームにとって不可欠だ。だが、ソリューションの設計において、データを使って解決できるビジネス上の問題や、そうした問題解決によって実現すると予想される、ビジネス施策や測定可能な成果が明確に記述されることはほとんどない。これでは、ビジネス部門のステークホルダーからそっぽを向かれる恐れがある。

 D&Aのビジネスケース(投資対効果検討書)に盛り込むソリューションの青写真では、ステークホルダーの注目を集め、ソリューションの全体的なアプローチを知らせるのに役立つ、分かりやすい概要を示す必要がある。それは「マーケテクチャ」の視点から見たソリューションの全体像だ。つまり、マーケティングとアーキテクチャの視点を組み合わせて、全体的な情報サプライチェーンを捉え、ビジネス部門のステークホルダーにとって重要な言葉で説明したものだ。

 例えば、次の点について検討し、明示する必要がある。

  • 期待されるビジネス成果(行動を起こした結果、どんなベネフィットが得られるか)
  • 結果としてのビジネス側のアクション(ビジネス上の問題を解決できた結果、やり方を変える行動は何か)
  • 入力データ――例えば、ソースデータと各ビジネスアプリケーションなど(ビジネスコミュニティーはビジネス上の重要な問題を解決するために、どんなデータにアクセスするか)

ステップ4.D&Aのデリバリーロードマップをビジネスの言葉で示す

 デリバリーチームにとっては、全てのタスク、アクティビティー、相互依存関係を含む詳細なデリバリー計画およびスケジュールが重要だ。だが、経営幹部が必要としているのは、ロードマップのタイムラインを簡潔に示したものだ。将来の目標のために、時間の経過とともに順次作成していく必要がある成果物を、以下のような経営幹部にとっての重要な情報を明確に把握できるように提示するとよい。

  • 何が得られるか
  • いつ得られるか
  • 自分にどんな影響があるか

ステップ5.ビジネスの取り組み全体に関するコストベネフィット分析を行い、概要を説明する

 前述のように、予想されるベネフィットは、具体的かつ定量化可能で、ステークホルダーにとって望ましいものでなければならない。その説明では、D&Aの貢献によって何が可能になるかを明示する必要がある。D&Aのビジネスケースを提案するときは、初期投資と継続的なサポートコスト(総保有コスト:TCO)を、期待されるROIの観点から正当化できなければならない。

 ROIとTCOを計算して比較する具体的な財務方法論はさまざまだが、以下のような重要な原則がある。

  • ROIを、ステップ1で最初に確立したビジョンで掲げた展望や成果、主要なベネフィットに結び付ける
  • 先見性と未来志向を持ち、取り組み全体の損益が黒字になることを示す
  • CFO(最高財務責任者)やCIOは、効率性の向上やリスクの軽減を求めるかもしれない。だが、ビジネス部門のステークホルダーは通常、ビジネス効果の向上という形でビジネスのベネフィットが得られることを望むということを念頭に置く
  • 政府機関や非営利団体など一部の組織は、非財務的な利益が活動の主な動機だが、非財務的な利益も、前述したSMARTで示すことが望ましい

ステップ6.直ちに次の行動に移り、D&Aの取り組みを開始する

 取り組みを進めるための地ならしとして、今すぐ必要な次の行動を打ち出す。これは、ステークホルダーに対するD&Aのビジネスケースの提案に関する最後の推進力になる。次の行動は、「次に何が起こるか」「誰が行うか」「いつ行うか」「なぜ必要なのか」という観点から具体化する。

 明快な言葉で明確な趣意書を作成する。これは許可を求めるものではない。「推定承諾話法」(目指す状態を前提にして、対話を展開する)を用いて意思決定プロセスの主導権を握り、結論に導くことに主眼がある。また、CDAOは責任を受け入れ、自信と強い意志を持って計画全体を管理していることを示す。

出典:Gartner

筆者 Alan Duncan

Distinguished Vice President


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