企業に価値をもたらすジェネレーティブAIの4つのユースケース:Gartner Insights Pickup(304)
AIのイノベーションは加速しており、さまざまな業界でジェネレーティブAI(生成AI)のユースケースを数多く生み出している。ジェネレーティブAIは、特定のモノについて可能なさまざまな設計を探索し、正しい、最適な組み合わせを見つけられる。本稿では、企業に価値をもたらす4つのユースケースを紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
ジェネレーティブAI(生成AI)は、特定のモノについて可能なさまざまな設計を探索し、正しい、最適な組み合わせを見つけられる。多くの分野で設計を拡張し、加速させているだけでなく、人間が見落としているかもしれない斬新な設計やモノを発明する可能性もある。
「ChatGPT」のような初期の基盤モデルは、創造的な仕事を拡張するジェネレーティブAIの能力に焦点を当てている。だが、Gartnerは2025年までに、新薬や新素材の30%以上が、ジェネレーティブAI技術を用いて体系的に発見されるようになると予測している(現在、こうした新薬や新素材の割合は0%)。これらは数多くの業界におけるユースケースの1つにすぎない。
AIのイノベーションは加速しており、さまざまな業界でジェネレーティブAIのユースケースを数多く生み出している。以下では、いかにジェネレーティブAIが幅広い業界にわたってインパクトを与え、企業に価値をもたらすかを示す4つのユースケースを紹介する。
1.医薬品設計におけるジェネレーティブAI
2010年の調査では、創薬から商品化までの平均コストは約18億ドルで、創薬プロセスには3〜6年もかかっていたことが分かった。既にジェネレーティブAIは、さまざまな用途の医薬品を数カ月で設計するのに使われており、創薬にかかるコストと時間の両方を削減する大きな機会を製薬会社に提供している。
2.チップ設計におけるジェネレーティブAI
ジェネレーティブAIは強化学習(機械学習手法の1つ)によって、半導体チップ設計における部品配置(フロアプランニング)を最適化し、製品開発期間を数週間から数時間に短縮できる。
3.シンセティック(合成)データにおけるジェネレーティブAI
ジェネレーティブAIは、シンセティックデータを生成する方法の1つだ。シンセティックデータは、現実世界を直接観察して得られるのではなく、生成されるデータを指す。こうしたシンセティックデータを使えば、元のソースのプライバシーを確保しつつ、モデルをトレーニングできる。例えば、実際の患者の医療記録から、患者本人が特定されない形で医療データを人工的に生成し、研究や分析への使用が可能だ。これにより、それらの患者のプライバシーが確保される。
4.部品のジェネレーティブデザイン
ジェネレーティブAIにより製造や自動車、航空宇宙、防衛といった業界は、性能や材料、製造方法などの特定の目標や制約に合わせて最適化した部品を設計できる。例えば、自動車メーカーはジェネレーティブデザインによって革新的な軽量化設計を行い、燃費向上という目標に役立てられる。
ジェネレーティブAIはビデオや物語、トレーニングデータ、さらには設計図や回路図など、価値の高い成果物を作成できるシステムを実現する。ジェネレーティブAIにはさまざまなAI技術が採用されているが、最近ではファウンデーションモデルが注目されている。
だが、ジェネレーティブAIの導入を本格的に進める前に、この技術はビジネス機会をもたらすだけでなく、現実の脅威につながる恐れもあることを念頭に置く必要がある。例えば、ジェネレーティブAI技術の悪用によるディープフェイクや著作権問題などで、自社が標的になるかもしれない。
セキュリティやリスク管理のリーダーと協力し、ジェネレーティブAIの悪用による脅威が個人や企業、政府にもたらす風評、偽造、詐欺、政治的リスクをプロアクティブに軽減する必要がある。
最後に、厳選され、承認された一連のベンダーやサービスを通じて、責任を持ってジェネレーティブAIを使用するよう社内ガイダンスを検討する。ベンダーやサービスの選定に当たっては、トレーニングデータセットや適切なモデルの利用について透明性の確保に努めている、あるいはオープンソースでモデルを提供しているベンダーやサービスを優先する。
出典:Gartner
筆者 Brian Burke
VP, Analyst, KI Leader
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