「ChatGPT」や生成AIの台頭でUIデザインはどう変わる?:Gartner Insights Pickup(306)
OpenAIの「ChatGPT」をはじめ、このところ、生成AI(ジェネレーティブAI)の進化が目まぐるしい。テキスト作成は得意だが、UIやUXのデザインについてはどうだろうか――。
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「ChatGPT」は何が得意なのか。それはテキストだ。なぜなら、ChatGPTの機能は全てテキストでトレーニングされているからだ。
ChatGPTのベースとなっているAI(人工知能)モデルである「GPT-3」ファミリーのような大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)は、膨大なデータセットでトレーニングすることで構築されている。これらのデータは、クローラーを使ってWebからスクレイピングで収集したり、Wikipediaなどから抽出したりしたものだ。
GPT-3だけでも、数千億の単語を含んでいる。既に周知のように、GPT-3は自然言語による質問に対して、これらの単語をつなぎ合わせて見事な回答を返せる。
だが、私はずっと「LLMを文章ではなくユーザーインタフェース(UI)でトレーニングできたらどうなるか?」と考えている。
「Figma」のような現代的なデジタルデザインプラットフォームでは、レイアウトや構成要素をコードで記述する。つまり、画面上の全オブジェクトの配置やサイズ、色といった属性がコードで記述される。
LLMを100万(あるいは10億)種類の画面デザインでトレーニングすることを想像するのは、突拍子もないことではない
このトレーニングの結果として、いわば「ビジュアルの自動補完」が実現され、ユーザー体験(UX)やUIのデザイナーが基本的な部分を作るだけで、あとは生成AIに任せて、ワイヤフレームや、さらには画面デザインの完成形を作れる可能性がある。
こうしたデザインは、画像生成AIの「DALL-E」が生み出す、われわれが目にしているような「フラットな」(作品然とした)ビットマップグラフィックスではなく、構成要素をあちこちに動かしたり、変更したりしても問題ない、編集可能なデジタルデザインになるだろう。
また、デザイナーが、確立されたデザインシステムを既に使っている場合は、LLMをそのUIでトレーニングすればそのスタイルを継承できるかもしれない。自動的に組織の既存のルック&フィールをテーマ化し、そのテーマに沿ってモックアップを生成する可能性がある。
UXやUIのデザイナーが不要になることはないだろう。優れた体験デザイナーは、人間心理の研究や知識からユーザーに関する知見を導き出し、組織の商品ビジョンと融合させる。
AIの進化により、デザイナーは画面作りに費やす時間を短縮し、実際のユーザーの問題解決に集中する時間を増やすだろう。それは歓迎すべき大きな成果だ。
出典:How will ChatGPT and Generative AI change User Interface design?(Gartner Blog Network)
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筆者 Will Grant
Sr Director Analyst
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