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テクノロジープロバイダーが採用すべきPLG戦略、実践のポイントとはGartner Insights Pickup(308)

PLG(プロダクト・レッド・グロース)戦略は、ユーザーにプロダクトを試してその価値を体験してもらい、購買につなげることに主眼を置いている。本稿では、PLG戦略を成功させるためのポイントを紹介する。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 テクノロジープロバイダーが顧客を獲得してビジネスを成長させるには、プロダクトマーケティング担当者は、まずユーザーにプロダクトを試して良い体験をしてもらい、それと連動して適切なマーケティングおよび営業活動を行う必要がある。

 プロダクトがいかに優れていても、自然に売れるとは限らない。そのためにプロダクト・レッド・グロース戦略がある。PLG戦略は、ユーザーにプロダクトを試してその価値を直接体験してもらい、購買につなげることに主眼を置いている。こうした戦略を最適化するには、従来とは異なるマーケティングや営業のリソースを、適切なタイミングで適切な活動に投入する必要がある。

 PLGには2つの重要な目標がある。

  1. 見込み客の社内ユーザーが何らかの形でプロダクトを体験し、使用価値の一端に触れられるようにする
  2. ユーザーデータとプロダクト体験時のエンゲージメントデータを利用し、満足したユーザーを支持者に変え、さらに有料の顧客に転換する

 「PLGにおける販売促進活動は、従来のセールス・レッド・グロース(SLG:営業主導の成長)やトップダウンの販売促進活動とは異なる」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのデイヴィッド・ヨケルソン(David Yockelson)氏は語る。

 「プロダクトマーケティング担当者は、ユーザーのエンゲージメントと価値を高める施策を推進するとともに、その結果、得られる支持や購買意欲に応えて営業担当者が行動できるように支援する必要がある」(ヨケルソン氏)

PLGを成功に導く要因

 高いエンゲージメントを示す見込み客を実際の購入者に変えるには、新旧のマーケティングおよび営業アプローチを適切なタイミングで適用する必要がある。PLG戦略では、まずユーザーにプロダクト体験から価値を感じてもらうことに注力しなければならない。PLGを成功に導く要因には、以下のようなものがある。

  • ユーザーとバイヤー(購買担当者)の両方に、適切な体験とコンテンツを提供する
  • プロダクトに対する意図のシグナルを捉え、プロダクト以外のシグナルと集約して意図を推測する
  • 営業担当者が、バイヤーと適切なやり取りをするべきタイミングを、データを基に判断する手助けをする

 無料ユーザーを獲得し、有料の顧客に転換するには、3つのステップを踏む必要がある。プロダクトマーケティング担当者やプロダクトマネジャー、デマンドジェネレーション担当者、営業担当者は、以下のことを行わなければならない。

  1. ユーザーのプロダクトに関わるジャーニー(過程全体)を理解し、ユーザーが価値を感じるシグナルと行動を特定する
  2. 見込み客の育成の自動化、教育、ガイダンスによって、利用促進に適したコンテンツと体験を判断する
  3. 利用シグナルと購買シグナルを組み合わせ、マーケティングと営業力を拡大する

 以下では、PLGのこれらの戦略的ステップについて詳しく説明する。

ステップ1:ユーザージャーニーを理解し、価値を感じるシグナルと行動を特定する

 PLGは、Webサイト訪問やインバウンド/アウトバウンドのマーケティングや営業活動から得られる、精度の低い、あるいは非連続なシグナルに頼ることから始めるのではなく、プロダクトを体験して価値を見いだしたユーザーが発する正確な機会シグナルを検出することを目的としている。

 PLGを成功させるには、タスクやプロセスの達成を支援するプロダクトへのユーザージャーニーを理解する必要がある。プロダクトマネジャーとマーケティング担当者が連携を取り、経験や実験を通じて、ユーザーがどのように価値を得るかを把握しなければならない。

 ユーザージャーニーに関するプロダクトマーケティングとプロダクト管理の連携は、個々の見込みユーザーや見込み客が「適切な使い方をいつ体験したか」を示す、マーケティングや営業活動の指標を特定する上でも必要になる。こうした体験からプロダクトの価値を感じた見込みユーザーや見込み客は、「PQL」(Product Qualified Leads)や「PQA」(Product Qualified Accounts)と呼ばれる。

 PQLシグナルは、個々のプロダクトカテゴリーごとに異なる。また、特定の見込み客の特定のタイプのユーザーは、使用価値を感じる可能性が他のユーザーよりも高いかもしれない。そのため、PLGはより良質な見込み客の獲得につながるだけでなく、プロダクトチームにもメリットをもたらす。PLGにより、プロダクトチームはユーザーがプロダクトを通じてどのようにタスクを達成するかを観察し、それに基づいてプロダクトを改良できるからだ。

ステップ2:自動化、教育、ガイダンスによる利用促進

 ユーザージャーニーを理解することは、見込み客にプロダクトの価値を感じてもらうための重要なポイントだ。ユーザーには、プロダクトの使用や他の体験(インタラクティブなデモなど)を通じて、素早く価値を見いだしてもらう必要がある。PLGでは、ユーザーは最初のやり取り(通常、オンラインフォームへの入力を通じて)からプロダクトを体験して価値を得るまで、ほぼスムーズに“成熟”する。

 プロダクトマーケティング担当者は適切なユーザー行動を促進するために、さまざまな工夫を凝らすことができる。これらの工夫は以下のように、アプリケーション内外で、あるいはインタラクティブデモの一部として、または関連するコミュニティーの中で講じられる。

  • アプリケーション内にメッセージを配置
  • アプリケーション内に動画やインタラクティブデモへのリンクを配置
  • インタラクティブデモ内でガイドやホットスポットを提供、またはCTA(行動喚起)を配置
  • 電子メールで使い方のコツを提案、またはガイダンスを提供

 ユーザーが取った行動や取らなかった行動に応じて働き掛けることで、人がユーザーに使い方をガイドしたり、その進歩をたたえたりすることができる。ユーザーがプロダクトのナビゲートに成功してPQLとして認識されれば、顧客に転換する好機だ。

ステップ3:マーケティングと営業力の拡大

 PLGの大きな動機は、バイヤーのほとんどの購買活動からは購買意欲が正確には分からないこともある。取引の成立までに12カ月以上かかる場合もある。

 PLGは、特定の見込み客のユーザーからの支持に基づき、より迅速に見込み客を有料顧客に転換する機会を提供する。また、ユーザーのセルフサービスの大規模な導入により、顧客獲得コストを下げられる可能性もある。

 使用状況のテレメトリーや他のユーザーエンゲージメント指標から知見を取得し、管理、分析を行い、業務に活用するための方法、技術、プロダクトは幾つかある。こうした知見は、新規顧客の獲得や既存顧客の拡大に貢献する。テクノロジープロバイダーは、ユーザー関連とバイヤー関連の両方のシグナルを利用して、無料トライアルユーザーを有料の顧客に転換し、それを拡大する必要がある。

 このハイブリッドモデルでは、見込み客や販売の機会は、ユーザーとバイヤーがさまざまなチャネルでプロバイダーと行うやり取りに関連するシグナルの組み合わせを基にスコア化され、それらのスコアを踏まえてマーケティングや営業活動が進められる。マーケティング部門と営業部門は、これらのシグナルを購買意思や購買力の観点から評価する基準を確立する。この評価基準は、両部門が協力して確立することが望ましい。

 B2Bテクノロジープロバイダーにとって最適な成長戦略は、PLGの一連の原則と戦術を取り入れ、従来の成果ベースやトップダウン型の営業主導アプローチと組み合わせた市場参入(GTM:Go-to-Market)戦略だ。

出典:Keys to Product-Led Growth for Tech Providers(Insights)

筆者 Lori Perri

Content Marketing Manager


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