ハイブリッドワークがうまくいかない理由と改善ポイント:Gartner Insights Pickup(313)
なぜ、ハイブリッドワークはうまくいかないのか……? 本稿では、うまくいかない理由と、その改善ポイントを紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
2022年12月。企業は“オフィス回帰”を目指していたものの、2回目の大きな挫折を余儀なくされていた(新型コロナウイルス感染症のオミクロン変異株の流行による)。そのとき、私はマズローの「欲求5段階説」を、未来の働き方に当てはめて考えてみようと思い付いた。
マズローによると、人間の欲求には5つの段階がある。最も低次の欲求は「生理的欲求」で、より創造的、知的な「自己実現欲求」が最も高次の欲求だ。さらに重要なのは、人間は、低次の欲求を満たす確固たる基盤がなければ、帰属、承認、自己実現という高次の欲求がわかないということだ。
私が欲求5段階説を踏まえて未来の働き方を考察し、図解した記事を初めて発表してから1年半余りたつ。だが、依然として、経営リーダーは「従業員をオフィスに復帰させるにはどうすればよいのか」と頭を悩ませている。
私は毎日、顧客とやりとりする中で、従業員をオフィスに呼び戻す方法を知りたがっている経営リーダーたちと話している。こうしたリーダーからは「尻をたたくのではなく、動機付けをしようとしているがうまくいかない」といった声が聞かれる。最近メディアに掲載された記事のタイトルを幾つか抜き出してみると、暗中模索していることが浮き彫りになる。
--出社の義務付け、ピックルボール、ビール。何がハイブリッドワークを定着させるのか(NY Times)
--ハイブリッドワークが新常態――半分しか埋まっていないビルも常態化(Barrons)
--CEOは、オフィス回帰を巡る議論は決着がついたと考えた。それは間違っていたようだ(NBC)
--「オフィス回帰は自らの首を絞める」と従業員は批判(Business Insider)
従業員の欲求階層
従業員の帰属欲求や承認欲求、自己実現欲求が満たされていれば、企業が従業員から受ける恩恵がはるかに大きくなることは容易に分かる。だが、ほとんどの企業は、生理的欲求と安全欲求という基本的な欲求を満たせられずに足踏みしている。従業員の5段階の欲求は、以下のように要約できる。
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