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変化の激しい環境に対応するためのアダプティブ戦略Gartner Insights Pickup(317)

本稿で紹介する中核的プラクティスとビルディングブロックにより、アダプティブな(適応力の高い)ビジネス戦略を策定し、機会と脅威への自社の対応を迅速化できる。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」などのグローバルコンテンツから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 年間計画に沿って展開される従来の戦略は、策定時に行われる予測の確実性に大きく依存している。そのため、すぐに時代遅れになり、変化への対応が遅れることが多い。今日の不安定なビジネス環境の中で経営リーダーが成長を推進するためには、従来とは異なるイベントドリブンのアダプティブな(適応力の高い)戦略アプローチが必要になる。

 「ビジネスモデルが頻繁に、かつ、より根本的に変わる時代には、アダプティブな長期戦略アプローチが適している」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのイアン・コックス(Ian Cox)氏は指摘する。

 「変化のペースが速いほど、適応力の高さが不可欠になる」(コックス氏)

アダプティブ戦略の起点

 自社の戦略の適応力を高めようとする経営幹部は、以下を実行する必要がある。

  • 既存の戦略の課題を見極める(「策定期間が長い」「変化への対応が遅い」など)
  • 課題の克服に最適なアダプティブ戦略プラクティス(実践方法)を特定する(「できるだけ早く戦略を実行し始める」など)
  • 優先順位の高いアダプティブプラクティスを支える適切なビルディングブロック(構成要素)を選択、実装する(「リアルタイムの知見」など)

4つの中核的なアダプティブ戦略プラクティス

 Gartnerは、企業がアダプティブ戦略を展開するために必要な4つのプラクティスを特定した。真のアダプティブアプローチは、この4つ全てを実践することで可能になるが、企業は多くの場合、戦略における当面の課題に対応する1つか2つのプラクティスにまず焦点を当てる。

1.できるだけ早く実行し始める

 戦略は、ビジネスモデルで想定された価値を創造、提供、保存するために企業が取るべき長期的な選択と行動を定義する。だが、計画の策定に時間をかけるほど、計画を実行する時間が少なくなる。その結果、世界が先に進んで、計画が時代遅れになるリスクが高まる。

 また計画は、直ちに実行すれば欠陥が表面化し、改善点が見つかる。アダプティブ戦略の実行にあたっては、完璧、完全な情報は必要ない。手に入る情報を生かして、戦略を成功させるために早急に必要な行動を特定するからだ。

2.変化に応じて対応する

 ビジネスコンテキスト(文脈)がゆっくりと変化し、ディスラプション(創造的破壊)がたまにしか起こらなかった時代には、戦略の見直しは毎年行うのが一般的だった。だが、ディスラプションが頻発する現在の状況では、戦略の見直しに1年を費やす余裕のある企業はほとんどない。今や一部の企業は四半期ごとに、または毎月、戦略を見直している。だが、真にアダプティブな企業は、ビジネスコンテキストを継続的にモニタリングし、コンテキストを再構築するための新しい情報が手に入るたびに、戦略の見直しを開始する。

 アダプティブ戦略の指針となるビジョンは、長期的で大胆なものでもよいが、継続的に拡張していかなければならない(数年ごとに刷新するものではない)。企業が成功するために取るべき行動の限界を広げるためだ。

3.不確実性を受け入れ、探求する

 不確実性を受け入れることは、分野によっては必然的に、一定レベルのリスクを許容することを意味する。だが、不確実性は機会をもたらす。そのため、リスクを受け入れ、イベントに応じて迅速に対応する企業は、不確実な世界で成功する可能性が高い。ビジネスにおけるアダプティブ戦略は、企業がそれを達成し、リスクを軽減するのに役立つ。

4.戦略に全員を巻き込む

 トップダウンの戦略プロセスには、選ばれた少数の個人が関与する。これに対し、アダプティブプロセスは包摂(ほうせつ)的であり、人を引きつけ、協調を促す。社内外の誰もがアイデアや知見を提供し、貢献する。このアプローチは、企業が戦略を策定、更新、実行する能力を高め、その成果の質を向上させる。

アダプティブ戦略の9つのビルディングブロック


(出所:Gartner)

 Gartnerの調査により、この4つのプラクティスを確立するのに役立つ9つのビルディングブロックが明らかになった(ただし、時間の経過とともに、より多くのブロックが明らかになりそうだ)。

 ほとんどの従来型企業はまず、2つ程度の中核的プラクティスを確立するのに役立つ一部のビルディングブロックに焦点を当てる。これらのビルディングブロックを用いて特定の課題に取り組み、従来の戦略プロセスも進めながら、アダプティブアプローチの要素を追加していく。デジタルネイティブ企業は、より多くのビルディングブロックを用いることが多い。

 ビルディングブロックは以下の3つのカテゴリーに分類される。

・インプット

 戦略に関連するアイデア、知見、情報を生み出し、獲得し、保存する方法。例:リアルタイムの知見、クラウドソーシング、継続的なスキャン。

・プロセス

 戦略の策定、見直し、維持、更新の方法。例:分散型の意思決定、戦略スプリント、継続的プロセス。

・アウトプット

 戦略の形式、内容、構造。例:選択肢に基づく戦略、実験に基づく戦略、実用最小限の戦略。

出典:Lead Through Volatility With Adaptive Strategy(Insights)

筆者 Jackie Wiles

Content Marketing Manager


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