プラットフォームエンジニアリングチームを作り、拡大するための重要なステップ:Gartner Insights Pickup(319)
プラットフォームエンジニアリングのチームを作り、取り組みを拡大するには、幾つかの段階を踏む必要がある。各段階について解説する。
プラットフォームエンジニアリングにより、ソフトウェア開発者はより迅速に価値を創出し、日々の開発体験を向上させられる。だが、こうしたメリットがあるものの、ソフトウェアエンジニアリングリーダーは専任のプラットフォームエンジニアリングチームに資金を投入したり、チームを拡大したりするのに苦労している。この記事では、これらに役立つ重要なステップを紹介する。
「多くの場合、効果を十分に証明するまでは専任のプラットフォームエンジニアリングチームに資金を投入することはできない」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのジョージ・スパフォード(George Spafford)氏は指摘する。
「ソフトウェアエンジニアリングリーダーがプラットフォームエンジニアリングを何とか始めても、取り組みを拡大しようとすると壁にぶつかる。例えば『経営リーダーからの支持や資金投入の承認がいつまでも得られない』『プラットフォームを構築するスキルを持った人材が足りない』『作業量にスタッフの人数が追い付かない』といった問題に直面してしまう。そのため、動き出した活動がなかなか軌道に乗らない」(スパフォード氏)
プラットフォームエンジニアリングチームを作るための3つのポイント
プラットフォームエンジニアリングとそのセルフサービス機能は、ソフトウェア開発チームがプロセスの課題やフローの制約を軽減し、自分たちが何に責任を負っているかをより良く理解するのに役立つ。プラットフォームエンジニアリングチームを作るときには、以下の3つのベストプラクティスを実践すれば、これらの効果を証明しやすくなる。これらのベストプラクティスで重要なのは、手持ちのリソースから始めて、ビジネスに焦点を当てた厳格なアプローチを取ることだ。
1.プラットフォームオーナーを指名する
プラットフォームオーナーを指名し、プラットフォームの方向性の設定とロードマップの積極的な管理を担当させる。プラットフォームオーナーがプロダクト/ソフトウェアチームのニーズを理解し、顧客価値の効率的な提供を最大化するように導く。
プラットフォームオーナーには、プラットフォームの構築における以下のプロセスを任せる。
- 定義する
- 実現する
- モニタリングする
- マーケティングを行い、顧客やユーザーからフィードバックを得る
- 改善する
プラットフォームオーナーは、ヒューマン、ビジネス、技術の各スキルを適切に併せ持つ必要があり、チームメンバーとうまくコミュニケーションを取り、効果的に協力し合えなければならない。
2.実用的な最軽量プラットフォームを構築し、プロダクトライフサイクルを開始する
プラットフォームオーナーは、開発者やプロダクトチームなどのステークホルダーと密接に協力し、最小限のオーバーヘッドでプラットフォームエンジニアリングを自社に導入する方法を見いださなければならない。まだ成功が証明されていない新しいサービスを開発するのではなく、効率的で価値ある既存のソリューションを特定し、活用するとよい。
最小限の予算と時間をかけて、実用的な最軽量プラットフォームを構築するようにする。リーダーに多額の先行投資を求めなければ、価値を証明し、ビジネスケース(投資対効果検討書)を作成することがより容易になる。
プラットフォームオーナーは、常に以下に重点を置く。
- 学習する
- 改善する
- 価値を証明する
3.プラットフォームユーザーからのフィードバックと成果指標を使用して、価値提供の結果を追跡する
プラットフォームオーナーは、プラットフォームユーザーからのフィードバックを必要としている。対面で話を聞くのが理想だ。調査のデータや電子メールによるコメントも有用だが、良い会話の代わりにはならない。
プラットフォームオーナーは、フィードバックから以下を見つけることを心掛けるようにする。
- 何がうまくいき、何がうまくいかないのか
- 新機能のアイデア
- 得られた効果
- 発生し得るリスク
またプラットフォームオーナーは、リーダーの理解やサポートにつながる方法で、プラットフォームの効率性とスピードの向上を証明する必要がある。そのため、採用や使用状況、効果に関する指標をリーダーと共有しなければならない。
プラットフォームエンジニアリングの取り組みを拡大するための3つのポイント
これまでのステップで価値を証明したら、取り組みの拡大を検討する必要がある。ビジネスケースを作成して経営リーダーに説明し、予算と適切な人材を確保するために、ソフトウェアエンジニアリングリーダーは、最初のプラットフォームエンジニアリングチームを発展させるビジョンを描かなければならない。
必要なリソースを確保するために不可欠な重要な要素を以下に示す。
1.開発者ジャーニーマップを作成し、制約や不満を特定する
プラットフォームオーナーは、現在と将来のニーズについて顧客からフィードバックを得る必要がある。開発者ジャーニーマップを作成し、各ステップの満足度を測るとよい。グラフィカルな表現でワークフロー内の難点や不満点を示すことで、ステークホルダーとの会話やビジネスケースの作成が進み、機能に優先順位を付けられる。
2.人員戦略を立てる
専任のプラットフォームエンジニアリングチームを置き、拡大する狙いを、期待される効果を中心に打ち出す。
- 担当作業の割り振りの変更が少なくなる
- 遅延が減少する
- 思考の継続性が向上する
- プラットフォームが、進化する魅力的なプロダクトとして扱われる
これらの結果、チームメンバーの生産性が向上することを明確にする。
3.プラットフォームエンジニアリングチームの本格的な構成を決める
プラットフォームオーナーは、プラットフォームの価値の流れに注目し、上記の人員戦略を踏まえ、自社の利益と利用可能なリソースに基づいて、プラットフォームエンジニアリングチームをどのように構成していくかを決める必要がある。プラットフォームエンジニアリングチームには、プラットフォームを構築し、進化させるために必要な視点を持った人材を配置する。
プラットフォームエンジニアリングの取り組みを拡大していくために、プラットフォームオーナーに、以下のグループと協力することを奨励する。
- プロダクトチーム
- インフラストラクチャとオペレーション(I&O)
- サイト信頼性エンジニアリング(SRE)
- セキュリティ
- エンタープライズアーキテクチャ
- データとアナリティクス
技術的な知識に加え、以下の資質を持つチームメンバーを選ぶ。これらの資質は、プラットフォームの構築やサポート、進化を協調的に進めるために必要になる。
- チームプレーヤー
- やる気
- コミュニケーションが円滑
- 献身性
- 責任感
出典:Making the Business Case for a Dedicated Platform Engineering Team(Insights)
筆者 Lori Perri
Content Marketing Manager
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