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戦略の実行で成功するための5つの柱Gartner Insights Pickup(322)

組織の戦略を成功させるにはどうすればよいのか。本稿では、戦略を効果的に実行するためのヒントと、それを妨げる障壁、5つの重要な柱について紹介する。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」などのグローバルコンテンツから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

ヒントを実践して戦略を効果的に実行する

 組織は膨大な時間と労力、投資をして目標や戦略を策定する。だが、半数以上の組織は、戦略を効果的に実行できていない。大きな成功を収めるには、以下の5つの課題に早い段階で取り組む必要がある。

  1. 戦略の策定:戦略の実現性を評価する
  2. 実行計画の立案:戦略実行の担い手に求める成果を定義する
  3. パフォーマンス管理:重要な行動に関する説明責任を持たせる
  4. 戦略コミュニケーション:戦略を実行者に浸透させる
  5. 組織のリソース配分:戦略を実行するためのリソースをマネジャーに提供する

戦略の実行を妨げる多くの障壁

 「企業の戦略担当者の61%は、新たな成長への取り組みが失敗する主な原因は戦略の遂行にあると考えている」と、Gartnerのバイスプレジデントのマーク・ケリー(Marc Kelly)氏は語る。「これは、戦略自体や戦略資金の確保よりも大きな課題であり、さまざまな問題に起因している」

 Gartnerの最近の調査では、戦略の実行が得意な組織とそうでない組織には、幾つかの重要な違いがあることが確認されている。

  • 戦略の実行に十分成功している組織は、明確な戦略と期待されるビジネス成果を定義している可能性が1.6倍高い
  • 戦略目標の実行に苦労している組織は、以下の3つの共通する障壁や課題に直面している
     ――責任が曖昧
     ――チームや個人に目標を浸透させられない
     ――明確な優先順位がない
  • 戦略の実行に十分成功している組織は、パフォーマンス指標から得られるインサイトやビジネスコンテキストの変化に応じて実行計画を見直し、調整する可能性が2倍高い

(出所:Gartner)

戦略を効果的に実行するための5つの重要な柱

 戦略の実行上の課題に取り組むには、成功している他の組織から学び、以下の要因に前もって対処する必要がある。

1:戦略の策定

 戦略の83%は、仮説が間違っているために失敗する。戦略を策定する際は、戦略の実行可能性に関わる仮説を精査する。

 顧客や競合他社、自社の能力に関する仮説を誤ったために、成長が停滞した組織の例は数多くある。仮説に不明瞭な部分があると、戦略を実行する過程で不測の事態を招き、マネジャーが流動的な状況をモニタリングし、その推移に応じて対応する能力が低下する。

 戦略を適切に実行するには、戦略に関連する仮説をよく検討し、明確なものにしておく必要がある。自組織が予期せぬ問題に直面し、戦略の実行が頓挫しないように、戦略上の仮説を特定し、精査するメカニズムを利用するとよい。

2:実行計画の立案

 主要機能の67%が、ビジネス部門の戦略や企業戦略と整合性が取れていない。大規模な組織では、毎年数百万ドルと従業員数百人の時間を費やして、戦略案を立てることも珍しくない。だが、こうして労力をかけても、戦略目標が不明瞭な場合や、整合性が取れていない場合が多い。そうなると、リソース配分に問題が生じ、戦略実行の成功が限定的なものになる。

 実行計画の立案プロセスでは、企業の本社機能とビジネス部門の垂直的な整合性と、ビジネス部門間や業務間の水平的な整合性に焦点を当てる。混乱を避けるには、戦略の実行担当者の目標と役割を前もって明確にしておく。

3:パフォーマンス管理

 組織の58%が、パフォーマンス管理システムは戦略の成功をモニタリングするには不十分だと考えている。

 市場は、企業の戦略立案サイクルの間で変化することがある。その場合、仮説や戦略計画の有効性が損なわれる可能性がある。戦略のパフォーマンスをモニタリングする効果的なシステムがなければ、組織は誤った計画を修正しないまま数カ月間、あるいは数年間も実行してしまうかもしれない。

 タイムリーな軌道修正を行うには、パフォーマンス管理システムを利用して、主要目標に対する責任を従業員に持たせる。計画を頻繁にレビューすることで、業績が振るわない場合、その原因が誤った市場評価や間違った戦略、実行の不備のどれなのかを判断できる。また、変化に柔軟に適応するアプローチを、戦略立案に適用することも検討する。

4:戦略コミュニケーション

 従業員の67%が、新たな成長への取り組みにおける自身の役割を理解していない。組織が旗を振っても、従業員が納得して支持していなければ、行動を起こそうという従業員のコミットメントやモチベーション(やる気)は低下する。組織が発信するメッセージに対する信頼が低ければ、変化への組織の抵抗が増大してしまう。チームを1つにまとめるコミュニケーションを展開し、戦略に関する双方向の対話を促進することで、組織の支持を取り付ける必要がある。

 自社の目標達成に従業員を組織の一員として積極的に参加させるための体系的な計画を立てておかなければ、従業員のモチベーションは下がり、抵抗が強まり、戦略の実行コストは増大してしまう。

5:組織のリソース配分

 組織が新たな成長戦略の実行力を引き出すことに成功すれば、収益性は77%向上する。

 だが、多くの組織は、新たな成長戦略の実行に必要なリソース(資産、時間、人材など)を適切に配分していない。戦略の策定や実行計画の立案、指標によるパフォーマンス評価、コミュニケーションに依存しすぎているからだ。

 戦略担当者は、調整の不備によって組織のどこで実行力が失われているかを突き止める必要がある。この問題はビジネスに悪影響を与えるからだ。

 組織のリソースを適切に配分するには、以下を行う。

  • 成長への取り組みを開始する前に、組織の能力を点検、診断する
  • 新しいツールを使って、成長への賭けとなるリソース配分に関して中間管理職が抱えるトレードオフを明確にする
  • 滞留していたリソースを解放する新しい枠組みを構築する
  • 成長プロジェクトを既存ビジネスに統合するための支援体制を構築する

出典:The 5 Pillars of Successful Strategy Execution(Insights)

筆者 Jackie Wiles

Content Marketing Manager


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