Microsoft、「Azure AI Studio」「Copilot in Microsoft Fabric」などAI推進戦略の100以上の取り組みを発表:クラウド基盤の再構築、Copilotの展開、データとAIの接続強化、開発者支援
Microsoftは年次イベント「Microsoft Ignite 2023」を開催し、技術展開、生産性、セキュリティなど、AI推進戦略に関わる100以上の取り組みを発表した。
Microsoftは、2023年11月15〜17日(米国時間)に年次イベント「Microsoft Ignite 2023」を開催し、技術展開、生産性、セキュリティなど、AI(人工知能)推進戦略のさまざまな側面にわたる100以上の取り組みを発表した。
主な発表内容は以下の通り。
クラウド基盤の再構想
MicrosoftはOpenAIとの提携や、検索、共同作業、仕事、学習のツールへの「ChatGPT」機能の統合などにより、技術を進化させてきた。AI戦略を推進するに当たり、Microsoftはクラウドインフラを再考し、ハードウェアおよびソフトウェアスタックの各レイヤーにわたって最適化を図っている。
- OpenAIモデル、Bing、GitHub Copilot、ChatGPTなどのAIワークロード向けに、クラウドベースのトレーニングと推論を実行するように設計したカスタムAIアクセラレータチップ「Microsoft Azure Maia」を発表した
- Armアーキテクチャをベースに、汎用(はんよう)ワークロード向けに性能、電力効率、コスト効率を最適化したクラウドネイティブなカスタムチップ「Microsoft Azure Cobalt」を発表した
- 「Azure Boost」の一般提供を開始した。Azure Boostは、ネットワーク、ストレージ、ホスト管理など、従来ホストサーバが実行していた仮想化プロセスを、これらのプロセスに最適化された専用のハードウェアとソフトウェアに移行することで、規模に応じてネットワークとストレージのパフォーマンスを向上させ、セキュリティを改善し、サービス提供への影響を軽減する。Microsoft Azureの最新かつ最も重要なインフラ改善の一つと位置付けられている
Microsoftはカスタムシリコンを補完するため、シリコンプロバイダーとの提携を拡大し、インフラオプションを充実させている。
- AMDの最新GPUを搭載する「ND MI300 v5」仮想マシン(VM)をMicrosoft Azureに追加する。ND MI300 v5は、ハイエンドのAIモデルのトレーニングや生成AI推論などのAIワークロード処理を高速化するように設計されており、生成AI向けのGPU「AMD Instinct MI300X」を搭載する
- NVIDIA H100 Tensor Core GPUを搭載する「NC H100 v5」VMシリーズのプレビュー版を発表した。NC H100 v5は、ミドルレンジのAIトレーニングと生成AI推論向けに、より高いパフォーマンス、信頼性、効率性を提供する。NVIDIA H200 Tensor Core GPUを搭載し、AIに最適化された「ND H200 v5」VMシリーズの計画も発表した
Microsoft Copilot体験の拡張
Microsoftは、AIを使用して人々がより多くのことを達成できるように支援するツール群「Microsoft Copilot」について以下の取り組みを発表した。
- 2023年11月、「Microsoft 365」アプリに統合されたAIアシスタント「Microsoft Copilot for Microsoft 365」が企業顧客向けに提供開始となった。Microsoftは、新機能の「Microsoft Copilot Dashboard」や、各Microsoft 365アプリ用のCopilotの新機能も発表した
- ローコードツールの「Microsoft Copilot Studio」により、Microsoft Copilot for Microsoft 365をカスタマイズし、社内外で使用できる独自のCopilotを構築できるようになった
- 「Microsoft Copilot for Service」のパブリックプレビュー版が2023年12月初めに提供開始される。Copilot for Serviceは、Microsoft Copilot for Microsoft 365を含み、生成AIを用いて既存のコンタクトセンターの拡張を支援する
- 「HoloLens 2」でプライベートプレビュー中の「Copilot in Microsoft Dynamics 365 Guides」を発表した。生成AIとHoloLens 2の複合現実(MR)機能を組み合わせたこのハンズフリーのCopilotは、フロントラインワーカーがワークフローを中断することなく複雑なタスクを完了し、問題を迅速に解決できるよう支援する
- 日々のIT管理を簡素化するIT担当者のためのAIコンパニオン「Microsoft Copilot for Azure」を発表した。Copilot for Azureは、統一されたチャット体験を提供し、IT担当者がアプリやインフラの設計、運用、トラブルシューティングの能力を高めるのに役立つ
- 「Bing Chat」と「Bing Chat Enterprise」を「Copilot」に改称した。Copilotは間もなくプレビューが終了し、2023年12月1日から一般提供が開始される。CopilotをBing、Microsoft Edge、Windowsで使用する企業ユーザーは、Microsoft Entra ID(旧称:Azure Active Directory)でサインインすると、企業向けのデータ保護機能の恩恵を受けられる。Microsoftは今後、企業向けデータ保護機能付きCopilotの適用を、Entra IDユーザーにまで追加料金なしで拡大する
データとAIの接続強化
AIの価値は提供されるデータで決まることから、Microsoftは、顧客が自社データをMicrosoftのAIツールに容易に接続できるようにするソリューションを手掛けており、その一部である「Microsoft Fabric」の一般提供開始を発表した。
Microsoft Fabricは、エンタープライズグレードのデータ基盤上に全てのデータ資産を統合するAIベースの単一プラットフォームにより、チームのデータ活用の在り方を刷新する。
「Copilot in Microsoft Fabric」は、「Microsoft Office」や「Microsoft Teams」とも統合され、組織全体でデータ価値創造の力を拡大するデータ文化を育成する。
Azure AIによる開発体験の向上
Microsoftは、開発者が生成AIモデルを幅広い選択肢から柔軟に選択できるようにしている。
- 統合AIプラットフォーム「Azure AI Studio」のパブリックプレビュー版を発表した。企業はAzure AI Studioにより、1つの場所でAIアプリをより容易に探索、構築、テスト、デプロイ(展開)できる
- 「Azure AI Search」のベクトル検索機能の一般提供を開始した。ベクトル検索は、大規模言語モデル(LLM)から良い答えを引き出すために重要な機能だ
- 「Azure OpenAI Service」で2023年11月末に、16Kトークンのプロンプト長をサポートする新しい「GPT-3.5 Turbo」モデルの一般提供を開始し、「GPT-4 Turbo」モデルのパブリックプレビュー版を提供開始する
- Azure OpenAI Serviceで、「GPT-4 Turbo with Vision」のプレビュー版を近いうちに提供開始する。また、「DALL-E3」のパブリックプレビュー版を提供開始した。「GPT-4」のアップデートもプレビュー段階だ
AIの責任ある導入を実現
Microsoftは、AIの安全かつ責任ある利用に注力しており、著作権侵害の訴訟から企業顧客を守り、補償するためのプログラム「Copilot Copyright Commitment」(CCC)を開始している。
- MicrosoftはCCCを、Azure OpenAI Serviceを利用する顧客にも拡大すると発表した。この新しいプログラムは「Customer Copyright Commitment」と呼ばれる
- 企業が有害なコンテンツを検出して軽減し、より優れたオンライン体験を実現できるよう支援する「Azure AI Content Safety」の一般提供も開始した
AI時代の防御力強化
Microsoftは、セキュリティソリューション群への新技術の導入も発表した。
- 「Microsoft Sentinel」と「Microsoft Defender XDR」(旧称:Microsoft 365 Defender)の統合により、Security Copilot体験を組み込んだ「Unified Security Operations Platform」が提供される
- Microsoft Intune、Microsoft Purview、Microsoft EntraにSecurity Copilotが組み込まれ、IT管理者、コンプライアンス部門、ID管理チームが複雑な作業を簡素化できるようになる
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